連合警備隊冒険者管理局遺品回収課~もしも、主人公、ラインヴァルトが別世界に飛ばされたらどうなるか?~
ポートリシャス大陸西部自由都市サラムコビナ連合警備隊冒険者管理局支部所属長距離偵察及び遺品回収任務部隊「フォークウィンド」は、「最高危険遺跡区域」の南地域で冒険者パーティーの遺品回収作業に当たっていた。
その広大な地域の大半は、高温多湿の険しい山岳地形の密林で覆われおり、整備された道路はもちろんなく、ぬかるんだ地面の移動をしなくてはならない。
主な特徴としては生息する魔物や未遭遇の魔物の多様さが挙げられ、複雑な生態系を形成している。
また、その地域の独特な気候は冒険者パーティや冒険者管理局遺品回収課の職員の士気を大きく削ぎ、地域の環境に慣れていない冒険者パーティや冒険者管理局遺品回収課の職員にとって地域の気候による熱帯雨林特有の病気、害虫やぬかるんだ地面の移動、高温多湿による熱中症などさまざまな障害はストレッサーとなる。
強度の戦闘によっては、戦闘ストレス反応の原因となる危険性があり、士気や団結の低下、規律の弱化などになる。
それは、例え一定の経験を積んだ強者でも例外はない。
そのさらに先を進んだ南には、古代の岩石で出来ている
平らで広大な地域の河川網があり原野の風景の中で、
銀河系のように輝きながら点在する、幾つかの湖に流れ込んでいる。
せわしなく流れる幅広い川、流れの早い小川、それらは、
常緑樹と広葉樹が密生する森の間を抜け、古代時代からある丸くなった丘や、ごつごつした絶壁から滝の様に流れ落ちている。
その下にあるのは、氷河時代の氷河が後退したことによって浸食され、表面が滑らかになった岩が散乱する、険しい渓谷や凸凹に富んだ谷だ。
考えられないほど荒涼として到達不可能に近い地域の中心付近には、樹木が密生した丘陵地域の間に、ほとんど周囲と区別のつかない、名もない湖が幾つも存在している。
整備された道路がなく、鹿や大鹿が通って出来た迷路の様な小道しかない森林地域を「フォークウィンド」ティーム四名が慎重に移動している。
踏み固められて細長いくぼみのようになり、部分的に落ち葉で覆われて、あらゆる方向から森林地域を抜け、下生えをかき分けて湖岸までの一番通りやすい道筋を辿っている。
四人中三名は、冒険者管理局が支給している黒のボディーアーマーを着用している。
頭部、顔面、頸部を保護するためか目出し帽とフリッツヘルメットを被っている。
ヘルメットには、マイクとヘッドホンが内臓され、ボディーアーマーの上には、アサルトベストを着用している。
ベストには予備用の弾薬、携帯用回復薬用のポーチなどが付いている。
それらには、全て特殊補助魔術が施されており、拳銃弾や散弾、砲弾の破片、刃物や徹甲弾、魔物が秘める多様な特殊能力に対応している。
ボディ・アーマーの素材も、この世界でしか存在しない
繊維でできており、希少価値のオリハルコン、鋼をしのぐ強さを持つ金属のミスリル、非常に高い硬度を持った伝説級の金属鉱石アダマンタイトの数百倍の強度持つ。
ただ、水分に弱い欠点を持ってはいるのだが、それを特殊補助魔術を施し、水分に対するダメージすらも無くしている。
ただその分、かなり高価なのだが・・・・。
その四人の中で1人だけ違う服装をしているのがいる。
姿からして女性だ。
一般の女性よりすば抜けて長身で、紅蓮色の長髪を一つに束ねている。
三人とは違い貌を隠さずに素顔を曝け出している。
鼻筋が通り、切れ長な目元という繊細な顔立なのだが、
その左半分は、眼から頬にかけて無惨に引き攣らせた火傷痕を負っている。
左半分の火傷痕からは、恐らく輪際いかなる喜怒哀楽も示す事はないだろう。
淡いアメジスト色の瞳からは、恐怖、不安、野心の微塵も窺えない。眼窩の底で光る眼は油断という言葉とはまったく無縁のもので、むしろそこに潜む冷徹な陰を隠すのに苦労しそうなほど鋭い。
その女性は、ポートリシャス大陸北方フライバルト王国が特殊戦闘部隊にだけ特別支給されている、将校用の野戦服を纏っている。
それも、高度な繊維・染織技術で製造され、さらに特殊高度補助魔術を施された野戦迷彩服だ。
両手には、五芒星の魔法陣が書かれた白い手袋をつけている。
紐も上まで締めており、今の所どういうわけか、汚れてはおらず艶がある。
