銀の髪の少女は見つかってしまう
シーラ王妃足元に黒づくめの男が平伏していた。
「なるほど、ドラガ辺境伯のところに隠れておったのか。」
「どうやら、方々で密書を飛ばして、味方の貴族と連絡を取り合っているようです。」
黒ずくめの男はさらに状況を説明した。
「ジークフリートが見つからない今、エリアンヌを抑えるのだ。あの王子の弱点はあの王女なのだから・・・。」
ドラガ伯爵領に逃げ込むなど、アルカイド国の目と鼻の先ではないか、兄上に話をつけるのだ。」
扇をパタンと畳むと、その扇を男に向かって突き出した。
「かしこまりました。国王様にその旨しかとお伝えいたします。」
男は、深く頭を下げると、踵を返し、風のようにその場を後にした。
「殿下。・・・エリアンヌ殿下・・・。」
屋敷のほうから庭にいるエリアンヌを呼ぶ声が聞こえる。
「ここよ・・・。」
しばらくすると、執事のセバスがやってきた。
「殿下、こちらでしたか。伯爵さまが至急のお話があるそうで。急いでお越しください。」
「わかったわ。」
応接室に行くと、重い空気を纏って皆が沈痛そうな顔をしていた。
「殿下、危惧していたことがおきました。実はアルカイド国が挙兵しました。こちらに向かっております。」
「なんですって。」
「どうやら、密偵が紛れ込んでおったようで、エリアンヌ殿下の所在が洩れたものと思われます。仲間の密偵を捕まえましたが、一人取り逃がしました。」
「急ぎ国内の貴族たちに援軍を頼む急使を遣わしましたが、援軍が来るまでこちらで持ちこたえなければなりません。」
「数は。」
「わが兵力3000に対して1万5000。」
「なっ・・・5倍。」
「国境の砦に陣を敷き、ひとますここで、迎え撃ちます。」
ヴィルヘルムとグスタフが難しい顔をして、頷き合った。
「アラン殿、ジル殿、貴殿たちはここで、エリアンヌ殿下をお守りしてください。」
「いえ、私も一緒に戦います。」
「兄さん、俺も行くよ。」
「私のせいなのに、ここでじっとしているわけにもいきません。私も行きます。伯爵様が敗れるようなことがあれば、私も無事ではありません。一蓮托生です。」
アランもジルもエリアンヌも一緒に戦うと、声を上げた。
「・・・わかりました。ご無理はなさらぬよう。」
「早速、部隊を整えてまいります。グスタフ行くぞ。」
ヴィルヘルムとグスタフは急ぎ、部屋を後にした。




