銀の髪の少女は少年を訝しむ
朝食には、泣きはらして赤くなった目をしたエリアンヌも姿を見せた。
右奥にエリアンヌ、その隣にアラン、ジル、アルが座り、向かい奥にドラガ伯爵、伯爵子息のグスタフ、カールが座った。
王都では目にすることのない珍しい種類の野菜や野鳥を焼いたものが並んだ。ジルやアルは、貴族たちと一緒の食卓について居心地が悪そうにしていた。
「ほら、ジル。この野菜、珍しいだろ。食べてみろ。」
「ありがとう。兄さん。・・・おいしいよ。」
二人でにこやかに見つめあう兄弟。
隣の弟に世話を焼くアランをじっとりと横目でエリアンヌが眺めている。
エリアンヌは、アランが自分に女性として関心を示さないのはこういうことだったのかと、悲しいほど理解した。
そりゃあ、弟とそっくりな容姿の王女を女性として見ろというのは無理な話であったのだ。
スープを飲みながら、がっくりと肩を落としてしまった。
それにしても、全く似ていない兄弟だと思った。アルは、話している感じから、血縁ではないようだ。
この自分とそっくりなジルには、なにか事情があるのでは・・・まさか、自分と姉弟・・・いやいや。
年齢は聞かなかったが、身長は私のほうが高い。ジルは、私より年下に違いない。
ひょっとしたら、母親が違うのかも、ジーク兄さまとフランツ兄さまだって全然似ていないし・・・。
母親が、私たちのお母さまと同じエルフなのでは・・・エルフが母親だと皆同じような顔立ちになるのかしら・・・わからない・・・。
「エリアンヌ殿下。難しいお顔をされておりますが、なにを考えておられるのですか。」
ヴィルヘルムの隣で食事していたドラガ辺境伯嫡男グスタフが問いかけた。
「・・・えっ。・・・・あ、あの・・・グスタフ様、私の名で密書を送れないものかと・・・。」
「密書ですか。」
「ええ、兄に味方してくれていた方々に現状を知らせ、内密に動いていただくのです。」
「なるほど・・・。しかし、どなたに送るか考えものですな。下手すると、ジークフリート殿下不在で旗色を替えてしますものもいるかもしれませんし、それによって、エリアンヌ殿下の居所の情報が洩れるかもしれません。」
「そうですね。でも、王都の様子も知りたいですし、兄の消息も知りたいのですが・・・。」
「あとで、どの家の送るのか相談いたしましょう。」
「それに、王都に近いグラフ侯爵家を加えていただけますか。」
アランが口を挟んだ。
「グラフ侯爵家は、信用できるのですか。」
「はい、大丈夫です。保証いたします。」
アランの真摯な目がグスタフに向けられた。
ヴィルヘルムがグスタフに頷き、了承の合図を送る。
「そこまで、おっしゃるのなら、加えましょう。それと、アルカイド国の不穏な動きもあります。万が一を考え、態勢を整えておくべきでしょう。」
「ご配慮に感謝いたします。」




