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転生したのはバカ殿でした  作者: 戦国兄弟
~なぜか転生~
7/13

【其の七】

 なんとか俺の正室をとり戻したいな。

 

 今は毛利家にお預け状態。

 うーん、最近毛利家とは疎遠になってるんだよな。


 もともと俺は毛利一族でも、小早川家の一員でもない。

 太閤殿下が豊臣家から俺を体よく追い出した、それだけ。

 そのもらい手が小早川家だっただけ。

 

 毛利家としては、隆景の35万石余りを実質的には失ったようなものだからなぁ。

 あまりいい感情は抱いてないんだろう。


 その頃の秀秋はバカ殿として超有名だったからな。

 そんなやつに35万石も奪われる。許せないんだろう。

 

 ま、俺の知ったことじゃないけど。

 奥さんはとり戻したいし、関ヶ原に向けて味方は増やしておきたい。

 なんとか仲良くなりたいな。


 ……いや、どうしようかな。

「安芸中納言殿(毛利輝元のこと)と石田治部少殿は懇意にしておるようです」

 って誰かが言ってたな。

 それならジブショウに頼みたいんだが、それはダメ。

 家康から外出禁止令を食らってるから動けないだろうし。


 となると? だれか、だれか。

 俺と毛利家をつなぐキーマンは居ないのかよ。


 ……いないな。

 さんざん考えたあげくの結論:いない。

 

 くそ。くそ。くそぉぉぉぉぉ!

 せっかくMy奥さんと仲直りできそうなのに。

 いい人そうだったのに。

 会いたかったのに!!!


 会いたかった~。

 はじめて女の子と仲良くできそうだってのに。

 初の女性経験。

 初の奥さん。

 初の女の子との同居生活


 なんともならんとは。

 歯軋りして悔しがりたいところだが、歯は大切だからやめておこう。

 ただでさえ歯磨き粉がなくて、虫歯になりそうなんだし。

 歯が削れたりしたらたまらんからな。痛くて、痛くて。


 話がそれた。

 本当になにも手はないみたい。無念 


 映画のシナリオ・ワル貴族に連れ去られた婚約者を、イケメンな青年が取り返す、って話。

 よくあるよくある。

 で、そのイケメン青年が貴族の屋敷に乗り込んで、婚約者を助け出してハッピーエンド。

 そんなお話。(俺古いかな?)


 いや、うん。試しに言ってみたけど全然参考にならないね。

 俺が一人で毛利家に乗り込むとか無理。

 くせものめ! バサッ。んで秀秋の野望はジ・エンド。

 思いっきしバットエンド。


 姫……。てか奥さんなのに姫て呼び方はおかしいかな。

 まぁどうせ俺と同い年くらい。16,7くらいだろ。

 姫でいいや。若々しくて。


 仕方ないあきらめよう……。


 そんでもって、あきらめかけていたある日。


「金吾様、毛利家より書状が参りました」


 うっそ。グットタイミング。

 書状って、誰からだろう。輝元からかな。

 

「誰から? 輝元殿かい?」


「いえ、大友義統おおともよしむね殿からのようです」


 義統? 誰だっけ。

 んっと。えっと。

 あ、思い出した。たしか……そいつは……。


 大友義統。

 彼の親父は、キリシタンとして有名な大友宗麟。

 晩年は酒と女に溺れてしまった哀れな人。


 でも、義統が大友家の当主になったのは宗麟が堕落するより前。

 北九州を統一し、九州全域までも支配下におくか、って勢いだった頃。


 だけど、宗麟も義統もいくさは家臣まかせにしていて、龍造寺や島津に大敗。

 それでどんどん衰退し、結果として豊臣秀吉の九州征伐でなんとか助かったようなもの。

 

 でもそのときにはもうかつての栄光はなく。

 優秀な家臣団を失ってしまい。

 豊後(今の大分県らへん)のみを治める大名に成り下がった。


 それだけならまだしも、義統はさらに大友家を転落させる。


 太閤殿下の起こした朝鮮征伐では、味方を見捨てて逃亡。

 それが太閤の怒りに触れて、大友家は改易。

 豊後は没収され、義統は浪人になってしまう。

 

 そんな、俺以上のバカ殿。ダメ男。

 

 で、そんな阿呆浪人が何事?

