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銀の髪の兄妹   作者: 銀狐
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銀の髪の少年との出会い

 カールは、レント地方のレースが入荷したとの知らせを受け、馬車で港に向かっていた。途中の森に入り、しばらく進んだ辺りで向かってくる数騎の男たちが近づいていてきた。

そのうちの一人が矢を射かけてきて、馬の肩辺りに刺さり倒れた。御者は、反動で振り落とされ、気を失った。

馬車の扉が乱暴に開け放たれた後、乗り込んできた襲撃者が中にいるカールの蹴りを受け吹き飛んだ。

吹き飛ばされた無頼者の仲間たちが集まってきた。カールは、手にした剣を抜き放った。馬車に並走していた護衛も加わる。

「何の用だ。生憎お前たちが欲しがるお宝は積んでいない。」

「悪いが、お宅の商会はちっと、幅を利かせすぎたようだな。目障りなんだとよ。」

商売を始めたと思ったら、瞬く間に商会を設立し、急速に勢力を拡大しているリンツ商会を排斥しようとする商売敵は枚挙にいとまがない。命を狙われるのは初めてというわけではなかった。

そのため、カールは身を守るため、剣術を身に着けていた。護衛と二人なら何とか対応できると踏んでいた。

しかし、その護衛が襲撃者たちのほうについたのだ。途端に形勢逆転に陥った。

カールに対するは、5人から6人に増え、逆にこちらはたった一人になってしまった。

カールの顔は険しくなり、つうっと汗が額を滑った。

一人の男が切りかかり、カールが剣で薙ぎ払うと、横から別の男が切りかかってきた。返す剣でそれを受け止めたが、また別の男が剣を突き出してきた。

正面の男を蹴り、迫ってきた剣をすんででかわし、足をかけて転ばせると利き手を切り付けた。

カールは、一足飛びに倒れていた男にせまり、その背中を切り付けた。

「ほう、商人にしておくのは惜しいな。どけ、俺がやる。」

カールが護衛に雇っていた男が前に進んできた。

細身のカールに対して、上背のある筋肉質の男がにやりと笑い、剣をカールに振りかぶった。

耳をつんざく刃と刃が交差した音が森の中に響いた。

他の男たちとは比べようもないほどの重い衝撃がカールを襲い、2合3合と打ち合った。

だが、あまりの重い剣の衝撃に手がびりびりとしびれてきた。

もう、一度でも打ち合えば剣を取り落としてしまうと、思ったその時。

ひゅんっと、風切り音がしたかと思えば、矢が男の利き腕に刺さった。

これを逃さず、カールは男の肩を切り付け、初めに切りかかってきた男の足を切り付けた。

3人を戦闘不能にして、残る3人に剣を向けたその時、先ほどとはまた別の方向から矢が飛んできて、護衛だった男の足に刺さった。

援護の矢がいつ飛んでくるかわからない状況で不利と見たか、男たちは撤退を決め、馬に乗って去って行った。

「どなたか知らないが、助かったよ。」

すると、左右の茂みがガサガサとなって、カールの前に現れた。一人は、淡い金髪で、黒茶の瞳の10代前半と思しき少年で、もう一人は同じくらいの背格好でフードをかぶっていたので髪はわからなかったが、目は碧眼の男の子だった。

そのフードの男の子の顔を見て、カールは息を飲んだ。

「君たちが助けてくれたんだね。ありがとう。名前を聞いても。」

緊張感を取ろうと、カイルは満面の笑みで名前を促す。

「俺はアルで、こいつはジル。森で狩りをしていたんだけど、馬車が襲われているのを見つけて矢をいかけたんだ。」

金髪の少年が明るく答えた。フードの少年は黙ってこちらを見ていた。

「いい腕だ。君たちは狩人なのかい。」

「いや、こう見えて、ジルは凄腕の冒険者なんだぜ。まあ、俺もな。ジルの親父さんと組んでるんだ。」

町の近郊とはいえ、森の中には熊や狼などの危険な動物がいるのにこんな子供二人で分け入って大丈夫なのかと心配になる。

だが、この年で凄腕の冒険者ならばわからなくもない。弓の腕から言っても納得できる。剣も使えるのだろうか。

「弓の腕は確かにすごかったが、剣も使えるのかい。」

問いかけが終わったと思ったら一瞬でジルが小刀の先をカールの喉元に突き付けていた。

カールの剣の心得はあるし、そんなに弱いわけでもない。先程の盗賊くずれの3人ほどなら対処できる自信はあった。

しかし、そのカールをもってしても、ジルの動きに反応できなかった。

「剣の腕も確かで、凄腕の冒険者というのは、納得したよ。どうだろう、港町まで行くところなんだけど、護衛をお願いしてもいいかな。もちろん代金は弾むよ。今回のお礼もかねてね。」

2人の少年たちは、なにか相談をはじめ、こちらに向き直った。ジルは、鋭く指笛を鳴らすと、空から鷲が舞い降りてきた。その鷲の足に書付のようなものを結び付けると、空に放した。

鷲が飛び去って行く方向は、トラビス村の方角と、カールは見当をつけた。

「親父には、連絡したからついて行ってやってもいいよ。」

初めて口を開いたジルは少し細めた目をこちらに向けて少し口端を上げた。



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