その女性の名は、クラウディア・ウォーレン。
四人に共通しているのは、左肩に、縫製ラインから1センチほど下に所属する部隊章らしきものをつけている。
その丸い円の中には羽を広げて、空を飛んでいる鷹の絵柄があり、上部には絵柄を丸く囲むように「サラムコビナ支部冒険者管理局遺品回収課」書かれている。
また、四人が手に持っている銃器はこの世界で流通している銃器とは異質な物である。
見た目は普通の流通している銃器とさほど変わらないのだが――――。
三人が所持している銃器は、バスチアラングル大陸オリスタノ共和国が
密林での行軍や交戦用に開発し、共和国に採用し配備されている全長 999mm 、重量 3,500g 、箱形弾倉装弾数30発の自動小銃だ。
女性が所持しているのは、銃身長 125mm 、装弾数 8発のフライバルト王国武装親衛隊に制式採用されている軍用自動式拳銃を手にしている。
しかも、銃身を短くし照星をスライド先端に移設した武装親衛隊モデルだ。
これらが一体何が違うのかと簡単に表せば――――性能が違うとだけだ
「(「ルビーウォーロック」監視所より、「フォークウィンド」へ)」
内臓されヘッドホンから声が聞こえてきたが、若干雑音が混じっている。
先頭にいた1人が手を上げると、後方にいた三人が停止した。
「こちら、「フォークウィンド」」
短く返答しながら、周囲を警戒する。
返答した彼の名前は、ラインヴァルト・カイナード
「(・・・・至急に、そちらの「ゲートキーパー」に転送した座標位置へと移動されたし)」
それと同時に、黒のボディーアーマーを着用している中で、かなり長身の者が特殊魔道携帯端末機「ゲートキーパー」を取り出しながら近づいてくる。
長身の者の名は、ベルナルド・ライアンズ。
その代物は、通常の音声通話や遺跡や迷宮内部での通信機能、また戦場地域などで使用可能な通信機能だけでなく遺跡や迷宮内部に刻まれている古代文字を本格的に解読出来き、魔物識別情報の
管理などの多種多様な機能を持つ「連合警備隊冒険者管理局遺品回収課」職員限定に手渡されている魔道携帯端末機だ。
特に今使っているのは、自由にカスタマイズ出来るようになっている高機能な「ゲートキーパー」で、タッチパネルとキーボードなど多様な入力方法がある。
長身の男は手慣れた手付きで操作を続け、「最高危険遺跡区域」の地勢図を画面上に出す。
確かに、そこには目的地の座標位置が表示されている。
「「ルビーウォーロック」監視所へ、確認したが・・・
その場所で何がある?、どうぞ」
「(その座標地域にて、高度魔力測定値が観測した。
違法魔術実験の可能性があるため、調査に向かってほしい・・・どうぞ)」
ラインヴァルトは、地勢図の画面上を凝視して低い唸り声を上げる。
その場所は、5,000メートルから6,000メートル級の高山が連なり、熱帯にありながら万年雪を頂いており、そこまでの移動するルートもほとんど熱帯降雨林と湿地帯によって占められている。
もちろん、過酷な環境に順応した未知の魔物も棲息している。
転送されてきた場所は、熱帯降雨林と湿地帯地域の様だ。
「「フォークウィンド」了解した。これより調査に向かう」
ラインヴァルトは、通信を終えると深い溜息を吐く。
「本当に何があるんでしょうね、そんな場所で」
黒のボディーアーマーを着用している中で、平均身長の者が尋ねてきた。
平均身長の者の名は、トール・クルーガ。
「何処かの国に、所属している完全武装の一個大隊かいるのかもしれないな」
ベルナルドが掠れた声で言う。
周囲を警戒しているクラウディアは、その会話には加わる事はない。
「わからねえよ、そんなことは」
ラインヴァルトそう告げると先頭に立ち、四人は目的地域へと向かう。
四人は、長年(?)にわたる戦闘から学んだ教訓を本能的に適用し、動物が使用する小道沿いを慎重に、そして警戒しながら進み、森の中からでない様に進んでいく。
休まずに数時間歩き続けていたが、不思議と魔物とは遭遇はしなかった。
「(気のせいか?、魔物の遭遇率が低いぞ)」
ラインヴァルトは、疑問に思った。
恐らく、他の三人も同じ事を思っている事だろう。
目的地域に近づくにつれ、魔物らしき気配が激減してくるのを感じた。
