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転生したら最強すぎた件について   作者: ミリア
プロローグ〜第一章
7/37

記録に残す、ということ

◆ 王国アステル/中央教会・資料室


(王国教会視点)


王都アステル中央教会の資料室は、いつも静かだった。


外の喧騒とは切り離され、

紙をめくる音だけが、ゆっくりと響く。


「……また、この人物ですね」


若い司祭が、束ねられた報告書に目を落とす。


ミリア。

性別:女。

猫耳族の冒険者。


王都近郊で発生した小規模な境界揺らぎ。

いずれも実害はなく、自然復帰している。


そのすべてに、彼女の名がある。


「偶然……でしょうか」


「そう片付けるには、少し重なりすぎているな」


老司祭が、記録を指でなぞった。


異常はある。

だが、問題は起きていない。


それが判断を難しくしていた。



◆ 王国教会/小会議室


(司祭会議)


話し合われたのは、処遇ではない。


危険性は確認されていない。

神力反応も、権能行使も観測されていない。


「監視対象とする必要はない」


「だが、完全に無関心というわけにもいかん」


結論は穏健だった。


「個別記録として整理する」


拘束も、聖別も行わない。

接触も不要。


ただ、人物として把握する。


それだけ。



◆ 王国教会・個別記録


(正式文書)


氏名:ミリア

性別:女

種族:猫耳族

年齢:不明(外見若年)

所属:冒険者ギルド(王都アステル)

活動範囲:王都および周辺地域

特記事項:

・境界揺らぎ事案との関与率が高い

・神力・権能・精霊契約の明確な反応なし

危険性評価:不明

現段階判断:一般冒険者と同等

対応方針:経過観測


記録官は淡々と筆を止めた。


「……現時点では、問題なしですね」


「ええ。現時点では」


それ以上の言葉は交わされなかった。



◆ 王国アステル/冒険者ギルド


(ミリア視点)


「……なんやろな」


ギルドの中で、ミリアは小さく首を傾げる。


誰かに声をかけられるわけでもない。

視線を向けられるわけでもない。


ただ、

“把握されとる”感じがある。


「まぁ、別に悪いことしてへんし」


掲示板から依頼票を一枚取る。


内容は、街道巡回。

いつも通りや。


「行ってきます」


受付に声をかけて、外へ出る。



◆ 王国教会/別室


(老司祭)


「彼女は、何もしていない」


「だが、何かが起きる場所にいる」


疑念ではない。

警戒でもない。


ただの観測。


「世界が、彼女を避けているようにも見える」


その言葉は、口に出されただけで、

記録には残らなかった。



◆ 夜/王都アステル


(ミリア)


宿への帰り道、月を見上げる。


「……また、見られてた気ぃするな」


嫌な感じはせぇへん。

むしろ、静かや。


「女の子やから目立つんやったら、困るけどな」


そう呟いて、扉を開ける。


この日も、何も起きなかった。


ただ――

王国アステル教会の記録には、

最初から当然のように

一人の冒険者として、ミリアの名が残された。


それだけの話。

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