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影の蠢きと教会の警鐘


夜の王都は静寂に包まれていた。しかし、その静けさはどこか不気味で、空気に漂う重みが誰かの気配を知らせているかのようだった。


ミリアは宿屋の小さな部屋で窓の外を見つめていた。彼女の心には遺跡での遭遇がまだ鮮明に残っている。精霊の言葉、そして自分の知らない力への期待と不安が混じり合っていた。


「本当に、私はただの冒険者なのかな……」


そう呟くと、彼女はそっと胸の奥にある何かを探った。しかし、答えはまだ遠く、霧の中に隠れていた。


その頃、王都の中心にある教会では、重厚な扉の向こうで数人の神官が緊迫した面持ちで話し合っていた。


「最近の魔力の異変、そして精霊たちの動きが激しくなっているのは間違いない。何か大きな力が動き始めている」


「しかも、その中心には一人の少女がいるという噂が……」


「ミリア……いや、“ミリセティア”と呼ばれる者か?」


高位の神官は眉をひそめた。


「しかし、彼女の正体は謎に包まれている。創造神の名を語る者もいるが、真偽は不明だ」


「もし本当に創造神が動いているのなら、我々の計画が揺らぐ恐れもある。慎重に対処しなければ」


教会の中には古びた神像が置かれており、その像は淡い光を放っていた。多くの信徒はその神名を知らず、ただ信仰の対象として崇めているに過ぎなかった。


しかし、その神像こそが“ミリセティア”を象徴するものであり、その力の源泉でもあった。


一方、ミリアは仲間のリナと共に、次の依頼の準備を進めていた。


「今回の依頼は、森の奥深くに現れた魔物の調査らしいよ」


リナが資料を手渡しながら言う。


「気をつけようね。何が潜んでいるかわからないから」


ミリアは微笑みながら杖を握った。


「任せて。アイスショットとスノウダンス、控えめに使うわ」


彼女の中には確かな自信が芽生え始めていた。しかし、その背後には見えない闇が静かに動き、彼女を見守る者たちの視線が冷たく光っていた。


「全ては計画通り……」


そう呟く影の人物の声が、闇に溶けて消えていった。

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