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転生したら最強すぎた件について   作者: ミリア
プロローグ〜第一章
12/37

触れないという選択(教会側)

 朝の教会は、静かだった。


 祈りの声はある。

 儀式も、形式も、いつも通り。


 ――だが、奥に集められた数名の神官たちは、誰一人として落ち着いていなかった。


「昨夜も、です」


 若い神官が報告する。


「深夜祈祷の最中、魔力の流れが“重なりました”」


「上書きではなく?」


「はい。まるで……別の祈りが、同時に存在しているような」


 老神官は、静かに頷いた。


「やはりな」


「神の介入でしょうか?」


「断定はできん」


 彼は、机に広げられた報告書に目を落とす。


 冒険者ギルドからの簡易記録。

 生存率、回復速度、戦闘後の環境変化。


「この冒険者……ミリア」


 名を口にした瞬間、場の空気がわずかに張りつめた。


「力は突出していない。

 だが、“結果”だけが合わない」


「偶然、では……?」


「偶然にしては、回数が多すぎる」


 老神官は、神像のある方角へ視線を向ける。


「もし仮に、神が関わっているとするなら……」


「なら?」


「これほど穏やかな干渉は、神らしくない」


 沈黙。


「精霊、という可能性は?」


「精霊なら、もっと自然に現象が残る」


 老神官は、ゆっくりと首を振る。


「これは――誰かが“守ろうとしている”だけだ」


「意思のない、守護……?」


「あるいは、意思があっても、

 本人に自覚がない」


 神官たちは、息を呑む。


「では……どうしますか?」


 老神官は、迷わなかった。


「触れるな」


「……え?」


「監視もしない。

 祈りも、試すな」


 はっきりと告げる。


「気づいていない者に、神の側から触れれば、

 それは“導き”ではなく“歪み”になる」


 神官たちは、静かに頭を下げた。


「我々は、ただ見ている」


 老神官は、そう締めくくった。


「世界が、どう動くのかを」


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