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銀の髪の兄妹   作者: 銀狐
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銀の髪の王子に暗雲が忍び寄る

 扉を開けると重厚な執務机の上に書類が並んでいる。

座っているのは、この国の第一王子のジークフリートだ。

「ジークフリート殿下、相変わらず仕事熱心ですね。」

「叔父上、こんなところに来て、からかいにいらっしゃったのですか。」

ジークフリートを前にして、にこやかに笑みを浮かべているのは、国王の弟であるハンス・ロッシュ公爵である。

「仕事が出来すぎるというのも、敵を作る理由になることは、分かっているのでしょう。」

「おや、からかいではなく、嫌みでしたか。」

「これでも、殿下のことは、心配しているのですよ。宰相が私のところに来て、カイルにエリアンヌ殿下の降嫁がなされる当てが外れたかもしれないと、ぼやいていきましたよ。」

このロッシュ公爵は、王位継承権を主張したことはないが、密かに公爵を王位に押すものもいて、油断がならないが、なにかと助言をしてくれて助かっている。

手にしていた書類を机に置き、腕を組んだ。

「なるほど、叔父上に泣きつきましたか。政策上全く意見が合わない私が、宰相はよほど鬱陶しいらしい。エリアンヌを降嫁させ、私の親族になり、牽制しようと画策していたのがかなわないとなって、フランツ側につくのか・・・。」

「たぶん、フランツ殿下どころか、シーラ妃殿下のところへも行ったのではないでしょうか。」

ジークフリートは、椅子の背もられに体を預け、息を吐き、眉間に手をやり親指と人差し指でぐりぐりともんだ。

「これで、均衡が壊れたのかもしれません。微妙に保たれていた均衡が・・・。」


 シーラ王妃の部屋には、宰相のヘルマン・フックス侯爵がいた。

「王妃殿下、あのジークフリート王子はいけません。他国との交易を拡大しろだの、領地の関税を下げろなど領地のことに口出ししてきて、あの王子の言う通りにしたら、わが国の産業は大打撃を受けます。それに、あの忌々しいエリアンヌ王女ときたら、腹立たしいにもほどがあります。ここは、俊英なフランツ王子に王太子になっていただいて、わが国を導いていただかねば・・・。」

「やっと、そなたもわかったか。・・・実は、アルカイド国の国王である、わが兄上もフランツにぜひとも王位を戴かせたいと考えておられる。いつまた争いならぬかわからぬような、緊張状態ではなく、甥が王位を継ぐとなれば関係は一気に改善するであろう。それこそ、両国のためというもの。フランツは争いを好まぬゆえ、なかなか重い腰を上げようとはせぬ。しかし、隣国の兄上も陰で動いておられる。」

扇を開いて、にんまりと笑った口元を隠しながら、シーラはヘルマンを流し見た。

「しかし、あの王子を押すものも多くおります。」

「なに、王子がいなくなれば、フランツしかおるまい。エリアンヌなどまだ小娘ではないか。それに、フランツにはアルカイド国がついておる。そなたも、それ相応の働きを見せよ。わかっておるな。」

「はい、このヘルマン、フランツ王子のためにひと働きして見せましょう。」

王妃と宰相はにんまりと邪悪な笑みを浮かべた。



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