もう一つは霧が覆いはじめてきた。
「気のせいか?、進めは進むほど、霧が濃くなってきてないか」
ラインヴァルトが言う。
「ふむ、たしかにその様だが・・・」
掠れた声でベルナルドが応える。
「そのうち、晴れますよ」
トールが、呑気な声で応える。
「その呑気さは、何処からでるの?」
クラウディアが、初めて言葉を発する。
幾らか進まないうちに、視界不能なほどの深い霧が付近を覆い隠していく。
「通信を怠るなよ」
ラインヴァルトが、携帯無線機を使いながら不機嫌な声で告げる。
「(了解した)」
最初に短く返答してきたのは、掠れた声のベルナルドだ。
「(了解、迷子にならないでくださいよ)」
続いて、おどけた声で返答してきたのはトールだ。
「(了解、そっちこそ怠るな、色男)」
最後は、余計な事まで追加したクラウディアだ。
そして、どの通信もいつも以上に雑音が混じっており、聞こえづらい。
しばらく、進んでいくとようやく霧がゆっくりと晴れだしてきた。
「ようやく霧が晴れてきたな・・・異常はないか?」
携帯無線機を使い呼びかけるが、雑音しか聞こえてこない。
「応答しろ、異常はないか?」
ラインヴァルトは、もう一度呼びかけたが・・・応答の気配はない。
何時もと通りなら、一度で返答が返ってくるのだが、今回は返ってこない。
「ベルナルド、トール、クラウディア、応答しろ。ふざけているのか?」
少し苛ついた口調で呼びかけるが、まったく応答がない。
三度目の呼びかけをしようとした時、辺りを厚く覆い隠していた霧が消えた。
ラインヴァルトは、ゆっくりと辺りを見渡すと三人の姿が何処にも見当らない。
そして、もう一つ何か違和感を感じる。
周りの景色が、先ほどまでいた森林とは違う様な感じがした。
森林は森林なのだが――――――、
ラインヴァルトは、もう一度辺りをゆっくりと見渡す。
人の手がまったく入ってはいない事は同じ様だが・・・・。
「ベルナルド、トール、クラウディア、現在位置を報告しろ。繰り替えす。現在位置を報告しろっ」
携帯無線機からは、やはり返答は返ってこない。
ラインヴァルトは、急いで魔道携帯端末機「ゲートキーパー」を取り出して、慣れない手つきで操作をする。
画面上に、現在地を出して調べようとしたが、エラーメッセージが表示される。
「んな、馬鹿なっ!?」
ラインヴァルトは、罵りながらもう一度画面上に現在地を出そうとするが、全てエラーメッセージが表示される。
「 「フォークウィンド」から、「ルビーウォーロック」監視所へ!!
至急応答されたしっ!!、繰り返す、至急応答されたしっ!!」
携帯無線機を使い、「ルビーウォーロック」監視所へと通信したが、こちらも応答がなく、雑音だけが
聞こえてくる。
「どうなっているんだよ、これは・・・」
低く呻く。
「糞、三人もいねぇし・・・本当に一体何がどうなってるんだ?!」
エラーメッセージが表示されている魔道携帯端末機「ゲートキーパー」の画面を見ながら罵りながらも、全神経を周囲に張り巡らせる。
数十分、「ゲートキーパー」を操作をしていたが、どうにもエラーメッセージしか表示されないため、とりあえずラインヴァルトは付近を警戒しながら、元来た方向に向かって進み始める。
「(状況が分からないぞ。一旦元来た方向に戻る方がいいかもしれない)」
元来た方向へと進み始めながらも、数分間隔で国際緊急周波数と迷宮・遺跡特殊緊急周波数に合わせて、通信を繰り返すがいずれも沈黙と雑音しか返ってこなかった。
無線の沈黙は、これが容易な状況ではないことを物語っていた。
地面をえぐる小川を飛び越え、ツタがからまる木の根を乗り越えながらだが――――、先ほどの地形がまったく違う事にラインヴァルトは疑問に思った。
「(こんな所に小川などあったか?)」
元来た場所へと向かうに連れて、木々は疎らになっていくに連れて、
焼けた鉄と生々しい血が混じった臭い、そして悲鳴と怒声が聞こえてきた。
「(なんだ?、何処かの冒険者パーティが魔物の餌食にでもなったのか?)」
それにしては、悲鳴と怒声が多い様な気もしたし、幾ら新人の冒険者
でも悲鳴はあまり上げないため、不思議に思った。
若干早足になりながら臭いが漂ってきている場所へと向かう。
そして木々の間から抜けると――――――その光景に息を呑んだ。