 てかなんで毛利家から手紙だしてんの?


「義統殿は、今は毛利の下で暮らしているそうで」


 へー、そうなんだ。

 やっぱアホ。毛利にとっちゃただの厄介者。

 でも元大名だから、粗略には扱えない。

 かわいそ、輝元。


 で、それで、なんの手紙。


 ~小早川秀秋殿へ~

 

 おい、一発でなんか読む気失せたぞ。

 なんで小早川秀秋殿? 金吾中納言殿って、農民でさえいうぞ。

 官位を無視してるのはなぜ?


 しかも手紙の最後には


 ~豊後侍従義統より~


 なぜ? 自分だけしっかりですか。

 しかもちゃっかり“豊後”とか書いてあるし。

 テメーは浪人だろ。名残惜しむのもいい加減にしろや。


 ……ふぅ。落ち着け俺。ふー、はぁー。ふーはぁー。

 こんなアホンダラの手紙。読む義理はないが一応ね。目は通しておこう。



 ~小早川秀秋殿へ~


 あ、はじめまして。


 ぼくは大友義統、通称豊後侍従といいます。


 ぜひなかよくしてください。

 

 それで、今回お手紙書いたのは秀秋殿に用があったからです。


 実は今、ぼくは毛利輝元殿の所に居候させてもらっているんですが、


 そんな時、輝元殿の御家臣から、小早川家で浪人をたくさん雇っていると聞きました。


 ぼくも一介の武将としてまた働きたいと思っています。


 俸禄はそこまでたくさんでなくていいです。


 それと輝元殿が、小早川家に仕官する際に奥方を連れて行けと言っていました。


 今、そちらに向っているところです。


 この手紙をあなたが読んでいる頃、ぼくはもう着いてるかな?


 お会いできるのを楽しみにしています。


 ~豊後侍従義統より~

 

 なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!


 なにこれ? 珍百景?

 

 あ、はじめまして。ふざけんなよ。

 手紙なのに、あ、とかいらねぇ。どんだけバカなのよ。


 しかも文章が子どもっぽい。

 何歳児よ。もっと漢字使えよ。俺だって漢字くらい読めるよ。なめてんの?


 居候させてもらってます。威厳ねぇ。プライドねぇ。バカぁ。


 それでなになに?

 小早川家に仕えたいって? 武将として。いや、君はすぐにでも台所に回したい気分なんだけど。

 

 俸禄はたくさんじゃなくていい?

 採用されること前提かよ。

 こういうやつって前世でも聞いたことあるわ。


 会社の面接試験で、なぜか給料とか仕事内容とかばかりを、一方的に聞く変人。

 そういうやつに限って名門大学出身とか、あるある。

 よく知らんけど。


 ふざけたおせ。

 しかも、もう向ってます、だと?

 バカで幼稚なうえに図々しいのかよ。最悪だな。


 ん? 奥方をお連れ……。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。


 

 Yahoo! 

 ヤッホ~ヤッホ~ヤッホ~。

 やったやったやったやったやった。

 うほほほほほう!

 ははははははははははは!

 うっしうっし奥方奥方。

 よめ……よめ……。

 若妻、若妻。

 うっしやったほいほいほい!

 イヤッホ~い


 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・。


 ハアハアハアハァ……。


 妻が、戻って、クルゥゥゥゥゥゥ!

 さらに俺の頭もクルウゥゥゥゥゥ!


 さすがだ義統。

 元大名なだけある。

 武将でも台所料理長でも、なんでしてやる。


 待ってるぜ、奥方!(+余分な男一人)

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