表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したのはバカ殿でした  作者: 戦国兄弟
~なぜか転生~
5/13

【其の伍】

 慶長3年(1599)4月。

 ついに貿易船が戻って来た

 東南アジアや南方の島々との交易でかなりの利益を出したそうだ。


 なにしろライバルがいないからな。

 ヨーロッパの連中は、大航海時代で得た植民地と本国を行き来するだけで儲かる。

 わざわざ商売敵のいるところで貿易しなくても充分なわけだ。


 奴らはどん欲で、日本とも貿易をして利益を上げようとしている。

 ま、そのおかげで日本に鉄砲が入ったわけだし、俺も儲けられるんだがな。

 戻って来た金はなんと2万5千貫。


 もとが1万貫だったから、実に250%に増えたことになる。

 すごいな。

 すごすぎるな貿易の力は。


 また投資して欲しいというスペインとポルトガルの貿易商人。

 もちろん俺は投資した。その額は前回と同じく1万貫。

 笑顔で渡してやった。

 半年ごとに莫大な収入があるのに、やらないわけがない。


 せっかくなので貿易商人たちと今後の貿易について話し合った。

 結果、俺たち小早川家と、貿易商人たちは契約を結ぶことになった。

 

 

 ・小早川家は半年ごとに、貿易商人に1万貫を投資する。

(博多をつうじて投資すると、博多商人にいくらかぶん取られるので、金は直接渡すことにした)

 ・貿易商人は、半年後の帰港時に小早川家に1万5千貫を渡す。

 ・日本での大名相手の商いでは、貿易商人は小早川家を最優先に品を売ること。

 ・小早川家は、スペインとポルトガルの商館を博多に設置し、維持は小早川家がする。

 ・小早川家は、貿易商人の船と乗組員の安全を保障し、水や食料の補給を行なう。

 

 配当の部分ではずいぶんと揉めたが、まずまずの結果だろう。

 貿易商人たちにケチられて、1万貫⇒1万5千貫と、利益は5千貫になってしまった。

 だが、額を固定できたことには大きな意義がある。


 貿易が、いつもいつもうまくいくとは限らない。

 今回はたまたま大きな利益を出しただけだそうだ。

 日本周辺の海は、夏には台風の通り道になる。


 そもそもこの時代の造船技術では、絶対に沈没しない船をつくるのは不可能。

 もしかしたら、全ての船が沈没して、一文の儲けも出ないかもしれない。

 

 そんなことも考えてみれば、黙っているだけで毎年1万貫も儲けが出るのだ。

 欲張りすぎるのはよくないな。

 この辺りでよしとしよう。


 日本での商売も、小早川家を最優先にさせた。

 これで、南蛮渡来の珍しい品も、新しい技術もすぐに入ってくるはず。

 いちはやく新兵器を手に入れることができるならば、商館の維持費など安いものだ。


 貿易商人との蜜月関係を築いておけば、後々きっといいことがあるはずだ。

 天下統一後には、ヨーロッパとの関係も大切になってくるしな。

 ふっ、そんな後のことも見通せるなんて。俺天才。


 それで、手元には2万5千貫。

 博多に新しく商館を建てるから5千貫くらい減って、残りは2万貫。

 どうしようか。

 軍備を拡張するかな。


 でもなぁ。常備兵をこれ以上増やしても、兵を維持できない。

 俸禄は出さなきゃいけないし、毎日飯を食わせるのも俺の仕事。

 だいいち、小早川家の本城・名島城に収められる兵数は今が限界。


 名島城は、先代の名君・隆景様の築城した名城だが欠点もある。

 それはこの城が山城だってこと。

 そのせいで城域の拡張が出来ないし、城下町も発展させにくい。

 逆に言えば、そんな融通の利かない城だから防御力が高いって事なんだが。


 まぁ、まだ戦国時代は終わってないし、いくさに備えてこの城で我慢しよう。

 鉄砲3000丁を備えたこの城ならば、まず落ちることはないだろうからな。 

 2万貫じゃあ、新しい城なんて造れないって話でもあるが。


 軍備ではとくに不満はないな。

 兵農分離を完全に果たした上に、大規模な鉄砲隊を保持してるんだ。

 こんな軍備チート状態で、不満があるわけがない。

 内政も順調な様子だ。


 内政はほぼ全てを稲葉内匠頭正成という家老に任せてある。

 内匠頭と書いて「たくみのかみ」と読むそうだ。

 俺には、ないしょあたま、としか読めんぞ。

 名前の読み方を知って以来、その家老のことを俺は「たくみ」と呼んでいる。

 なかなか親しみやすい名前であろう?

 

 本人は、稲葉とか正成とかって呼んで欲しいみたいだが却下。

 イナバ・マサナリ、よりはたくみの方が現代にいそうだしね。

 たくみという名前の通り、彼は他の家臣に比べてずっと若い。


 年の差を無視して家老になっているということは、そのぶん実力もあるということ。

 いつも期待以上の結果を出している彼を見込んで、内政はたくみに委任してある。

 委任という名の放り投げでもあるんだが。


 そんなわけで、内政も軍備もよし。

 

 ……これじゃ2万貫も貯金するしかないじゃないか。


 いやだ。それはいやだ。

 せっかく金持ちになったんならさっさと使いたい。

 このご時世、貯金しておいてもなんの意味もない。

 

 先代は5万貫も遺産を残して逝ったが、俺の場合は違う。

 俺はまだまだ若いし、天下は俺の代でとるつもり。


 次世代の若者にはびた一文残す気もない。

 金が余っている。なら自分のために使おう。

 俺のアイデアで手に入れた2万貫。俺のために使わなくては。

 なにかないかなにかないか。きっとある。

 俺は欲求不満ゼロみたいな変態じゃないんだぞ。


 うーん。言ってはみたが、実はとくに欲求はないんだよな。

 布団はふかふかだし、部屋は大きいし、飯はうまいし。


 ん? いや待て待て。

 そうだ。そうだった。

 やることが、やるべきことが一つあった。

 

 俺は忘れていたんだ。人生を営む最大の目的を。

 忘れていたんだ、人生で最上の喜びを。


 男が生きる理由。

 それは“女”に他ならない。

 考えてみれば、俺は前世でも現世でも、女性関係はまったくなかった。

 なぜか転生してしまって、女のことなどすっかり忘れていた。

 だが、今思い出したその欲求が、ムクムクと頭をもたげてきた。

 よし、決めた。決まった。

 俺のまわりを女で固めよう。女中も側室ももっと増やそう。

 この世だからこそ、俺が大名だからこそできるハーレム計画だ。

 汗臭い男にまとわりつかれる恐怖から逃れ、俺は天国気分を地上で味わうことになる。

 女の子に公然とデレデレできるなんて素晴しいな。


 ふふっ、戦国時代に来て初めて本気が出せそうだ。

 ハーレムのために2万貫費やすのは無駄じゃない。心のゆとりだ。

 やってやろうじゃないか。


 この名島城を、本当の意味で俺だけの城にしてやる!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