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銀の髪の兄妹   作者: 銀狐
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銀の髪の少年の正体

戦後処理をドラガ伯爵親子に任せて、ドラガ領都に戻ってきたジルたちは、応接室に集まった。

「さて、何から話そうか。」

茶器をさらに戻し、テーブルの上に両手の肘を乗せ、手を組んで額に押し当てジークフリートは大きく息を吐き出した。

それを、アラン、ジル、エリアンヌが見つめる。

「私の母はエルフでこの髪は、エリアンヌ同様、その母から受け継いだものだ。母は戦士であり魔法士でもあった。戦場で戦っていた父と偶然出会い、父の熱烈な懇願により妃になったと聞く。やがて私が生まれ、エリアンヌを身ごもった。その時、生まれたのは男女の双子だったのだ。」

「え・・・・。」

まさかと驚いてジルが声を上げる。

声にこそ出さなかったが、エリアンヌも目を見張った。

「そうだ、ジル、本当の名はジルベルト、お前だよ。」

ジークフリートは手前に座っているジルの手を微笑みながら、優しく握る。

「どうして・・・。」

「私とエリアンヌは、かなり強い魔力を持って生まれたが、ジルベルト、お前の魔力はけた外れに強く、膨大だった。母自身、膨大な魔力を持っていたために、エルフに狙われていると言っていた。そのままにしておくと、ジルベルトも狙われてしまう。それで、あの短剣の宝石に魔力を封じたのだよ。しかし、そのあと、私に毒が盛られてしまった。瀕死の私を助けるために、母はただでさえジルベルトの魔力を封じるために膨大な魔力を使ったその体で、私に毒消しのために魔力を使い、無理がたたって亡くなってしまった。魔力のこともあるし、王位争いで男子は狙われると思った母は、当時近衛騎士団長だったヨハン・グラフ殿にジルベルトを託すことにした。」

「俺のお母さんは・・・。」

「そうだね、もうすでに亡くなっている。しかし、私とエリアンヌはお前の兄妹だ。父も存命だ。城に帰ったら会いに行こう。」

話は聞いたものの、信じられない気持ちで、ジークフリートとエリアンヌの顔を交互に見た。

義理の父であるヨハンからは、母親から預けられたとしか聞いていなかった。

事情があるから今は話せないとも・・・。

だから、時期が来れば実の母親に会えるものと思っていたのに、すでに亡くなっていたと聞き、呆然とした。

エリアンヌは手で口をふさいでいる。

アランが、ジルの肩に手を置いて、頷いた。

その様子を見ると、この事情ははなから知っていたのだろう。

短い期間であったが、ジークフリートに接して、妙な安心感や親近感を抱いていたが、まさか本当に血のつながった兄弟だったのかと、思った。

ということは・・・自分も王族になるのか・・・・実感がわかない。

「突然のことで、混乱しています。ひとまず、自室に戻らせていただきます。」

そう言うと、部屋を後にした。


部屋に戻ってゴロンとベッドに転がった。

アルが部屋にやってきた。

「なんだか、浮かない顔だなあ。どうしたんだよ。」

「ああ・・・。」

俺はベッドに転がったまま、アルに背を向けた。

今は誰とも話したくない気分だった。

「アルカイド国を追っ払えて、よかったよなあ。一時はもうここまでかと思ったよ。」

素っ気ない返事にも懲りずにアルは話しかけてくれる。

「そうだな。」

「国に帰って、また魔物狩ろうぜ。」

「・・・・。」

そっとベッドに腰を下ろし、アルが俺の肩に手を置いた。

「なあ、なにがあっても、俺はお前の友達だぜ。今までも、もちろんこれからもな。」

「アル・・・。」

「なんだよ。」

「俺の母さんのことが分かったんだ。」

「そうか。まあ、そんなことだろうと思ったよ。」

アルの反応が意外に感じて起き上がると、アルが優しく微笑んでいた。こんな顔する奴だったっけ。

「俺はさ、お前のことを側でずっと見てきたんだ。お前が俺たちとは違うってことくらいハナからわかってたさ。王子に会い、王女を見たとき、お前と同じだと思った。・・・そういうことだろ。・・・違ってたか。」

「お前、そんなことを考えてたのか。」

「お前が、鈍感なんだよ。」

「はあ・・・分かってなかったのは、俺とおそらく王女だけか。」

「ああ、双子だからな。変なところ似たもんだ。」

その言い草に、なんだかおかしくなって、噴き出してしまった。

アルも、声を上げて笑った。

「なんで、双子だと分かった。」

「そりゃ、王女から誕生日を聞いたんだよ。やっぱり、って思ったぜ。」

「いつの間に・・・。お前、油断ならないやつだったんだな。」

「最初から疑ってかかってたからな。王女はお前のこと年下だと思ってたみたいだぜ。」

また、二人して笑いあった。

「ああ、なんかお前と話してると、深刻な話もそれほどとは思えなくなるな。」

「まあ、そんなに深刻な話でもないってことだろ。」

「人のことだと思って。」

「ああ、人のことだしな。」

こいつ、と頭を叩こうとしたが、すっと、避けられた。なんか、むかつく。




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