あるメイド3
デリンダ様はリディアの体内を堪能していた。
リディアはいきなり両手を上げたり、ベーっと舌を出したりと、奇妙な行動を止められず困っていた。
「デリンダ様、子供じゃないのですからいい加減にしょーもないイタズラは止めてくださいませんか?」
「少し位構わんだろう。他にすることもないのでな。」
「暇潰しですか……?全く仕方のない神様ですね。そう言えば、赤いレアーナカエルっていますか?」
「赤いレアーナカエル……なぜそのような事を聞く?」
「お母様の時代にその赤いカエルが目撃され王族が被害に合っているようなのです。禍々しいものを感じます。ご存じないでしょうか?」
「知っておる。」
「やっばり……。さすがデリンダ様!で、今から会えますか?」
「会うだと?!バカを申せ。あんなものと対峙してただで済むと思うなよ?あれは神殺しの使いだ。」
「かっ、神ごろ……し……?人を食らい魔力を吸い取り悪しき力で神を冒涜し殺す。」
「神様も死んでしまうのですね。デリンダ様のお力を持ってしても神の敵を倒せないのですか?」
「天敵……とでも言っておこう。とにかくそれに会うのはご遠慮させてもらうぞ。」
リディアは椅子に座っていたが体が勝手に動き寝室のベッドへ寝させられてしまった。体は金縛りに合った様に動かない。
「寝させなくてもいいじゃないですか?分かりましたよ、それに会うのは止めときますから少し引っ込んでて下さい。人を食らい魔力を吸い取るって、メイドが二人いなくなったのはそれに食われたってことなのよね?私にもできるかしら?……その、人の魔力を吸い取るとか……。」
「お前……。」
「私は本気ですよ、デリンダ様?もう時間の猶予がありません。やり方をお教え下さい。」
「ただの人ごときがそんなことをしたらどうなるか分かっているのか?死後も犯した罪に身を焼かれ絶望的な苦しみを受け続けることになるぞ!愚かなことを考えるのは止めろ。」
「ただの人ごときの場合でしょ?私は神を宿している。デリンダ様は私と一緒に焼かれてくださるんでしょ?」
「図りよったな。我と契約したのはその為か。ははははは、本当に面白い!そろそろ我の人生にも飽きていた所だ、地獄の煉極の炎を纏うのも悪くないな。」
リディアはホッとした顔をしながら盛大に爆笑していた。
「ふむ、魔力の枯渇か?お前の魔力は人にしては大きいと思うぞ。60才にもなってさらなる力を欲するとは何の野望がある?魔力が欲しいのならば我の力を使えばよかろう。」
「……。」
「レジーナにか?」
「もう!さっきから勝手に心を読むのは止めてください!」
「自然に聞こえるものは仕方があるまい。」
「…………。
デリンダ様、早速試してみたいのですが、よろしいですか?」
「……、王宮からメイドを拐って来い、王宮内は神の加護下にあるからそこで生活しているだけでただの人よりは魔力を帯びている。」
リディアは夜になってから黒いフードを深くかぶり薄暗い月明かりの道をスーッと浮遊しながら王宮へ進んだ。
デリンダ様の力で歩かなくても浮かんで進めるようになっていて驚いた。
頭の中でコンタクトを取るとデリンダ様はお行儀よくそれに従った。
門番を前にフードを取るとデリンダ様の真っ赤な目が彼らを眠らせた。手は勝手に動き鍵を開け中へ入った。
月明かりはいよいよ暗くなりリディアを闇へ隠した。デリンダ様は月明かりまで操作できるのではないかとリディアは思った。
「それは無理だ。」
「ふふふ、そうなんですね。」
慣れ親しみ勝手知ったる城内を迷うことなく進み、あるメイドの部屋の前で立ち止まるとドアを開け中へ入る。
いきなりドアが開き黒いフードの人間が中へズンズン入って来たので中の住人は固まっていたが、元来気の強い性分からかテーブルの上のティーカップを投げつけた。
が、ティーカップは訪問者の顔の目の前で止まりプカプカ浮かんでいた。
「なっ、なんなの?あんた!勝手に入って来てんじゃないわよ!さっさと出ていかないと衛兵を呼ぶわよ!!このくそったれが!!」
「口の聞き方がなってないな。」
