銀の髪の少女は兄王子を心配する
ジルにあてがわれた部屋に、アルがやってきて、ベッドでごろごろ寛いでいる。
ジルは、夕日の遮光を浴びながら椅子に座ってぼーっと窓の景色を眺めている。
「なあ、ジル。大変なことになっちまったなあ。」
「ああ・・・。」
「ジークフリート王子、捕まっちゃったかなあ。」
「・・・・。」
「これからどうする。」
「俺は、アラン兄さんについていくよ。王子に王女頼まれちまったからなあ。」
窓に顔を向けたまま、ジルは答えた。
「でも、ここにいれば、ひとまず大丈夫なんじゃないの。俺たちがいる意味ないんじゃないの。俺たちに何ができるんだよ。村に帰ってもいいんじゃないの。」
「帰りたいならお前ひとりで帰れよ。俺は残る。」
突然アルに向き直ってジルは言い切った。
「わかったよ。お前が残るって言うなら、俺も残るよ。あの貴族突き飛ばして原因作ったとか、王子残してきたこととか、王女に対して罪悪感があるんだろう。・・・無理はするなよ。」
「・・・・すまない。」
エリアンヌは食事にも顔を出さず、部屋でひとり嘆き悲しんでいた。
愛想はいいが、何を考えているかわからない大人たちに囲まれた王宮で、唯一の心のよりどころの兄王子の消息が知れないという不安に押しつぶされそうになっていた。
ベッドにうつ伏して声を荒げて泣き叫んでいた。
「殿下、アランです。ここを開けてください。」
「今は、誰にも会いたくないの。ひとりにして。」
「お願いです。殿下、開けてください。」
しばらく押し問答をしたが、エリアンヌはやっと扉を開けると、アランとカールが部屋に入ってきた。
「ジークフリート殿下を王宮に置いてきてしまって、申し訳ございません。」
「・・・・。」
ポロポロとエリアンヌの頬を涙の雫が伝う。
「しかし、あのジークフリート殿下のこと、必ずやご無事のことと信じております。なんの考えもなく残られたのではないと思います。お心を強くお持ちください。」
「お兄様に・・・・お兄様に、また会えるわよね。」
「ええ、会えますとも。」
エリアンヌは、目の前で跪いて微笑みを浮かべ、手を握るアランに思わず抱き着き、わんわん泣いた。
隣で、カールも涙を流しながら控えていた。




