大日本連邦帝国概論
ある種の歴史改変小説の舞台説明。架空戦記というより架空歴史。
日本、正式には大日本連邦帝国が世界的な大国の一つであるという事実は、二一世紀開幕から四半世紀を迎えようとする現在、ほぼすべての人類が見解を一致させるところである。
日本連邦は大和民族の出発点でもある日本列島をはじめとして、ユーラシア大陸北西部、北アメリカ大陸(和名:秋津大陸)北西部及び西部海岸の一部、瑞穂大陸(英名:オーストラリア)全土、大東洋(太平洋)全域を領域とする、領土面積のみでも上位に位置する国家である。
この巨大な帝国は第二次世界大戦後の一九五一年、日系国家群が統合する形で生まれた。それ以前は民族的な連帯意識と経済協定、軍事同盟でもって緩く繋がるのみであり、現在の欧州連合のような構成であった。しかし第二次世界大戦時の柔軟性不足への反省から日系国家全体の統一した政体が求められたことによって誕生した。
天皇を元首とする立憲君主国家であり、複数の構成国からなる連邦国家である。それぞれの国家は天皇を共通の君主としつつも共通の政府である連邦帝国政府を持つ物的同君連合である。一部の国家は独自の君主を持ちつつも、天皇の主権を認め、その権威は各国内のみにとどまっている。天皇の立場は、連邦最高法規である連邦帝国憲法によって規定されており、主権は連邦帝国議会へとほぼ完璧に移行している。
構成国には日本皇国、敷島聯合侯国、呂宋国、琉球王国、瑞穂皇国、ブルネイ侯国、加州皇国、南洋聯合侯国などが連なる。
大まかに分類すると、皇国と称される国々はかつての豊臣幕府時代に天領とされた地域であり、明治革命期に天皇を元首する国家へと再編された国々である。
王国は豊臣時代に日本の保護国となった国々であり、明治革命後も日本という枠組みから離脱しなかった国々である。
侯国と称される国々は、豊臣時代に大名諸侯によって統治されていた地域であり、その体制のまま明治革命をのりこえることができた国々でもある。聯合侯国は複数の諸侯による合議制をとった国であり、現在でも国内政治面においてはその方法が継続されている。
連邦構成国中でも特異ともいえるのが呂宋国である。明治革命期以前は諸侯によって統治されていたが、明治革命前後の混乱期において統治力が低下し、それに失望した下級武士と市民による武力革命により独立した。しかし天皇及び日本に対する帰属意識から、独立後も日本という枠組みへと残留している。
このほか中道諸島(英名:ミッドウェー諸島)や照南(英名:シンガポール)等の戦略的重要地域が直轄領として保持されている。
政治体制は、連邦帝国国民全体から直接選挙によって選出された連邦帝国総統(以下総統)が、天皇の任命を受けて連邦帝国府の長として、天皇の輔弼という名目の実質的な代行をおこなう総統制を採用しており、総統は政治的及び軍事的な決定権をほぼ有しており、共和制国家における大統領以上の権限を有している。
連邦帝国府は行政を担当し、上院及び下院の二つからなる連邦帝国議会が立法を担当、連邦帝国裁判所が司法を担当する完全なる三権分立制である。
軍事面においては世界最大級の陸海空軍――空軍は正式には航空宇宙軍――を有する。軍は総統の元に一元化されており、かつての各構成国軍は統合、軍令は統合軍令本部、軍政は兵部省に統一されている。また三軍のほかには準軍事組織として日本海上保安隊が存在し、沿岸警備の任についている。なお構成国の独自兵力としては、儀礼的な近衛部隊のみが存在を許されている。しかし陸軍は、特に各方面部隊は各軍統合以前の伝統を色濃く受け継いでいる。海軍においては、豊臣式とでもいうべき伝統を、ほぼすべての日系国家海軍が受け継いでいたため、統合以前の差異は少なかった。
五〇年代後半に勃発した第三次世界大戦とその後の冷戦を勝ち抜き、日本全体の経済的な後退と歩調を合わせるように大規模な軍備を徐々に縮小させつつある。それでも世界的にみて有力なことには変わりはなく、いまだに敵対的な合衆国や中華、ロシアからは危険視されている。現在連邦帝国府は経済的後退の打開策として、宇宙への拡大―――具体的にいうならば、月面や軌道上への植民地の建設を決定しており、その地における警備及び救難活動を行うため、例外的に航空宇宙軍の拡大が決定している。
これから書く駄文の舞台説明的な文章。先日お亡くなりになった佐藤大輔氏より多分に影響を受けてると思います。