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カエル王女と紅き土偶騎士  作者: エルーカ
15/19

王女の獲物

残酷な表現があります、ご注意下さいませ。

「そんなこんなで私は力を吸い取りました、それは凄まじいエネルギーを手に入れました。」


「たが、お前の姿はどうだ。死にかけの老体ではないか。力を手に入れたところで今にも死にそうな老体で生き長らえる気はない!」


「これは力が底をついたからでしゅ。ただいまから人智を越えた力をお見せいたしましゅ。」


そう言うとリディアはフードの中から裸の女を取り出した。

レジーナは自分より大きな裸体の髪の毛を掴み、軽々と取り出すリディアを訝しげに鏡越しに見た。


ドサッと落とされた裸体の女は動かない。

胸の下辺りで手をかざすと白い煙のようなものが掌から沸きだしリディアの姿はなくなった。変わりに男の体をした白い煙がいた。

その煙は床で倒れている裸の女にむさぼりついた。


見るに耐えない光景ではあったがレジーナは目をそらさないでいた。これが男女の交わりか……?


一通り愛でて終わると白い煙は女の穴に息を吹いた。まるで風船を膨らますかのように。


女の体の中で一体何が起こっているのか分からないが、膨らんだ体の中身を今度は一気に吸い込んだのだ。

女の体は皮だけになっていた。


「こっ、これが神のすることか?!」


レジーナは顔を歪ませ天井を見つめるとため息混じりに叫んだ。


「デリンダ様はすでに神ではありませんよ。」


さっきまでの滑舌の悪い声ではなく若い艶のある声がした。

振り返ると20代に見える若いリディアがいた。


レジーナは悪魔の様な諸行を受け入れられないでいたのだろう。

心から信頼する乳母がこのような事をするとは……信じたくなかった。


「レジーナ様……。」


突然耳元で名前を呼ばれ驚いた。


「リディア……、私にこれをしろと……言うのか……?」


「受け入れ難いですか?畏れながらレジーナ様、もう時間に猶予はございません。」


「いくらなんでもこれはあまりに酷い……。すまないリディア……私にはできない、」


リディアは拳を握りしめた。何のために自分は化け物になったのだ?


我が主、レジーナ様のためだ。


「レジーナ様……。魔力の枯渇に進行の早い老い、このままではさき程までの私の様な姿で死んでしまいます。あなた様はこの世界を統べるお力を手に入れられます。この力で全世界をその御手に。」


