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転生したら最強すぎた件について   作者: ミリア
プロローグ〜第一章
19/37

静かな依頼と、少しだけおかしな戦闘

朝の空気は澄んでいて、少し冷たい。

 宿屋の窓を開けると、街の音がいつも通り流れ込んできた。


「……今日も、平和だね」


 小さく呟きながら、フードを被る。

 ピンク色のコートの裾が揺れ、スカートの下で尻尾がゆらりと動いた。


 最近、妙な感覚が続いている。

 危険なことが起きているわけじゃない。むしろ、その逆だ。


 ――簡単すぎる。


 今日受けた依頼は、街道沿いに現れる魔物の討伐。

 数はやや多めだが、危険度は低い。ソロでも問題なし、と判断された内容。


「一人で大丈夫かい?」


 受付の人が念のため聞いてくる。


「はい。慣れてますから」


 嘘ではない。

 パーティーを組む予定も、今はない。


 森の縁に差し掛かると、魔物の気配がはっきりと感じ取れた。

 私は足を止め、指先に冷たい感覚を集める。


「……アイスショット」


 鋭く圧縮された氷が、一直線に放たれる。

 一体目の魔物が悲鳴を上げる間もなく倒れた。


 続けて、角度を変えて二射、三射。

 狙いは正確で、無駄がない。


「よし……」


 残った魔物が散開しようとした、その時。


 ――ぱきん。


 地面が薄く凍り、魔物の動きが一瞬だけ鈍る。


「……?」


 私は、まだその魔法を使っていない。


 咄嗟に後方へ跳び、状況を確認する。

 敵の足元に広がる氷は、ごく薄く、控えめ。


「……スノウダンス?」


 違う。

 使った覚えがない。


 首を振り、気を取り直す。


「……集中」


 改めて狙いを定め、アイスショットを放つ。

 今度は、確かに私の魔法だ。


 氷弾は正確に魔物を貫き、戦闘は終わった。


 ――あっけないほどに。


「……終わり?」


 魔物の数も、依頼内容通り。

 被害もなし。戦闘時間も短い。


 なのに、胸の奥に小さな引っかかりが残る。


 街へ戻り、討伐報告を済ませると、受付の人が少し眉をひそめた。


「討伐記録が……少し妙だな」


「妙、ですか?」


「ああ。魔物の一部に、君の魔法とは違う氷の痕跡がある」


「……気のせいじゃないですか?」


「そうかもしれないな」


 それ以上、話は広がらなかった。

 広げられなかった、と言うべきかもしれない。


 宿へ戻ると、同年代くらいの女の子が手を振ってくる。


「おかえりー! 今日も無事?」


「うん。すぐ終わっちゃった」


「相変わらずだね。ほんと、すごい」


「……普通だよ」


 本心だった。


 夜、お風呂で体を洗いながら、ぼんやり考える。


 ――もし、私の知らないところで、何かが“手を貸している”としたら?


「……考えすぎだよね」


 私はただの冒険者。

 猫耳族で、少し魔法が得意なだけ。


 ベッドに横になり、目を閉じる。


 一瞬だけ、世界が遠のいだ気がした。

 音も、気配も、消えて――


 すぐに戻る。


「……眠いだけ」


 そう結論づけて、私は眠りに落ちた。


 何も知らないまま。

 何も気づかないまま。


 静かに、何かが“調整された”ことにも。

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