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魔界の扉


「魔界の扉?」


 そろそろ新しいパーティも慣れた今日この頃。アルデバランはアンジェールリカにレベルアッパーを使ってさりげなく健やかにレベリングをしている。彼女のレベルは既に五十五だ。


「えーと。そんな経験値うまうまですかね?」


 とは御本人の談だが、レベルコンサルタントについては話していない。勇者パーティ以外でなら、これは俺とアルデバランの秘密だ。


「そうです。歪みが出来ているらしくて」


 俺たちのパーティもランクが上がっていた。今はBだ。もちろん議論は頻出したがその全てをアルデバランは真っ正面から打ち砕いた。もともとレベルコンサルタントしてたのに今は新生レベル999だ。もはやそのステータスは人間という範疇から逸している。


「王国でか」


「それが微妙でして。国境付近だと」


 で、俺は既にレベル300を越えて、レベル99の三倍以上のステータスを得ていた。


「じゃあ勇者の出番だろ」


「まぁあの人外兵器はそのためにありますし」


 ギルド員のグチに付き合っていると不穏な話題が出た。


「で、クリュエルグエルさんも元勇者パーティじゃないですか?」


「そりゃま」


「それでなんとなーくフォローとかしてくれませんかね?」


 何故に。


 別に禍根を持っているつもりもないが、こと勇者パーティにフォローが要るだろうかというのが正直な感想。


「嫌な予感がするんです」


「とは言っても魔界の扉案件って最悪でもA級パーティ以上が対処可能だろ?」


 俺らはまだBランクだ。


「そこはまぁ事後案件としてA級昇格と並列と致しまして」


「国境付近なら王国兵もいるだろ。勇者も加わるなら戦力としては十分すぎる気もするが」


 なにせ向こうにはサク姉とポカがいる。


「やっぱり駄目ですか……」


「ダメとは言ってない。報酬次第ではクエスト受注するぞ」


「ではギルドマスターが私産で雇うとまで言ってまして。金貨で百枚……でどうでしょう」


「破産しないか? ギルドマスターの懐を心配するに」


「とは言ってもギルドで報酬出すと今度の決算がややこしくなるんですよ。まさかB級パーティに魔界の扉に派遣して金貨百枚出しましたはスポンサーに説明が難しく」


「多分勇者パーティが何とかすると思うが……そこまで言うなら引き受けよう。そっちのイタ挟みも忍びないし」


「ありがとうございます。どうかよろしく」


「さっさーい」


 俺はヒラリと手を振った。そして酒の席でジュースを飲んでいる二人に合流。


「よう。次のクエストは何じゃ?」


「お師匠様~。私やる気盛り盛りですよ~」


 虹色の瞳が燗と輝き、桃色の髪が艶々と輝く。


「魔界の扉を案件にしろとのことで」


「本気じゃか?」


「え~? 魔界の扉~?」


 まぁ知らないわけもないだろう。


 何時からか重なった三つの世界。


 人界。


 神界。


 魔界。


 ソレらは空間の歪みという形で現われ空間を共有する。特に魔界と繋がるとモンスターが溢れ出し、それはもう非道いことになる。なら神界は大丈夫かというとそうでもないのだが。元々の文化が違うので何が正しいかは一律化しないのだが、なんにせよダンジョンより強力な魔物が出てくるのもザラで。


「勇者の出番ですよね」


「そうだな。で、元勇者パーティの俺にフォローが頼まれた」


 要するにしがらみだ。


「よし。行こう!」


 グッとアルデバランが拳を握る。まぁコイツはこう言うよな。新しいレベル999も試したところだろう。ぶっちゃけコイツが居れば魔界の侵入者もメじゃないのは分かっているんだが。


「アンジェールリカはどうする? 言っとくが危険だぞ」


「お師匠様についていきます~! それにちょっとは強くなったし~!」


「レベル55だと不安も残るんだが」


「駄目ですか~?」


「とは言わん。まぁいいか」


 そんなわけで魔界の扉が現われた地点まで飛ばなきゃいかんのだが。王国の王都にいるので国境沿いは馬車でも五日はかかる。


「走っていくじゃか?」


「俺とお前は良いだろうがアンジェールリカは無理だ」


「ではどうする?」


「こう言うときは転移魔法に頼るんだよ」


「転移魔法」


 転移魔法。要するにワープだ。空間跳躍ともいう。


「ギルドや王国でも設定はされているが、後刻のためにもアンジェールリカには覚えてもらいたい」


「スキル候補にはありますね~」


「はい術式複写」


 ズバンッと分厚い書類をアンジェールリカの席に叩きつける。


「一日で覚えてくれ。仕事に差し支える」


「無理~!」


「じゃあガンガレ」


 そして俺は酒を頼んだ。


「そうじゃ。お兄さん。吾輩と剣あわせんか?」


「剣を使えない」


「ナイフでいい」


「俺そんなに強くないぞ?」


「謙遜謙遜」


 そんなわけで転移魔法の術式を暗記し始めるアンジェールリカをその場に於いて、俺は試合場を借りた。アルデバランと対峙する。


「では。行くぞ」


 パンッと空気が打ち震えた。その音が聞こえるより早く、既に移動している。刃物が閃いた。


 ――切れない。


 思った瞬間にナイフが五百二十回振るわれる。


「ふむ」


 その全てをアルデバランは片手でいなしてのける。さすがのぶっ壊れ。


「エアギロチン」


 今度は魔術だ。風がギロチンとなって襲い来る。頭上から俺は真っ二つに裂かれた。もちろん俺の残像だ。斜導シャドウというスキルで、残影を残して攻撃をいなすスキル。


「ではもう少し行くぞ」


 レベル999のチートバトルマスターが襲い来る。


「貫抜」


 手刀が襲い来た。瞬間的に避けるも、戦慄は止まない。多分回避していなかったらドテッパラに風穴が空いている。


「もうちょっとこう穏健な技はないのか?」


「穏健なつもりじゃが?」


 まさに嘘八百で。


「俺だから対処できてるレベルだぞ」


「というか現状吾輩の相手がお兄さん以外におらん」


 それも事実で。


「ほれ。来い」


 クイクイと促される。指一本で挑発された。


「では失礼して」


 グッと足を踏みしめる。


天歩テンポ


 空中を蹴って空間を制圧する。移動スキルの一環で、けれども戦闘にも役に立つスキルだ。


「ほほう。やるか」


 が、アルデバランも普通に天歩を使っていた。


 後は攻撃の応酬。筋力値が四千オーバーの怪物にどう立ち向かえと?


「うむ。良きかな良きかな」


 で、試合を終えて俺たちは一服する。


「う~」


 アンジェールリカは術式の理解に四苦八苦。


「覚えればもっと便利になるから。今回じゃなくても未来への投資と思え」


「わかってますけど~」


 くあ、と欠伸して酒を呑む。


 さて、魔界の扉か。どうしたものかな?


「勇者って強いじゃか?」


「まぁ強いぞ。一応高レベル冒険者ではある」


「楽しみじゃ」


「せめてこっちにもフォローしてください~」


 とはいっても俺は魔術使えないし。アルデバランは使えるけど攻撃呪文だけだ。純粋に魔術のフォロー範囲で言えば今のところアンジェールリカが一番広い。


「とりあえずケーキ食うか?」


「食べます~」


 勉強には糖分も必要だ。


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