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転生したら最強すぎた件について   作者: ミリア
プロローグ〜第一章
13/37

名もない来訪者(ミリア視点)

朝。


 宿屋の窓から差し込む光で、私は目を覚ました。


「……よく寝た」


 伸びをして、尻尾がぴんと動く。


「今日も平和、っと」


 階下に降りると、昨日と同じ女の子がいた。


「おはよー!」


「おはよう」


「今日も依頼?」


「うん、軽めのやつ」


 安心できるやり取り。

 これがあるだけで、街が好きになる。


 外に出ると、空気が少し澄んでいた。


「……ん?」


 足を止める。


 路地の奥。

 陽だまりの中に、何かが――揺れている。


「……また?」


 森で感じたのと、似た気配。


 でも、姿は見えない。

 ただ、空気がやわらかい。


「……忙しいからね」


 話しかけることもなく、私は歩き出す。


 すると、不思議なことが起きた。


 転びそうになった瞬間、

 足元が“ちょうどいい位置”に来ていた。


「……危なっ」


 心臓を押さえる。


「今の、完全に転ぶやつだったよね」


 周囲を見る。

 誰もいない。


 気配も、もうない。


「……気のせい、気のせい」


 そう言い聞かせて、ギルドへ向かう。


 その背後――


 誰にも見えない場所で、

 何かが、静かに見送っていた。


 名前も、役割も、語られないまま。


 ただ一つ、確かなのは。


 ――害意はない。

 ――干渉しすぎない。


 そして。


 ――“この子は、まだ知らなくていい”。


 そんな意思だけが、そこにあった。


 ミリアは、今日も気づかない。


 守られていることにも、

 守ってしまっていることにも。


 ただ、少し運がいいだけだと思いながら。

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