デリンダ様はそう言うとプカプカ浮かんでいるティーカップを掴むとテーブルの上に戻した。
訪問者が近付いて来たことに恐怖したメイドは窓から大声を出そうとしたが腕を引かれ腰に力強く腕を回され引き寄せられた。
身なりも汚ならしい知らない人間にいきなり抱き寄せられ嫌悪感で頭がおかしくなりそうだった、ありったけの力で抵抗したが強い力に抗えはしなかった。
デリンダ様はメイドの両手の自由を自らの手で奪うと、大きく口を開けメイドの口をすっぽり覆った。メイドは突然のキスに驚き目を大きく見開いた。
息は荒くなり顔は火照ってくる。嫌だ、止めて、誰か…助けて!!覆われた口からモゴモゴとメイドの叫びが漏れだす。
口を離すと訪問者は複雑そうな、嬉しそうな表情を浮かべていた。
「全く!なんで私が若い女とキスをしなければならないのですか?!あぁ、嫌だ!デリンダ様も所詮は男だったんですね。」
「当たり前だ。ずっと寝ていたんだ、この娘はなかなか美人だな。はらませたいな。」
「なんてことを言うのですか!そんなことしようとしたら死にますよ!」
「大切な王女を置いてか?」
「……。」
「ふん、冗談だ、怒るな。」
メイドは目の前の人間がひとり芝居をしているのを恐怖に怯えながら見つめていた。
「なんなのこいつ?頭がイカれてるわ。今の事は忘れてあげる、誰にも報告しないでおいてあげるから今すぐここから出ていきなさい!」
デリンダ様は冷たい視線をメイドに送ると、
「美人だが性根が悪いな、我に命令しておるぞ?こやつなら心も痛まぬな、リディアなかなか良い選択だ。」
「えっ?リディア?リディア様?」
メイドが訪問者の正体を見定めようとフードを剥ぐとレジーナの乳母のリディアがいた。
「リディア様……消息不明だと伺ってましたが、まさかご病気でしたのね。さぁ、医務室に参りましょう、私が付き添います。レジーナ様もお呼びいたします。」
「お前の魂胆はお見通しだぞ。気違いだと城中に触れ回る気だろ?」
デリンダ様はメイドに歩み寄るとフードを頭からすっぽり被せた。
フードの中に入ったメイドの姿は消えてなくなっていた。
誰かー!助けてー!
「そろそろ参るか?本当に良いのだな?後には引き返せぬぞ?」
「デリンダ様、もしかして躊躇してます?一緒に地獄へハネムーンに行きましょうね。」
「わっはっはっ、ハネムーンかっ!地獄の炎から我がお前を守ってやるぞ!」
デリンダ様を召喚した部屋に前とは違う魔方陣が書かれていてその上に粗末な木の椅子が置いてありそこにメイドは裸で縛られて座らされていた。
「あんた!こんなことをしてただで済むと思うなよ?!私には公爵家の実家と婚約者がいるんだからね!町には私を慕う柄の悪い連中もいる!あの暴君、老いぼれレジーナのたかだか乳母だからって容赦しないか……。」
ドゴーン!
大きな音と「ぎゃっ!」と言う女の声が同時に響いた。
「暴君?老いぼれレジーナだと?」
スーッと音をたてずにまるで浮いているように近づいてくる姿は恐怖でしかなかった。
「あっ、あっ」
鼻から血を出し倒れた椅子に縛られて身動きが取れずメイドは恐怖でガタガタと震えた。
「今のはじょっ、冗談です。すみません、すみません、すみません。あっ、あの!本当にすみません。」
ただ転んだ椅子を戻すかのようにメイドの髪を掴むと思いっきり引っ張り起こした。
メイドは悲鳴をあげたがリディアは耳に入らない。
「お前、さっき何と言った?もう一度言ってみろ?」
ガタガタと震える椅子の音しかしない。
「もう一度言ってみろ?」
「リディア、震えるだけでも人は体力を消耗する、この娘にはこれから我等の力となるのだからその辺にしておけ。」
「デリンダ様……、悔しいんです。こんな奴にまでレジーナ様は……。」
「ならば早く進めるぞ、おまえの心もこの後の娘に起こる惨劇を見れば救われるだろう。」
リディアはその言葉を目を閉じながら反芻し、深呼吸をしてメイドを睨み付けた。
「さぁ、私の物におなりなさい。」
「ギャーーーーァァァァ!!!」




