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見ているだけの存在・・・
丘の上。
人の目には映らない場所に、
“何か”が、静かに在った。
形は定まらない。
輪郭は、光と影の間。
言葉はない。
名も、役割も、示されない。
ただ、視線だけが、少女を追っている。
彼女が躓きそうになれば、
足元の石が、わずかに動く。
彼女が囲まれれば、
風向きが、ほんの少し変わる。
干渉は最小限。
痕跡は残さない。
――彼女自身の力だと思わせる程度に。
別の“気配”が近づく。
教会由来の、観測。
それに対して、“何か”は動かない。
遮らない。
拒まない。
ただ、境界線を引く。
――ここから先は、踏み込むな。
無言の警告。
観測は、静かに引き返す。
丘に残るのは、
少女の足跡と、消えゆく魔力の余韻だけ。
“何か”は、満足したように揺れた。
彼女は、まだ知らない。
自分が、見られている理由も。
守られている理由も。
――知らないままでいい。
成長は、段階的であるべきだ。
強さは、気づいた時には、周知されているくらいがちょうどいい。
“何か”は、そう判断している。
そして、再び――
世界に溶けた。




