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転生したら最強すぎた件について   作者: ミリア
プロローグ〜第一章
12/37

女王は、理解している(と誤解される)

◆ 精霊界・最上位層


(精霊女王視点)


精霊界は、今日も安定している。


それは喜ぶべき状態のはずだった。

秩序は保たれ、境界は揺れず、

精霊の流れも乱れていない。


――だが。


「……静かすぎるわね」


精霊女王は、誰に聞かせるでもなく呟いた。


異常はない。

記録上も、観測上も、完全に“正常”。


だからこそ、

異常だと断定できる者は存在しない。



机の上に並ぶ報告書。


創造神による直接干渉、未確認

上位神格の権能行使、痕跡なし

世界秩序、安定


精霊女王は、静かに目を通す。


「……ええ。

 そう記録されるでしょうね」


その声は、肯定とも否定とも取れない。


彼女は、

“観測されない力”を言葉にしなかった。


言葉にすれば、

それは概念となり、

世界に固定されてしまう。


それは、今ではない。



精霊王が、一歩前に出る。


「女王。

 この現象は、創造神に近しい存在による――」


精霊女王は、わずかに首を傾けた。


「“近しい”かどうかは、重要ではありません」


精霊王は、続きを待つ。


「重要なのは、

 秩序が保たれているという事実です」


その答えは、正しい。


だからこそ、

精霊王は深く納得した。


――精霊女王は、

創造神の代行者として世界を見ている。


それは、誤解だった。

だが、否定されることはない。



精霊女王は、内心で小さく息を吐く。


(……母様)


その呼び名は、胸の内だけに留めた。


使えば、

自分が“娘”であると確定してしまう。


世界は、

精霊女王を「管理者」として理解している。


それでいい。

今は、それで十分だった。



視界の端に、人界が映る。


王国アステル。

石畳の上を歩く、猫耳の少女。


力は使われていない。

少なくとも、行使された形跡はない。


「無意識下での世界補正……」


精霊女王は、あえてそう結論づけた。


それは、

学術的にも、理論的にも、正しい説明。


だが本当は――

説明そのものが、存在しない。


世界が、

ただ“整えられている”だけ。



「現時点では、静観が最適解です」


精霊女王は、公式判断として告げる。


「創造神が動いた証拠はありません」


「したがって、

 精霊界が動く理由もない」


その判断は、

精霊たちを完全に納得させた。


そして同時に、

誰も核心に触れなくなった。



精霊女王は、玉座から立ち上がらない。


命令も出さない。

境界にも触れない。


ただ、見ない。


見ないことこそが、

最も強い介入だと知っているから。


「……相変わらずですね」


誰にも聞こえない声。


それは、

創造神に向けた言葉ではない。


“母としての感情”を、

 世界から切り離すための独白だった。

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