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カエル王女と紅き土偶騎士  作者: エルーカ
9/19

相対

エルーカは作らせたドールハウスの中にいた。

自分好みの部屋の中にいるのはやはり気持ちが良い。

目の前にいる巨大で美しい色のレアーナガエルも素敵なインテリアの一部、目を細めているカエルに近付くとそっと首に腕を回して抱き付いた。

喉をコロコロ鳴らしていたカエルは少し口を開くと真っ赤な舌を出す。

「コロコロコロ。今は亡き王女ルチアの娘エルーカ、双子で生まれしもの、この国の王女として生まれながら魔力を持たぬもの、ラナンティアの大切な娘、ようこそ、歓迎する。そなたの望みは知っている。母ルチアの最期の様子……。」


「教えてくださるの?」


「だが、ルチアの最期は……分からないのだ。すまない。」


「はい、ですから直接母に聞きたいんです。」


「直接か?……それも叶わんだろう」


最後の言葉に肩を落とし、ため息が漏れるのは当然の事だった。


エルーカは池の中のカエルたちに、人間には言えない母親の死を乗り越えられないでいる苦しみを吐露していた。

ある日、いつものように一方的にカエルに向けて話していると、片言で返事をしてきたカエルがいたのだ。

ギョッとして見つめていると身ぶり手振りで一生懸命励ましているように見えた。


このカエルは首の付け根に黒のほくろが二つあり、その下の辺りがうっすら白くなっていて、どうも背中なのに蛇の顔に見える。なので"ヘビちゃん"と呼ぶことにし、言葉を教えることにした。

勉強に参加するのはヘビちゃんだけだったがある日もう1匹、おでこの辺りに白い雫の様な形の模様があるカエルが参加した。この子は"しずく"と呼ぶことにした。


2匹に言葉を教えるのは楽しかった、知能が普通のカエルよりずば抜けて良いようで、しばらく教えていると日常会話もでき、冗談を言ったのには驚いた。

カエルたちが言うには、

代々ラナンティアの国と王族を見守っている。自分達は太古の昔から何度でも甦り歴史の記憶を永遠に記録するものである。


「だとしたら、母の最後の記録もあるわよね?」


残念だが王女ルチアの最期はなぜか死の間際の数分間が読み取れなかった。海外での死などは関係がなく、何かの力が働いたとしか言えないらしい。

がっかりしたエルーカだが、カエルは興味深い話をした。

王族は死すると神の祠に還るのだと。そこではいわゆる幽霊の状態で過去の王族が生活していると言う。

王族だけでなく、騎士や兵士、侍女や料理人など王宮に所縁のあるものも中にはいるそうだ。

死後も王族に仕えているのだろうか?こちら側からすればありがたいが、あちら側はどうなのだろう……。


祠で幽霊となった母に話は聞けるのかと尋ねると、普通にお話しできますと返事があったのでそのほこらにはどのようにして行くのか尋ねた。


レアーナガエルは何度も甦り記憶を繋ぐもの、

記憶は1匹が一人を見るのではなく、いずれかのカエルが見聞きした情報を1ヶ所に集め共有するらしい。話せないカエルは情報を見聞きし、普通にカエルとして生活する。

話せるレベルのカエルは王族に寄り添い記憶を教え知恵を貸すが池や棲みかからは決して離れない。

さらに進化したカエルは聖なるレアーナガエルと呼ばれ、常に行動を共にし、記憶をたどり知恵を貸し、力と魔力で王族を守り力を与えると言われている。


聖なるカエルに会うことが祠への道なのだが、聖なるカエル様は自分達も最近(70年程)見ていないらしくどこにいるかは分からないそうだ。

ただ、現女王は池の畔に神棚の様な物を作りそこへ供え物を置いて何ヵ月か待ちお越し頂いたらしい。


「神棚か……。どうせならドールハウスがいいわね。」


そしてドールハウスが設置されたのだった。

かわいらしいドールハウスにしたおかげかは分からないが早速聖なるレアーナガエルはやって来た。

ただ、聖なるレアーナガエルと対峙はしたが、母の最期は分からずじまいだった。


「祠にお還りになられてるのにお話はできないのですか?」


そう尋ねるとカエルは「ここにはまだ来ていない。」と答えた。


すでに数年経っているのにまだとは、時間がかかるものなのかと考えていると聖なるレアーナガエルは、


「こんなことは今までに例がないのだ、全ての王族は死して間もなくここへ還る。王女ルチアの魂はどこに行ってしまったのだろう……。」

と心配した。


「ともかく、また尋ねたい事があれば来なさい。この家はなかなか良いぞ。」


「はい。」と返事をすると先程までいた部屋の様子が一変し、池の前の芝生の上に寝ていた。

まどろみながら体をひねりドールハウスの方を見る。夢でも見ていたのだろうか?そっと立ち上がるとドレスに付いた芝を両手で払いのける。するとポケットの辺りに固いものが触れた。

何だろうとポケットへ手を突っ込み取り出す。

ひんやりした固いもの。

目の高さまで持ち上げるとそこにはとても美しく輝く5センチ程の大きなエメラルドのネックレスだった。

エメラルドは長方形にカットされておりその回りにはダイヤと真珠があしらわれていた。


「エルーカさま?」


その時エルーカを探していた侍女が安心したようにこちらへ小走りにやって来た。

エルーカはなぜかとっさにエメラルドのネックレスを後ろへ隠した。

なぜか誰にも見せてはいけない気がしたのだった。








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