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転生したのはバカ殿でした  作者: 戦国兄弟
~なぜか転生~
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【其の四】

 前田利家が死んだ。

 加賀中納言が死んだ。

 そういって筑前の家臣らは大混乱になっていた。


 ジブショウが家康を暗殺した~、だとか

 家康が大坂城を乗っ取った~、とか。

 いろいろな話が飛び交っていて、俺の頭も大混乱。


 ようやく混乱が収まったのは、3月になってからのこと。

 その時には正確な情報もつかめるようになっていた。


 上方からの情報によれば、前田利家が死んだすぐ後に事件は起きたらしい。

 武断派と呼ばれる加藤清正や福島正則ら七人の大名が、なんとジブショウの屋敷を襲ったというのだ。

 佐竹とかいう大名に救われて、幸いにしてジブショウは助かった。

 

 だけどその後も彼らのにらみ合いは続き、もうヤバイってところで出てきたのが例のタヌキ野郎。

 タヌキこと家康は、ジブショウと武断派を調停したとか。

 これでまた、平和主義者の内府殿、だとか言って評判が上がったそうだ。ムカつく


 しかも、俺が味方しようとしていたジブショウが責任を取らされてしまった。

 五奉行は首にされるし、居城に蟄居(外出禁止ってこと?)させられた。

 ジブショウ全然駄目じゃん。

 関が原の前に負けてるんじゃん。

 さらに図々しいことに、家康はそのまま大坂に居座り、こともあろうことか石田三成の屋敷に入ったそうだ。

 こんなやつのどこが律義者だよ。


 もしかして俺のせいで歴史が変わっちゃいでもしたのかな。

 不安増大。このまんま江戸時代です、とかないよな。

 でもまあ俺は大したことしてないし、ダイジョウブダイジョウブ。

 

 なんか外交とかするの怖いな。

 下手に動いたら俺の首もちょんぎられそう。

 家康の命令とかで、「筑前は没収。牢屋にでも入ってなさい」とかなったら最悪。

 とりあえず大坂に行くのはこれっきりにしよう。

 今は筑前で内政にいそしむ時期なのだ。

  

 とは言ってもすることなし。

 

 淀君からもらった2万貫はいつの間にかなくなっていた。

 ふざけんなこの野郎! と倉庫係りに怒鳴ったら、

「それなら博多の商人さんたちがもって行きましたよ~」

 どっちにしろふざけんな!


 あ~ぁ、そういえば借金してたんだ。しかも結構な額。

 それで2万貫。

 くそッ、博多の商人どもめ。


 朝鮮出兵の被害であちこちのお殿様がお困りなようで。

 いえいえ。博多は金吾様のお膝元ですので、ええ。

 もちろん利息はお安くしますよ。(と、そこでなぜかギロリ)


 そんなわけで、俺は絶対安くねーだろって利息で多額の借金。

 そのせいで2万貫もすべて、金蔵はすっからかん。残念無念でござる。

 また金をもらいに大坂に行こうかな。

 淀君も金をくれるだろう。胸一発で2万貫だもんな。


 おっといかんいかん。大坂にはモンスター大名がいるんだった。

 動けないんだった。

 

 ……ほんとにすることナッシング。

 

 ま、せっかくだから、鉄砲隊の指南でもいくか。

 何ヶ月かたったし、鉄砲隊もだいぶ強くなった……ことを期待しよう。


「重元、調子はどうじゃ?」

 鉄砲頭の松野重元は、ちょうど今も訓練をしている最中だった。

 彼自身も手本を見せてやっているようで、顔に火薬のカスと思しき汚れがついている。

 手下に混じって教えてやるとは感心感心。


「はっ、金吾様。われらが鉄砲隊の訓練の成果を、どうぞご覧下さい」

 居並ぶ鉄砲隊から、20名程度を選び出した重元。

 俺の前にそいつらを引き連れてくると、他の連中に的を用意させる。

 的までの距離は80メートルくらい。

 俺も目はいいほうだが、かなり小さな的だ。

 

 的を眺めていたら、縦に並んだ鉄砲隊の一人がおもむろに立ち上がった。

 ん?

 弾を装填する鉄砲兵。なかなか手際が良い。

 あ、もしかして。あの的を狙うの?

 でもかなり遠いよ。ライフルとかじゃなきゃ……


 ダンッ!


 考えてるうちに、鉄砲が撃たれた。

 すさまじい轟音に、俺はおもわず耳をふさぐ。

 耳鳴りが収まってから、あわてて俺は的に目をやる。


 的は……あとかたもなく砕け散っていた。


 ……すごい腕前だなおい。


「おいおい、すごいじゃないか。凄腕だなぁ、キミ」

 さっき撃った鉄砲兵の肩をバシバシと叩いてやる。


「そんな、殿様にお声をかけていただけるなんて……」

「いやぁ、照れるなよ。キミは鉄砲隊のエースだな」

 エースの意味はなんとなくニュアンスで分かったみたいだ。

 恥ずかしそうに首を曲げる。


 そこで重元が口をはさんできた。

「金吾様。この者だけではありませんぞ。この鉄砲隊全員が同じような技能を修得しております」

 まさか……。みんなこんなにうまかったら最強じゃん。


 でもそれは本当だった。俺の鉄砲隊は最強だった。

 重元の選んだ20名全員が的をきれいに粉砕。

 怪しんだ俺は適当にほかの奴にやらせてみたが、結果は変わらず。

 まさに百発百中。

 すげえなぁ……。


 これなら余裕で三段構えもできるだろう。

 俺は重元に、かんたんに三段構えのやり方を教えてやる。

 三段構えは前例が多数あるので、重元もなんのことを言っているのかすぐ分かったようだ。


「なるほど。金吾様が申されているのは三段撃ちですな」

 へえ、三段撃ちって言うんだ。

「それで、出来るのか?」

「えぇ、もちろん出来ますが」

 出来ますが、ってなんだよ。が、って。問題あるのかよ。


「三段撃ちを訓練するとなると、かなりの弾薬が必要となりますが……」

 なんだそんなことか。

 火薬も弾も、博多の商人から買い占めたんだ。問題ない。

 好きなだけ使っていいよと重元に言ってやる。


「しかし、弾薬がなくなったりでもしたら大変なことに」

「いいよいいよ。金はあるからいいの。心置きなく訓練しなさい」


 それでもしつこくですが、と言ってきたので俺は退散させてもらった。

 まったく。

 重元は実力あるけど、頭が固いのが問題だな。

 もうすこししたらヨーロッパの貿易船が戻ってくる。

 俺の金を載せて、な。

 火薬も弾も、新しい鉄砲だって買ってやるさ。



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