銀の髪の王子は報告する
戦後の片付けがひと段落着いた頃、砦の一室では、疲れを顔に張り付けてはいたが、目には自軍の勝利に安堵の色をたたえていた主だった者たちが集まっていた。
「ひとまず、皆ご苦労であった。アルカイド国の1万5000もの軍勢を退けることができ、なによりである。今回このようにかの国とは戦となったが、今までの懸念であったシーラ王妃派の貴族たちを排除でき、アルカイド国の影響を払しょくできることは、わが国において僥倖である。」
ジークフリートが口火を切った。
「ジークフリート殿下は、宰相がクーデターを起こしたとき、城に残られましたが、それからどうやって宰相軍を寝返らせたのですか。現状、勝利しておりますが、まるでキツネにつままれた気分です。」
ドラガ伯爵がジークフリートに説明を求めた。
「ああ・・・城の中で監禁されていた近衛兵士らに紛れて城を脱出し、シーラ王妃をフランツ第2王子の協力のもと、北棟に幽閉、父王からは、今回の件を説明し譲位を納得していただいた。さらに、宰相たちが新たに雇い入れた傭兵らに紛れてまた、軍に潜み、信頼できる近衛の兵士とヨハン・グラフ殿の協力のもと夜陰に乗じてフックスらシーラ王妃派の貴族たちを捕縛し、軍権を奪取したというわけだ。・・・鷹の連絡法でヨハン殿と渡りをつけてくれたのはアラン、君だね。」
顔を傾け目線をアランに向ける。
「はい。我が父ヨハンが殿下のお役に立ててよかったです。」
「実際人手が足りなかったから、ヨハン殿が傭兵仲間を引き連れてきてくれて、とても助かったよ。お陰で、この戦でのこのこ出てきた反対勢力の貴族たちを一気に捕縛できたからね。かねてから懸案のフランツも、こちらの陣営に取り組むことができた。シーラ王妃とともに処罰するには惜しかったからね。なににしても、今まで燻っていたものを一層できて、上々の結果だ。アルカイド国には、多額の賠償に応じてもらうつもりだ。これで当分はあの国も大人しくしてくれることだろう。何しろ、1万5000の兵力を3000の兵力で追い払ったし、アランとジルの働きを生き残りが大いに語り、もう手を出そうなんて気が起きないだろうからね。」
ジークフリートは、ふんと、鼻で笑い不敵な笑みを見せた。
今まで、ジルに見せていた優し気な、気やすいジークフリートとは違った顔に、背筋を凍らせる。
なんだか、とんでもない人と知り合いになってしまったかも・・・。




