キャプテン・沢田先生
僕は大きく深いため息をついて、呟いた。
僕「この世界も駄目だな、反物質の世界はどれもクソだ。」
僕は、頭の中に描かれている幾つもの世界の画面から、″青い世界″を選択し、その場から消えた。
総長・森「ん?いなくなった・・・・あの野郎、いったいどこへ?」
沢田先生「瞬間移動?まさか、彼は!!」
屋上にいた生徒と教師達は、僕がいなくなった場所を見ながら、指差したり叫んだりした。
「あいつ、消えていなくなった!!」
「何者だ、あの生徒は!!」
「タイムトラベラー?」
場面が変わって、僕は白いクルージングボートに乗っていた。周りを見渡すと船一隻もおらず、島1つなかった。
見渡す限り青い海が広がり、ジンジンと太陽が照りつける青い空だった。
僕は、パラレルワールドを自由に選んで行き来する住人。
他の世界に行こうかなと思うと、頭の中に幾つかの世界の画像と、その世界の名前が現れる。
だいたい、その世界から離れようと思うときは、切羽詰まった状況なので、慌てて世界を選んで移動するって感じだ。
最近は、選ぶ世界はもっぱら反物質の世界で、ファンタジーな生物が生息しており、人類はその生物達に食われるため戦っている。
人類の兵器は通用せず、最後の手段は、陽子が正の人間と、負の人間が接触することによって起きる大爆発だ。
僕は、どこまでも広がる海を見ながら言った。
僕「もう、反物質世界はええわ。それにしても、この船には他に誰か乗ってないのか?」
カツンカツンカツンカツン・・・・。
下の階段から誰かが上がって来た。
紺の帽子に白い長袖のTシャツ、紺の薄いデニムに黒いライフジャケットを羽織った沢田先生だった。
沢田先生「準備は出来ましたか?ちゃんとライフジャケットを着て下さい。」
僕「やっぱり最初に出会うのは、いつも沢田先生だ。」
沢田先生は、シートの下の引出しから、オレンジ色のライフジャケットと、小型の透明な銃を僕に渡した。
沢田先生「覚悟は出来ましたか?この世界で生き残っているのは、どうやら私と君だけのようです。では、出発進行!!」
僕は思った。
僕『沢田先生と僕だけって、もうこの時点で駄目だろ。』
クルーザーボートで30分ほど直進すると、巨大な白い岩が見え始めた。
沢田先生は、その岩に向かって透明の小型の銃を撃ち始めた。
沢田先生「君もボウッとしてないで、あの白い大陸に向かって撃ちなさい!!」
僕「大陸?あれは大陸なんですか?」
沢田先生「君は今頃、何を言ってるんですか?あれはこの世界の人、生物、街、島、国、大陸など全ての物を食べ尽くした白い大陸・ムーです。残っているのは、この海と私と君と、このクルーザーだけ。さあ、あの大陸に食べられたくなかったら、銃を撃って撃って撃ちまくりなさい!!」
僕「・・・・沢田先生、無理だと思います。」
沢田先生「何を言ってるですか!!君は!!諦めたらそこで試合は終わりですよ!!私達の場合は死ぬんですよ!!」
僕は、沢田先生のどこかで聞いたことのある言葉を聞きながら、頭の中に描かれた幾つかの世界を見て選び始めた。




