第3話 勇気と敬意と覚悟の幽霊退治編
『~ひゅー、どろどろどろ。
お分かりいただけるだろうか?
楽しそうにはしゃぐ若者数人の肩の間に恨めしそうな女性の顔が…!』
「ひッ……!」
『これは若くして亡くなった女性が、若者たちを妬んで出現した、
怨念…とでも、言うのだろうか…!?』
「ひいいい…!!」
季節外れの恐怖番組を見て怯える女性。
意外かもしれないが、それは源次美樹子その人だった。
「画面越しの心霊写真でどうしてそこまで怖がれるのよ、あんた」
半ばあきれたように溜息をついているのが半井杏。
彼女は案外肝っ玉がすわっているのかもしれない。
「じょ、冗談じゃないぞ、杏」
「何よ、怖がらせたのはオバケであって私じゃあないわ」
「『ニュース番組よりまし』って言っておいて、これじゃニュースを淡々と見た方がマシじゃないか!」
「私ァ、昔ッからあんたの怖がるツボってヤツが分かんないわ…」
「オバケと虫は無理だと前から言ってる筈だが」
「だってまさか番組ごときでそこまで怖がるなんて…」
『こ、この映像の27秒あたりの所に…!ああ、窓に!窓に!!』
「ひッ…いい!?」
杏は、『出演者の中のブリッ子のために怖がってるアイドルと大差ないリアクションだ』と思った。
しかしその違いは、アイドルグループの女性は芝居で震えて、美樹子は本気で震えているという事。
プルルルルル、プルルルルル
と、ここで電話の音が鳴った。
「ひいいいいいい!?」
「落ち着きなさい!電話でしょうが!」
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第3話 幽霊騒動編
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依頼者は、 佐倉 加南子。
24歳で、最近はテレビなどで所謂『霊能者』としてそこそこの人気を博している。
「それでその、霊能者さんがうちの事務所に依頼とは何かね」
「…はい、実は、ある場所の除霊をお願いしたく…」
「すまないが、ウチではそういった関係のはお断りだ。申し訳ないが――」
杏が美樹子の背中を中指の第二関節で強く押した。
美樹子は顔をしかめた。
「どうしてウチの事務所にそういった依頼を?」
杏が慎重に尋ねる。
「ええ、っと、美樹子さんは、源次 純子さんの娘さん…?ですよね?」
「………」
「あら?源次のお母さんのお知り合いですか?」
「はい、私が霊能者になれたのも純子さんの教えのお陰でして」
「悪いが、お引き取り願いたい」
「は……?」
「申し訳ない、あなたに個人的な恨みは無いが、母と同じ商売をしてる人間に手を貸す気はないよ」
「ちょ、ちょっと源次、どういう――」
「き、気に障るような事を言ったなら、申し訳ありませんでした。日を改めますね」
加南子は戸惑った表情で事務所を後にした。
扉が閉まる。
「で、どういうコトよ、美樹子」
「どうもこうも無いよ、深い意味もないし、先刻言ったままだ」
「あんたの家のコトは詳しく知らない、私らが知り合った時点であんた家出少女だったし。
でも依頼人を蹴るほど――」
「すまん、考える時間をくれ」
言って、美樹子は寝室へ入って行ってしまった。
「…何よ、何なの…?」
寂しさを感じさせる静けさが、応接室に漂った。