「おいおい・・・・なんでこんな所に村があるんだ?・・・」
目に飛び込んできた光景は――――集落・・・つまり、村があった。
だが、その村は何者かの集団に襲われていた。
村を襲っているのは、レンガ色の肌をして、赤い眼の醜悪な風貌、ドワーフと同じ背丈の獣人――――ゴブリンの集団に襲われていた。
ラインヴァルトは驚愕のあまり呻き声を上げる。
「ちょっと待ってくれよ・・・・なんでゴブリンが集落を襲っているんだ!?」
ラインヴァルトが驚愕するのも無理がない。
ゴブリンは、非常に太陽の光を嫌い、滅多に地上に出る事はないため、
村や街などを襲撃した様な話は聞いたことはない。
ほとんど、昏い地下迷宮に挑む哀れで鈍くさい冒険者パーティを餌食にしている様な魔物だ。
村や街などを襲撃したゴブリンの話は、ほとんどが古代冒険者時代の伝承ぐらいだ。
連合警備隊冒険者管理局が創設させてからも、そんな話は聞いたこともない。
魔物などが棲息する地下迷宮や古代遺跡周辺地域などには、連合警備隊冒険者管理局が四方八方に超高度特殊魔術結界を張り巡らし、また出入り口
付近には、冒険者管理局監視施設が置かれている。
容易には結界の外には出れない仕組みなのだ。
また、人口五十万以上の都市は、特殊魔術結界を施す事が義務つけられているのだが――――それでも、村が魔物に襲撃される事自体が有り得えない。
「糞っ、ここの地域の管理局の責任者は誰だ!?、責任問題だぞっ!?」
罵りながら、無意識のうちに携帯無線機を使う。
「 緊急連絡っ、緊急連絡、こちら「フォークウィンド」、ゴブリンらしき獣人が集落を襲撃中っ、
繰り返すっ、ゴブリンらしき獣人が集落を襲撃中っ、応答されたしっ!!」
しかし、返答は返ってこなかった。
ラインヴァルトは、罵りながら自動小銃の安全装置を外すと、飛び出していく。
飛び出した先では、人間の村人がゴブリン相手に桑で応戦していた。
だが、その応戦も空しく、ゴブリンが持っていた槍で刺し貫かれ地面に倒れる。
ゴブリンは、ラインヴァルトの気配を感じて振り返って奇声を上げる。
新しい獲物を見つけた様に、そのゴブリンは醜悪な貌に笑みを浮かべた。
ラインヴァルトは、槍を構えて襲ってくる前に自動小銃を標的に向けて引き金を絞る。
装弾数30発以上を撃ち込むが、その自動小銃の銃身は熱くならず空薬莢も飛び出ない。
何か根本的におかしいとは思うのは、気のせいだろうか・・・?。
30発以上を撃ちまれたゴブリンは、襤褸切れの様に転がる。
息絶えた事を確認しながら、槍で刺し貫かれ、血の海に沈んでいる村人に近寄る。
「た・・・す・・・け・・・・・て・・・」
村人は、囁く様に呟くと、激しく咳き込みはじめ、血の固まりを喉につまらせて痙攣し、息絶える。
ラインヴァルトは、無言で頷くと同時に、四匹ほどのゴブリン奇声を上げて、走り寄ってくる姿が見えた。
自動小銃の照準を四匹のゴブリンに向けて、引き金を絞る。
それから幾ら時間が立ったのだろうか―――――
村の中で転がっているのは、村人の達の骸だけではなかった。
40匹ほどの醜悪なゴブリンの死骸も、そこかしこに倒れている。
全て銃弾によって撃ち殺されているのが見てわかるが、薬莢は何処にも落ちてはいない。
近くのそばで火の粉を噴き上げて剥がれ落ちながら家が燃えている。
地面には、広がっていく鮮血の海だ。
ラインヴァルトは、たった一人で40匹もいたゴブリンを一匹残らず殲滅したのだ。
今現在、村の生存者を探しているのたが、誰一人として生きている村人の姿はなく、特に女性はゴブリンによって凌辱されたらしく痛ましい死骸だ。
「生存者はなしか・・・・」
目出し帽を脱ぎ、素顔を曝け出しながら呟く。
その素顔は、精悍な風貌で、二重瞼の眼の瞳は、青銅色。
右頬には戦場で負ったのだろうか、耳から顎にかけて細長い刀剣傷があった。
精悍な風貌は、何処かやるせない表情と違和感を感じている表情だ。
生存者を探して、村人の死骸を発見するたびに違和感を感じた。
どういうわけか、人間の死骸しか見つからない。
街や村には、人間の他に、普通にドワーフ、ノーム、ホビット、エルフ、フェルパー、ラウルフ、幾多の混血種族がそれなりに生活しているはずなのだが、生活していたと思われる痕跡がまったくない。
