01:プロローグ
優勢に進める海兵隊。しかし彼等を冷酷な運命が襲う。
2023年8月の中国。
度重なる政策の失敗と官僚主義で混乱の極みにあった中国でクーデターが発生した。
新政権は中華人民共和国を解体して民主主義に則った政策として国家を中華連邦と改名。共産主義を違法として各地で旧政治体制に凝り固まった官僚達を次々と拘束していくが、あまりにも無理なやり方に逆に反発を強めて行った。
そして僅か2ヶ月で旧人民解放軍で構成された超国家主義者達による反乱が始まり、中国は混乱の坩堝へと突き落とされた。
開戦当初は超国家主義者達が優勢だったが、米軍を主体とした連合軍の介入で形勢は逆転。超国家主義者達は南京に追い込まれた。
内戦を終結させる為、連合軍は南京に進軍。その先頭には歴戦の兵士、ライル・L・ブレイド中佐率いる米海兵隊第31海兵遠征隊指揮下の大隊“ウルフパック”の姿があった。
「奴等を釘付けにしろ!!逃がすなよ!!」
『了解!!』
南京の倒壊した紫峰タワー周辺で俺は小隊の1つを率いて接敵していた。
部下達はM27 IARやM38 SDMR、M32を用いて応戦し、M4A1を手に敵を仕留める。
逆に超国家主義者達は軍の武器庫を銃撃して多数の95式自動歩槍や03式、旧式の81式や56式で応戦するが劣化した銃では俺達に勝てるはずがない。
「建物の1階にRPG部隊!!厄介になる前に片付けろ軍曹!!」
「了解!!吹っ飛びやがれ!!」
近くにいた軍曹から背中に預けていたAT-4CSを取り出し、照準を構えようとしていた敵RPG部隊に合わせてから84mm弾頭を撃ち出す。
弾頭はまっすぐと敵RPG部隊がいる1階の窓に吸い込まれ、そのまま爆発して敵兵を爆風と破片で外に放り出した。
更に別の敵兵がいたようで、両手を上げながらこちらに投降する意思を見せて来た。だが奴等は投降をよく偽ることがあり、司令部からも戦闘中は可能な限り敵を捕虜にするなという命令が来ている。
素早く照準を合わせてから5.56mm弾を敵の身体に撃ち込んで射殺すると大声で部下に指示した。
「よし、このまま奴等を殲滅する!!海兵隊魂を奴等に見せつけてやれ!!」
『了解!!』
敵は俺達の攻勢に怖気づいたようで反撃もままならない状態だ。そんな状態に俺達は殲滅していく。
他エリアでも戦闘が継続されている中、俺達の担当エリアの制圧が完了した。
「アルファ0-6からウォーロード。周辺エリアの制圧完了。負傷者10名で戦死者はなし。回収を要請」
<アルファ0-6、ウォーロードだ。直ちに回収部隊を急行させる。現在地で待機せよ>
「了解だ、out」
自分の無線機でHQに状況報告するとすぐに周辺を警戒する。
いつ敵の増援が来るか分からないからだ。
あれから大隊を集結させてから防衛線を形成し、2度ほど敵を返り討ちにして1人を捕虜にした。
「負傷者を一箇所に集めろ、何処から敵が現れるか分からんぞ」
「了解です」
「曹長、ビルの屋上にスナイパー配備だ。お前が指揮しろ」
「了解」
「捕らえた捕虜は何か吐いたか?」
「今は聴取中です「中佐!!」…なんだ?」
声がした方角を見ると捕虜を尋問していた軍曹が慌てて駆け寄って来た。
「どうした?」
「捕虜が口を割りましたがまずい事態に……」
「何があった?」
「敵が核の起爆を進めていると!?」
「何だと!?場所と時刻は!?」
「中佐!!GHQから緊急連絡!!SEALsが核を発見!!全部隊は安全なエリアまで退避………」
部下が報告している矢先、俺達の意識は真っ白になった。
爆風と高熱、市街地の中央から発生した巨大なきのこ雲によって……………。
超国家主義者達による戦術核起爆で命を落としたライルは時空の狭間で戦乙女に“とある世界”の異変を調べるために部下共々降臨する。
次回:ヴァルキュリア
乱世に狼の雄叫びが木霊する………