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カエル王女と紅き土偶騎士  作者: エルーカ
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母と双子

神託を受けてから10年が経っていた。

王女たちも10才となりそれぞれが違った美しさや強さを身に付けていた。


輝く様な金色の髪の少女は背が高く、体はほどよく肉付き、すらりと長く伸びた四肢はとても10才の子には見えなかった。利発そうな茶色の瞳には意思の強さが窺える。溢れ出る色香は男女関係なく魅了する。こちらは姉王女、レジーナと名付けられた。


レジーナ 10才 女

生命力 250

魔法力 999900

攻撃力 85

防御力 145

魔法攻撃 5800

魔法防御 1700


スキル

【火属性魔法】【氷属性魔法】【雷属性魔法】【土属性魔法】【風属性魔法】【光属性魔法】【魔力連続発動】【魔力オート回復 特大】【魔力覚醒】【神の娘の祝福】【???】【???】



美しいエメラルドグリーンの髪の少女もとても10才の子には見えなかった。可憐で愛らしい容姿は5~6才の幼子に見える。吸い込まれそうになる程美しく透き通った薄めのグリーンの瞳は大きく、誰からも愛された。こちらは妹王女、エルーカと名付けられた。


エルーカ 10才 女

生命力 80

魔法力 0

攻撃力 15

防御力 12

魔法攻撃 0

魔法防御 0


スキル

【覚醒】【ラナンティアの加護】【オート防御 微】【カエルのサポート】


二人の成長の差は生まれて間もなく出ていて、姉は泣いて自己主張し母を妹に近付けさせなかった。妹は泣くことがあまりなく手のかからない子だったので、大抵一人で天を見ていたり、ニコニコして侍女たちを癒していた。


母にいつも抱っこされていた姉王女レジーナだったが、魔力をセーブしなければ侍女たちを失神させてしまう為、小さい内から女王の元、厳しい修行を受けることになる。

力の使い方や帝王学、マナーや護身術などありとあらゆるものを徹底的に女王に教育された。


妹王女エルーカは成長が遅く、双子であるにも関わらず少女の姉、幼女の妹と比較できる程の体の差ができていた。体だけでなく学力も然り、城のものは双子であることをいつしか忘れ、年の離れた姉妹として二人に接する様になっていった。


エルーカを「神に見放された子」と罵るものも少なからずいた。


「エルーカ様は全く魔力がないらしい。この国の王女ともあろうお方が!やはり双子は何かしら難があるな。」


「まだお小さいし、レジーナ様がいらっしゃるからラナンティアは安泰ですよ。レジーナ様がいらっしゃれば何の問題もありません。本当に心強い事だわ。」


「あのお年ですでにご使用なさる魔法の数は、大人の魔導師様を遥かにしのぐそうよ。」


「魔力も底なしで尽きないそうだよ!」


「エルーカ様は今後もあのままなのだろうか?神に見放されたのかもしれないな。」


「エルーカ様はただゆっくり成長なさっているのです!無礼ですよ!」


「ゆっくり成長? んじゃ、何歳まで生きるんだろうねぇ。」


王宮の中庭で使用人たちの噂話が耳に入るがレジーナは横目で見やるが無視してかわいい妹の部屋へ足を運ぶ。


「エルー、お土産だよー。」


気の強そうな顔からは想像できない優しい声色で妹を呼んだ。可愛らしいピンクの小花の壁紙に白い家具にたくさんのぬいぐるみ、双子であるレジーナにしてみるととても幼稚な部屋。


「あっま。」


鼻の奥に甘ったるい焼き菓子の香りがこびりつき、息を吸う度に胃がもやもやする。レジーナは胸に手を当て深呼吸した。


「おねえちゃま~、エルど~こだ~。」


と、すぐ目の前のベッドの下から聞こえてくる妹の声にレジーナは頬を緩めクスクス笑うとわざとベッドから離れ、時々妹の名を呼びながら探す振りをして、そろそろ妹が飽きる頃を見計らうと、ベッドの頭寄りにいるであろう場所から一番遠い足下側から大きな声で「見つけた!」と勢い良く言って覗き込む。


