File.10
「式部君、先生の話しを聞いているの!?授業もちゃんと受けないで、誰とお話ししているの!」
この先生は、今年この高校に来た新人の英語教師で、見た目も派手な美人さんだ。
当然の如く、男子生徒にもてはやされ、男子のマドンナ的教師とされている。
それなのに、平凡な俺が誰(浮遊霊)かと話しているのが許せないらしく、鼻息を荒くして怒っている。
それでも、怒った顔も美人なため、男子生徒は鼻を伸ばしたままだ。
一部他の生徒からは「先生、アイツとかかわっちゃダメだよ」と、忠告する声が小声で飛び交う。
失礼な!俺はクラスメイト達に疫病か何かと思われているのだろうか?
「すみません。少しお腹がすいていて、授業に集中していませんでした」
とりあえず、無難に謝り授業を始めてもらおう。
これ以上出席日数を減らされたらたまったもんじゃない。
ここは穏便に…などとおもっているが、そうは問屋が卸さないみたいで、先生の怒りの表情のまま俺の席に近付いてきて。
「それでは、佐藤君の続きの英文を式部君に読んでもらおうかしら?」
と、とんでもない無茶振りをしてくれる。
「えっ!?」
もちろん、俺は授業を聞いているはずはなく、『佐藤』って、誰だよって、見回してみるが、クラスメイトの顔など覚えていない俺としては、無駄な行為であって…。
俺があわてて教科書のページを捲り始めると、先生はニヤリと笑う。
「どこからかもわからないようようじゃ、今日の放課後は補習ね」
とても嬉しいお言葉を先生から投げかけられた。
周りの男子生徒からは「いいなー、俺も」など声が上がるが、俺はそれどころではない!
英語なんてさっぱりわからないのに、補習など受けていられるかー!!