芝居がかった動きと台詞にレジーナは思案した。このまま老いて死んだのでは何のために生まれてきたのか分からないな。


「リスクはあるのか?」


「些細なものでございます。」


「いつできる?」


「すぐにでも。」


リディアはそう言うとフードからまた裸の女を取り出した。

その者に見覚えがあった。


「エルーカの侍女ではないか?」


「レジーナ様ご自分の為に善意はお捨て下さいませ。城の中で神の加護を受けている者の方がエネルギーが多うございます。贄が誰であれ躊躇なさいますな。」


レジーナは深くため息を落とすとリディアを見つめた。


「そうだな……、始めようか。まず、どうしたら良いのだ?」


「はじめまして、ラナンティアの姫。我はデリンダ。神からの咎落ちの身であり、リディアの傀儡。」


「デリンダ様が私の傀儡だなんて!とんでもない言いがかりです。……レジーナ様それでは私と手を繋いでいただけますか?」


そう言って手を差し出した。レジーナが手を繋ぐとリディアは聞いたことのない言葉を呟きだした。


手は熱くなりやがて体の中に何かが侵入しているのを感じた。

侵入者が頭まで来た時にリディアの今までの情報が一気に流れ込んできた。


「あぁ、成る程。女を支配するためにデリンダと贄の交わりが必要なのだな。化け物じみた方法だが……、リスクは地獄の業火に焼かれるのか。」


「レジーナ様は大丈夫でございます、王家の方々は死後、神の祠へ御移りになられるのが決まりです、決して地獄等には落ちません。」


「そうか、では始めようか?」


「デリンダ様はそんなにはお若くないのにこの作業は得意のようで。拐うメイドも最近では選り好みするようになって困ってます。面食いなんです。気持ち悪い!!」


リディアは目の前の惨劇がまるで普通のことの様にデリンダ様への愚痴を溢した。

レジーナは幾度となく行われたおぞましい行為も慣れてしまえば結果、食事などと同じなのだと思うようにした。


「さっきはデリンダが現れるとお前の姿は見えなくなったが、なぜ今は見えているのだ?」


「先程は魔力が底をついていて二人分の姿を維持できなかったのです。」


愛で終わると風船にしてから口一杯に中身を吸い上げ白い煙のデリンダ様はこちらへ近づいてきた。

気持ちの良いものではなく後退りしたい気持ちだった。


デリンダ様はレジーナの唇の前に自分の口を寄せた。


「デリンダ様!レジーナ様には触れないでください!男との接吻など見たくありません。」


「ではどうやって移すのだ?」


「レジーナ様口を大きくお開けください。デリンダ様は少しは離れた所から吹き出してお口の中へ。」


「息を吸い込む感じで大丈夫です。さあ!」


おぉぉぉ!力が!体に力が戻ってくる!!すごい!


レジーナは数ヵ月ぶりに清々しい気持ちになっていた。

ダランとしていた皮膚には張りが戻り髪にも潤いと艶が出ていた。垂れ下がっていた胸とお尻はキュッと持ち上がり少女の体になっていた。

大急ぎで鏡の前へ行き、若返った自分に涙した。


「リディア、デリンダありがとう。礼を申す。」


「おいおい、元は神の使いだぞ。」


「デリンダ様黙って!」


リディアに叱られデリンダ様は黙った。


「神の使いであったな。失礼をした。デリンダ殿感謝する。これからもよろしく頼む。」


レジーナは腰を折り頭を下げた。


「レジーナ様お礼など不要にございます。



レジーナ様!?」


「あああぁぁぁ!」


突然レジーナから光が漏れ出し、それと同時にさっきまでの若々しさは失われてしまった。


体が痛い、体が痛い、そのままレジーナは気を失ってしまった。








数日後に目覚めたレジーナは女王に不調を訴え療養のために別邸をせがんだ。

レジーナの別邸はたった一月で出来上がり間もなくそちらへ移った。


「レジーナ様のお体に合う女を探さないといけないわ。デリンダ様見分けられますか?」


「ふむ、レジーナは誰も受け入れないのかもしれないな。この方法を嫌悪している。自ら受け入れようとしなければ同じことの繰り返しで終わる。」


「そんな!では私は何の為にこんなことを!」


「親族なら……もしかしたら……。」


「そんな……こと……、レジーナ様は女王陛下もエルーカ様もとても大切になさっております。親族では反って受け入れないと思います。」


「なら、親戚で試すしかないな。粋の良い娘の方が我は好みだ。」


「親戚ですか……ではレジーナ様には知られないように準備しなくては。デリンダ様の好みは聞いてませんので、悪しからず!」


リディアは王家の分家にあたる公爵家の家を馬車の中から偵察していた。

人の出入りが意外に多く公爵家の娘を見定められないでいた。


近所の者に聞こうかと考えたが、いなくなる娘を嗅ぎ回っていたと噂になるのは避けたかった。

偵察を始めてから3日後にセルディナ公爵をお父様と呼ぶ娘を見つけた。

公爵は目を細めかわいい娘を抱きしめ頬にキスをした。

たくさんのお土産を渡し家の中へ消えた。


その晩、公爵の娘をフードに隠し連れ帰り、レジーナの別宅の地下牢に閉じ込めた。

娘は泣き叫び疲れたのか、地下に掘り出され岩を削っただけの造りの寒々しい牢の床で、眠っていた。


そこへレジーナを連れていき格子の外からそっと声をかけた。


「マリアンヌ様、マリアンヌ様。」


「マリアンヌ?」


レジーナは聞き覚えのある名前に嫌な予感を感じた。

マリアンヌは固い床では熟睡はできなかったらしくすぐに上半身に持ち上げると鉄格子の外にいる人間を目に捕らえた。


「レジーナ様?」


やっぱりか……、レジーナは分家のマリアンヌと年が同じ事もありマナーの勉強会や乗馬で一緒に過ごしている。

マリアンヌはことある毎に可愛いげのないレジーナの裏をかき、教師やメイドからの自分の評判を上げようと画策していた。



「レジーナ様早くここからお出しください!!私は何の罪で捕らわれたのでしょうか?」


返事に困りリディアを見るがリディアはデリンダ様と話し中の様だった。


「マリアンヌすまない、しばらく我慢してくれないか?罪は……」


「私に嫉妬しているんでしょ?」


「なっ!?」


「レジーナ様の噂は公爵家にも届いております。大層お老けになられているとか。実際拝見するまで信じられなかったのですけど……、本当の様でしたわね。こうなると私の若さと美しさにご嫉妬なさるのも仕方のないことかと……。」


