火種
「さあ、何に生まれ変わりたい?」
「えっ?!」
カエルはその声に反応して辺りを見回した。
「ここは、天国!ななな、なんで?」
「死んだのだよ。」
「えぇー!でも、全然思い出せない。」
「度重なる転生で心が削れて正気を保てなくなりつつある、記憶が残らないようにした。」
「記憶を残さない……、正気を保てなくなった私は残酷なことを平気でしてしまうようになるから?それで私が苦しむから?」
「……。」
「そんな……。」
母親の死の究明はバークレジアの王に託していたが、なんの進展もなく3年が経っていた。
レジーナは女王に幾度となくバークレジアに攻め入ろうと進言したが、「戴冠式で諸国から集まった来賓者の中からどうやって犯人を見つけるのです?犯人が分からない今、どこに攻め込むのです?」女王はレジーナの言葉を撥ね付けた。
あなたは次期女王となるのです、この国の歴史を学んだのであれば他国に攻め入るという事の重大さは理解しているはずです。
この国の歴代の女王、王女たちは誰とも交わらずに子をなしてきた。神に愛された国……。
ラナンティアの歴史書によれば、初代女王は父親が治めていた豊かな国が幾度となく侵略を受け、戦いの最中非業の死を遂げた事に身も心も打ちのめされた。国を守り、民を守る為ならこの身はどうなっても良いと神に願った……。
ある夜、女王は不思議な夢を見た。
「神の力なぞ微々たるものであるが、そなたのその身貰い受けよう。決して侵攻せぬよう、さすれば未来永劫守護の守りがこの国を保護する。決して交わらぬよう、さすれば未来永劫力を持つ宝玉を授け続ける。この人間の王族は女児のみとし、死してその魂は我が祠に集わす。」
ハッとして目が覚めた。
ドキドキと煩い心臓に少し目眩を覚えながらベッドから出ると月に向かい祈りを捧げた……。
侵攻してはならぬ……か。女王から頭を冷やせとレジーナは退出させられていた。
母が亡くなってから3年、バークレジアとは逆隣、西隣の好戦国ナダルサンジェが度々攻め込もうとしてきた際、先頭に立ち戦ったレジーナは強大で尽きることのない魔力で一瞬にして大軍を壊滅させていた。
この3年で国を守れる力を養い自信と実力をつけたのだが、この力はただ守るだけの力なのだ。母の敵さえ取れない!こんな力が必要なのか?
日に日に不満が募っていった。
エルーカはあれからほとんど話をしなくなった。レジーナと女王には笑顔を見せていたが一人になるとボーッと天を見つめていた。
ある日侍女と庭にある小さな池に足の生えたおたまじゃくしを見つけた時に侍女はおかしな光景を見た。
おたまじゃくしを見ながら何か呟いていたのだ。
「この感じ前に一度あったような……?思い出せない……、とても…嫌な記憶……。」
そう言い、部屋へ戻ると鍵のかかるノートとペンを持ち出しレアーナガエルの前へ行き、ボーッとしては書き、終いには話しかけ始めたので、いよいよエルーカは残念な双子の片割れと認識されてしまった。