「キャー!」


と甲高い、楽しそうな叫び声を出しケラケラ笑いながら出てこようとする小さな妹を引っ張り出しそのまま抱っこする。

なんてかわいい妹なんだろう。この子が私の心を成長させてくれている。本当に愛おしい子。


レジーナは女王の厳しい指導が妹に及ばないことを祈っていた。

双子であり、もちろん同い年でありながら厳しいしつけや教育に根をあげそうになる自分と、成長が遅いと見放された事により自由な妹、愛しく思うことはあっても憎んだり恨んだりする気持ちは全くなかった。


「私が守るからね。」


と言うと強く抱き締めた。


「エルもおねえちゃまを守るよ!」


と言い真似してぐっと力を込め抱き締め返した。



姉妹助け合いながら過ごし14才になる頃、東隣の友好国の王が崩御された。まだ19才の皇太子は王の大喪を早々に済ませると戴冠式の準備に取り掛かった。

隣国であるラナンティアの王族にも招待状が届いたが結界が弱まると言う理由から女王は城に留まることになり、娘と孫二人が出席する事となる。

王女親子が公務を含め出国するは始めての事で、戴冠式に合わせ出発する際には軍隊が隊列を組み魔導師や暗殺部隊も同行し万全が期された。


東の隣国バークレジアは鉄鋼技術が進んでおり武器や防具から日常雑貨まで手掛け、一大輸出産業となっていて一国の予算を優に賄えていて裕福な国、街並みは近代都市の様相でありながら、昔ながらの小さな鉄工所が多い為レトロな雰囲気もある。


女性の人口減少もあり、街には職人気質の男性しか見られない。

女性不足の危惧は一般市民だけの話ではなかった。裕福な街の権力者や名のある騎士、貴族、伯爵家、王家とて例外ではなかった。

今回王女親子が招待されたのは、女性王族が稀少なものとなった今、世界の王家や権力者がラナンティア王女を手に入れたいと考えている事を憂慮した上での行動であるに違いない。

どの国も喉から手が出るほど欲しいラナンティアの王女をラナンティア国から外へ連れ出せた功績は非常に大きい。バークレジアの経済力と力を内外に知らしめたと言っても過言ではないだろう。そしてラナンティアの王女はバークレジア王の物になるのだと宣言したようなものだ。


女性王族が3人もお越しになると言う事で国を挙げて歓迎された王女一行がラナンティアとの国境を超えるとすぐにバークレジアの迎えの兵士2000人が護衛に就いた。

街を通り過ぎる時は一目王女を見ようと、両手に両国の旗を持った市民が押し寄せたが、そんなお祭りムードをかき消すように両国の軍隊は、"世界の宝"を輸送していると言う責務から近づくものや怪しい動きをするものをことごとく排除した。


数日かけて王女たちはバークレジア城に入った。




バークレジア城の正門は顔を真上に向けないとてっぺんが見えない程大きい。重厚な門を王女の列の先頭の兵士が通ってから、最後の兵士が通りすぎるまで1時間かかった。

おかしな輩が紛れ込んでないかしっかりチェックされた。


馬車から降りる際は、国から持参した、中に20人程は悠々と入れるくらい大きな傘の回りに足下まで垂れ下がるエンジ色に金のレースのあしらわれたベルベットの様な布が取り付けられた「天傘」と呼ばれる、王族が衆目にさらされないようにする為の傘の中に入り歩いた。


