新たな力と共に
朝日が窓から差し込み、宿屋の部屋を柔らかな光で満たしていた。ミリアはベッドの上で目を覚ますと、昨夜の激しい戦いと覚醒の余韻が身体に残っているのを感じた。体がどこか軽く、魔力が増しているのがわかった。
「これが……力の進化?」
無意識に頬を撫でると、指先にひんやりとした冷気がまとわりつく。氷の魔法――アイスショットの感覚が以前よりも鮮明で、制御しやすくなっているのだ。
ミリアはそっと起き上がり、窓の外を見た。街はまだ静かで、数人の冒険者が通りを歩いているのが見える。新しい依頼があるはずだと直感した。
支度を整え、彼女は宿屋の一階へ降りていった。そこでリナが待っていた。
「おはよう、ミリア!今日も一緒に行こうよ。昨日の戦いで二人の連携もバッチリだったし、もっと強くなれる気がするんだ」
ミリアは微笑みながら頷いた。
「うん、頼もしい仲間がいるって心強いね。今日は新しい依頼に挑戦してみよう」
二人は冒険者ギルドへ向かった。ギルドの掲示板には新たな依頼がいくつも貼られていたが、その中に一際目を引くものがあった。
「“森の奥に潜む異形の魔物の調査および討伐”」
その文字列に、ミリアは自然と背筋が伸びた。依頼の詳細は不明だが、通常の魔物とは異なるという情報が小さく書かれている。
「気をつけようね、リナ」
「もちろん!でも、ミリアなら大丈夫!」
依頼を受け、二人は早速森の入口へと足を運んだ。森の奥はいつもより不気味な空気が漂い、風が冷たく肌を刺す。
「なんだか、いつもと違う気配がするね」
ミリアは杖を手に取り、軽く魔力を集中させる。アイスショットの詠唱は自然と口をついて出た。
「気を引き締めて」
すると、茂みの向こうから突如、巨大な魔物が姿を現した。黒い鱗に覆われ、赤く光る瞳が鋭くこちらを睨んでいる。
「……強そう」
ミリアは氷の矢を放ち、魔物の動きを封じようとするが、相手の素早さは想像以上だった。
「リナ、気をつけて!」
リナは剣を抜き、ミリアを庇うように前に出る。
「私も全力で守るよ!」
激しい攻防の中、ミリアは自分の中で新たな感覚に気づく。力が次第に増していくのだ。まるで彼女の本体がそっと背中を押しているかのように。
「これが……リンクの力?」
魔物が次第に押され始めたとき、ミリアは最後の力を振り絞り、最大のアイスショットを放った。矢はまばゆい光を放ちながら魔物を貫き、氷の結晶が全身を覆い尽くす。
「倒した……!」
リナが歓声を上げ、二人は安堵の笑みを交わした。
「まだまだこれからだけど、確実に強くなっている」
ミリアは心の中でつぶやいた。
その夜、宿屋で二人がくつろいでいると、窓の外に微かな光が揺らめいた。まるで星が瞬くように。
「なにかが、動いている……」
ミリアは無意識に感じ取った。これからの冒険が、さらなる試練と謎をもたらすことを。
だが、彼女にはもう恐れるものはなかった。




