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精霊界視点
――精霊界・境界付近
揺らぎが走った。
それは音でも光でもなく、
精霊たちだけが感じ取れる、ごく微細な“変化”。
「……動いた」
誰かが、そう呟いた。
言葉は少ない。
説明もない。
けれど、その場にいた精霊たちは、同時に理解した。
管理者が、介入した。
「記録は?」
「残っていない。最初から、その予定だったみたい」
「では――」
短い沈黙。
「我々は、動かない」
それが、結論だった。
彼らは知っている。
“管理”とは、支配ではないことを。
壊れかけた流れを、正しい位置へ戻す行為。
余計な力を、加えないこと。
「人界への影響は?」
「最小限。
――むしろ、抑えられている」
「……なら、問題ない」
精霊たちは、それ以上を語らなかった。
名を呼ぶことも。
姿を思い浮かべることも。
ただ一つだけ、共有された認識がある。
あの管理者は、まだ“自分が何者か”を知らない。
だからこそ――
今は、静観。
それが、最善。
揺らぎは消え、精霊界は再び穏やかさを取り戻した。




