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転生したら最強すぎた件について   作者: ミリア
プロローグ〜第一章
18/37

人界視点 ―― 王都アステル

王都は、今日も平穏だった。


冒険者ギルドは混雑し、露店の呼び声が響き、子どもたちが走り回る。

事件は起きない。事故もない。争いもない。


あまりにも「何もなさすぎる」。


騎士団の巡回記録には、異常なしの文字が並ぶ。

占星術師は星の配置を確認し、首を傾げながらも結論を変えない。


「未来は、定まっている」


そう書き残しながら、なぜか筆が重かった。



◆ ミリア視点


「……今日も、平和やな」


ミリアはギルドのベンチに腰掛け、ぼんやりと天井を見上げていた。

依頼は簡単。危険はない。拍子抜けするほどだ。


でも――

胸の奥が、静かすぎる。


「何か起きそう」

そんな予感すら、起きない。


代わりにあるのは、

世界が自分を避けているような感覚。


「……見られてる気もするけど」


視線はない。気配もない。

ただ、自分が“中心”にいる気がしてならなかった。


理由は分からない。

分かるはずもない。



◆ 精霊界視点


精霊界では、流れが止まっていた。


精霊王は、風と水の循環を確認する。

秩序は正しい。法則も正常。


だが――

未来の分岐が、曖昧だ。


「本来なら、ここで確定するはずの流れが……」


精霊王は玉座の間に跪く。


「女王陛下。異常ではありません。ただ……」


言葉を続ける前に、精霊女王は手を上げた。


「分かっています」


その視線は、人界の一点に固定されている。


「これは“乱れ”ではない。

報告は不要です」


精霊王は従うしかなかった。

秩序に反していない以上、沈黙こそが正しい。



◆ 魔界視点


魔界では、ざわめきが広がっていた。


魔物たちが落ち着かない。

理由もなく警戒し、理由もなく静まる。


「……何も起きていないのに」


魔将の一人が呟く。


世界が、こちらを見ていない。

だが、同時に――

見逃してもいない。


「嫌な沈黙だ」


魔界は本能で知っている。

嵐の前ではなく、

**嵐そのものが“動いていない”**状態だと。



◆ 反逆神視点


反逆神は、苛立っていた。


観測結果はすべて正常。

秩序は完璧。介入の余地はない。


それなのに。


「……気持ちが悪い」


敵がいない恐怖。

危機が存在しない不安。


創造神は、スリープ中のはずだ。

自己観測停止。干渉なし。


「……本当に?」


その疑念は、口にした瞬間に否定される。

秩序に反する思考だからだ。


だが――

胸の奥に、確かな予感があった。


“そこにいる”


まだ何もしていない。

だからこそ、最も恐ろしい。



◆ そして世界は


誰も間違っていない。

誰も誤判断していない。


秩序は守られている。

異常は存在しない。


それでも――

世界は、決断を保留している。


その中心にいることを、

ミリアだけが、まだ知らない。

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