レジーナは唇の噛みしめた。


「お可哀想ですが嫉妬なされても若さは取り戻せませんわ。私にはそのような力はございません。さあ早く家へ戻して下さい。この事は他言いたしませんので。」


「リディア……、この者は私を若返らせる力はないのか?」


いままで二人のやり取りを黙って見守っていたリディアだったが、この質問にニヤリと笑みを浮かべる。


「いいえ、この者はレジーナ様の糧となり力をお与えになられる稀少な人材でございます。」


「そういう事だ。マリアンヌ!私の力となれ!!」


リディアの手から白い男の煙が現れマリアンヌを犯した。

マリアンヌの脱け殻を残しデリンダ様はレジーナの口の方へ中身を吹き掛け、レジーナは深呼吸するようにマリアンヌを吸い込んだ。


以前とは格段に違うあまりにも激しいエネルギーにレジーナは身を任せた。

体が宙に浮き上がり魔力が一気に溢れ出す。


「あはははははは!すごいパワーだ!許すマリアンヌ!お前の暴言も今までの悪意もな!お前の全てを受け入れよう!」


リディアは脱け殻に魔法で火を放つと燃やした。

その時青白いマリアンヌの苦しそうな顔の炎がレジーナに襲いかかろうとしたが力及ばず天へ引っ張られて行った。


「おぞましいものよ、死してまだ憎しみを露にするとは。」


「死したからこそですよ、レジーナ様。あの凄まじい憎しみは私が死した後に全てお引き受けいたしますゆえ、ご心配なく。」


「リディア。お前はなぜそこまで?」


「レジーナ様は私の全てでございます。誰にもあなた様を殺させない。あなた様はこの世のものとは思えないほど美しい赤子でございました。赤子のあなた様から頂いた数々の思い出だけではあなた様をお守りする理由にはなりませんか?」


レジーナは鼻の奥がツンとした。自分の命よりも私を大切に思ってくれている者がいる。ありがたかった。


前回とは違い体の拒否反応もなく若い体のままだった。

安心してベールを外すと久々に明るい内に庭へ出たのであった。


数日間魔法はなるべく使わず様子を見る、若さが奪われることはなかった。


「明日は女王の誕生日だ。お祝いに行かなければな。」


「でしたらこちらのドレスをお召しになられてはいかがでしょうか?」


胸元と背中がざっくりと開き、腰には真珠が縫い付けられたとても美しい透き通るような紫色のタイトなドレスだった。

レジーナは一目見て気に入ったが、少し前まで中年の体型だった事もあり着る勇気が出なかった。


リディアに急かされて鏡の前でドレスに着替え感想を待った。


「とてもお似合いでございます、美の女神も嫉妬してしまうほどに。」


「言い過ぎだ……。」


照れを隠しながら否定した。


若さを保てている。親族だったからか、レジーナ様が望み受け入れられたからかは分からない。調べる必要がある。

次の贄は親族ではない者にしよう。



翌日は朝から王宮は大忙しだった。女王の誕生日の準備に追われていた。

レジーナは女王の部屋へ行くと緊張した面持ちでドアをノックした。

中からお婆様の声がした。


中へ入ることを許され女王の前へそわそわした気持ちで立つ。


「レジーナ、顔色が随分よくなったわね、別邸の住み心地が良い様ですね。」


「はい。お陰さまで養生させていただいております、ありがとうございます。それから、お誕生日おめでとうございます。」


女王は少し前まで疲れきって痩せ細ったレジーナを心配していたが一時の療養で若返った様に見えるくらい回復しているのを見て心の底から安堵した。


それと同時になぜここまで短期間で回復したのか思案もしていた。黒魔術の使い手によくある事なのだが、尊い命を犠牲にして若さや力を手に入れ、その高すぎる代償を支払わされ闇に落ちて行く。哀れなことだ。


「あの子は大丈夫だとは思うが……。」


レジーナが退席した後に女王はそっと呟いた。






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