王女を見られるかもしれないと城の中にいた者は、こぞって注視していたのでみんながっかりした。しかし珍しい道具もあるものだと、行ったことのない隣国に思いを馳せた。


天傘の中では護衛兵長が傘の柄を自ら持ち、その周りを歩きにくそうにくっついて進んでいた。

ベルベット素材の様に見えるが、中からは外が見える様になっているのでどこかにぶつかったり落ちたりすることはなく安全だ。


場内に足を踏み入れると、廊下の真ん中には真っ赤なカーペットが敷かれおり、両端には甲冑がずらりと並べられていた。壁にも剣と盾が等間隔で飾られ物々しい雰囲気だった。


全体的に薄暗く、使用人の態度も城主に対して畏怖の念を抱いている様に見えた。

暖かみの全くない城内で、始めての外国と言う事もあり多少受かれていた3人だが、冷たい印象の城にそのほのかな熱も冷めていった。


「お母さま、なんだかここの人たち怖い。」


部屋に通され親子3人と気の知れた数人のお付きの者だけになるとエルーカは母親の腰にしがみついた。

母は「大丈夫よ~。」と微笑むと優しく頭を撫でた。


レジーナは部屋の正面にあるとても大きな窓に近付くとそこから見える景色を確認した。

そして部屋を見回すとブツブツと独り言を呟きながら歩き回った。

いつもの事と好きなようにさせていた母は持って来た大きな荷物の中にあった水晶を取り出すと部屋の中央辺りに立ち呪文を唱え始めた。


水晶は白く光り出すが、しばらくして光を遮るように大きな影ができた。一緒に水晶を覗き込んでいたエルーカは何だろうと上を見ると大きな御簾が現れていた。

母は御簾を軽々持つと中央に置きその後ろへ椅子を3脚並べた。

その後しばらく親子3人でくつろいだ。


そろそろ陽が沈む頃、バークレジアの頭脳と呼ばれ、若き王の幼少時代の家庭教師で現在は宰相であるステラノグと名乗る男が部屋へやって来た。


「お初お目にかかります、王女殿下。」


ステラノグは膝を付き頭を下げた。


「遠路はるばるお越しくださり感謝申し上げます。道中お疲れになられませんでしたか?王との謁見がこの後ございますが、体調が優れない場合はご遠慮なく仰って下さい。」


「御簾越しでの挨拶お許し下さい、この度はお招きいただきありがとうございます。また、体調までご心配くださり痛み入ります。体調は大丈夫ですので予定通りお願いいたします。」


御簾越しに返事をした。


「かしこまりました。では2時間しましたら、再度お迎えに上がります、それまでごゆるりとお過ごしくださいませ。なにかご所望の物がございましたら鈴でお知らせください、すぐに従者が伺いに参ります。」


「お気遣い感謝いたします。なにかありましたらお願いいたします。」


ステラノグは話が済むと立ち上がって御簾を見つめた。

外からの光で影だけがぼんやり映っていた。





2時間後にステラノグは数人の護衛と一緒にやって来た。部屋へ通されたのはステラノグ一人だった。

着替えを済ませドレスアップしている王女3人が御簾の前へ立ち、ステラノグが入ってくるのを待っていた。

ステラノグはまだ御簾の後ろにいると思っていたので、正面から真ん中に立つ双子王女の母であるルチアを見た。

あまりの美しさに膝を付く事も忘れ呆然と見惚れてしまっていた。


ただ目の前でボーッと見つめてくる男にルチアは戸惑っていた。

「あっ、あの?」と声をかける。


ステラノグはハッとして我に返り顔を真っ赤にした。

レジーナが「やれやれ…」と言ったのはステラノグには聞こえてはいなかった。


なんて美しいんだ、花盛りの年は少しだけ過ぎているものの、それでも若さ溢れ、可憐さを残した色気を持ち、何よりも聖母の様な穏やかで優しい笑顔にステラノグは、女神が降臨したのだと膝を折りその場にひれ伏したのだった。

その後、ルチアの「参りましょう。」という声でやっと4人は部屋を後にするのだった。



廊下に出るとバークレジアの護衛兵たちが王女をその目に捕らえた時もステラノグとほぼ同じ状況に陥ったので、ラナンティア護衛兵長がさっさと天傘へ王女たちを隠した。

隣国の護衛兵たちのやる気がアップしたのはいう迄もない。







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