どういうわけか、この村には人間しかいない。
ラインヴァルトにとっては、とても奇異にしか映らないのだ。
身近に亜人種族が生活している風景で育ったラインヴァルトにとっては、不思議でならない。
いや、それは、この場にはいないベルナルド、トール、クラウディア、エレーナでもそうだろう。
亜人種族が存在しない環境など、考えられない事だ。
「もし、人間だけの村とすると・・・どんだけ閉鎖的な村だよ」
そう呟く。
もう一つ、疑問に思ったのは、村の全ての家に電話機がまったく存在していなかった。
家の中は、あきらかに吟遊詩人が酒場で語る冒険譚や、中高生が好んで読んでいる英雄小説などに出てくる様な内装だった。
「電話機が一つもないって・・・・外部と連絡は取ってないのか?」
無線がどういうわけか通じないので、電話を拝借して連合警備隊か冒険者管理局へと連絡を入れようとしたのが、その電話が存在していなかった。
最後に、村長の家らしき大きな家の中に入り一つ一つ部屋を確認し生存者を探すが、生存している村人は誰もいなかった。
もちろん、電話機らしき物体もなかった。
書斎らしき部屋を確認をすると、ラインヴァルトは部屋に入り地図が何かないかを探し始める。
幾つかの本を手に取って、表紙を見て貌を顰める。
「何処の国の文字だ、これ?」
表紙の字が、今まで見た事がない文字で書かれていたためだ。
本の中味もパラパラを捲ってみたが、観た事もない文字で書かれていたため、どんな内容が書かれている のかわからなかった。
どうやらこの書斎にある全ての書物は、ラインヴァルトではまったく見た事もない文字で書かれている。
「畜生っ、クラウディアかベルナルドがいたら、良かったんだが・・・」
と呟く。
あの二人なら、たいていの古代文字などなら解読できるスキルを持っているためだ。
しかし、今、この場所にいるのは、ラインヴァルト1人だけである。
ラインヴァルトは、溜息を吐きながら急いで地図がないか探す。
数分してようやく地図らしき物を見つける。
安堵した表情を浮かべ、地図を広げてみると―――――
ラインヴァルトの表情が凍りついた。
「ちょっ・・・おい・・・・」
その地図を食い入る様に見るが、その地図に載っている地形は、明らかにまったく知らない地形だった。
少なくともポートリシャス大陸西部地域の地図ではない。
ならば、他の7大陸―――――
「トリールハイト大陸」、「アディガリア大陸」、「タイノブラウ大陸」、「バスチアラングル大陸」 「ロアールフリート大陸」、「ヴァリアウィング大陸」、「アルフレア大陸」の何れかの地図かと思ったが・・・。
ラインヴァルトの知っている世界地図には、どれも当てはまらなかった。
地図には、都市や村の名前は書かれてはいるのたが、その文字がラインヴァルトには読めなかった。
しかし、それでもその衝撃は計り知れない。
しばらく、その地図を眺めてわかったことは、今、現在いる村の名前らしき文字は少し大きく書いてある事だった。
つまり、現在地だけはなんとかわかったという事だ。
また、距離的にはそれほど遠くでは無なさそうなのだが、西へ向かった所にはもう一つ村、もしくは街があるようだった。
「・・・・行くしかないか」
衝撃から立ち直ったラインヴァルトは、気持ちを落ち着かせるように深呼吸をして息を吐く。
もしも、冒険者管理局職員ではなく冒険者や傭兵という立場なら、ラインヴァルトは、何の行動もせず
さっさと、この場所から立ち去った事だろう。
だが、冒険者管理局職員という立場では、それは許されない行為だ。
地図に、現在いる村の近くに街道らしきものが載っており、街道は、西にある村か街まで続いている様だった。
ラインヴァルトは、再び大きく溜息を吐くと急いで部屋から出ていく。
彼がようやく別世界へと飛ばされた事に気づくのは、その西にある集落へと辿りついてからになる。
この後、この世界でどのような冒険活劇(?)を繰り広げていくのかは―――――ご想像にお任せすることにしよう。
ノクターンに投稿している本編の番外編的な内容です。
ただ、思いつきで執筆して投稿したので、かなり雑ですが(笑)
飛ばされた世界で、彼がどのような冒険活劇をするのかは、読者様の
ご想像にお任せします。