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カエル王女と紅き土偶騎士  作者: エルーカ
8/19

火種2

あれからエルーカは自分の部屋の前の庭に池を作らせた。

王女さまのささやかなお願いをはね除ける使用人はいないので、たった1日で縦1m50㎝横90㎝深さ1mの楕円の池が完成した。さらに、部屋から見て正面の位置、池のほとりにドールハウスを作らせた。ドールハウスと言ってもそれより大きいサイズで、玄関のドアは両開きでチャイムも鳴るようになっており、また各部屋には窓にカーテン、電気と水道もひき、ベッドや椅子などの家具も設置された。

壁紙は淡いエメラルドグリーンに白と薄ピンク、薄紫の小さな花柄で茶色の腰壁。


ベッドには布の布団はいらないわ、藁か新鮮な細くて柔らかな葉っぱを敷いてね、レアーナガエルさんのお部屋なの。

王女の言葉に苦笑いを返すしかなかった。



それからというもの、毎朝ドールハウスのチャイムを鳴らすのが日課になった。「お留守だわ。」と言うとベッドの萎びた葉っぱを取りだしベッドをきれいに掃除して新しい葉っぱを敷く、湿気を逃がすために窓とカーテンを開けて換気する。


そうして一通り仕事を終えると芝生に転がり肘をつき両手に顎を乗せながら両足を立てては下ろしを繰り返した。

お昼になるまで飽きもせずずっとその調子でいるものだから、侍女は心配した。今年で17にもなると言うのに、おままごととは……。


翌日同じようにチャイムを鳴らすと中で何かが動く気配がした。

エルーカは顔を紅潮させると今か今かとドアが開くのを待った。

しばらくしてもドアが開く気配がない。エルーカは対応してもらえないのならまた明日にしようと池の番を止めたのだが扉はカチャリと開いた。

ハッとして振り返ると誰かが出てくるのを待った……、手だ、カエルの手、水掻きが付いている緑の手。その手がおいでおいでをしている。

エルーカは脅かさないようにゆっくり静かに近付くと手は中へ引っ込む。

ドアを覗き込んだその時ブワっと体に衝撃が走り、気が付くとエルーカは部屋の中に立っていたのだった。


ここは?と辺りを見回す、何だか見覚えがある……あぁ、そうか、作ってもらったドールハウスいやカエルハウスの中だ。ハウスが大きくなったのか自分が小さくなったのかは不明だが、見回した先にとてもきれいなとても大きなレアーナガエルが細めた目のままこちらを見ていた。







レジーナは戦場にいた。

西隣の国との国境を境に両軍が対峙している。騎馬隊の前に一人で立つレジーナは護衛もつけず前へ進み出る。

国境ギリキリまで来ると自軍に振り返り


「相手は愚かにもまたラナンティアの地に足を踏み入れようとしている!我らの力を見せつけ二度と同じ気を起こさぬよう完膚無きまでに叩きのめそうぞ!!」と発破をかけた。


相手方ナダルサンジェ国の大将は先日の戦いの際にレジーナに討ち取られた男の息子が務めていたがレジーナの挑発に顔を赤くして怒鳴った。


「そのような結界の中でしか言えぬ戯れ言、ラナンティアの次期女王殿下はさぞ自信がないと見える。」

ナダルサンジェの兵達は武器を地に叩きつけると、音をダンダンと響かせレジーナを嘲笑い一緒に足を踏み鳴らし出てこい!出てこい!と掛け声をかけた。


ラナンティアの兵の顔に怒りが浮かぶ中、レジーナは手をヒラヒラさせるとナダルサンジェの方へ向き直りそのまま国境の外へ出ていった。

ナダルサンジェの兵達は一瞬驚いたが、中将が「うっ、射てー!」と叫ぶと弓兵の矢が雨の様にレジーナに降り注いだ。

矢はレジーナのいた辺りへ落ち砂ぼこりを巻き上げた。


「やった!」と中将が言おうとした時にはすでに自分も含め回りにいた弓兵たちは全て炎に包まれていた。


いきなり燃え出した隣では足下から氷付けになる兵士達が我を忘れ死への恐怖にパニックになっていた。

同時に二種類だと?そう思っていた大将だがさらに雷に撃たれ、風の刃に引き裂かれ兵は壊滅状態だった。

目の前で微笑みながら同時にいくつもの魔法を使い平然としている王女、いや、もはや王女とは言えない、悪魔……。俺は死ぬのだここで……。

全身から血の気がひいた。


レジーナは大将一人を残し全ての兵を一人で殲滅させると悠々と近付き大将の馬の顎に手をやり優しく撫でた。

微笑みは狂喜に満ちていて決して抗えぬ神の力を感じずにはいられなかった。

レジーナの瞳から目を逸らせないでいるとその目が、目だけでなく首から上が地に落ち大将は絶命した。




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