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僕の整脈を走り抜ける燃える馬
三半規管の地平線を、砂埃捲き上げながら疾走する燃える馬は、僕の瞼の裏で産まれたが、その時、産毛に纏わりついていた母親の胎盤や羊水を洗い流すために、眼鏡屋の店先にある洗アルカリ浄液を頭からかけると、見る見るうちに血で真っ赤だった子馬は艶々とした毛を輝かせ始めたけれども、足元を流れるアルカリ洗浄水がなんだか勿体なかったので、急いで洗浄水をバケツに移して、中を覗き込んでみると三日月の形をして溶けかかった胎盤や黄色い膿のような羊水が混じったマーブル色になっていて、これを母校の小学校に勤める教頭に寄贈したところ、次の日のプールの時間に子供たちが目を洗う蛇口の水として使ってもらえることになって、子供たちのまだ未発達な柔かい眼球に洗浄水が染み込む様を思うと、僕の脳髄の塊たちが熾烈な格闘を行い始める予感がする