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6話 なにが起きた?

 配信が終了してから、すでに十分以上が経っていた。

 それでも、アーカイブのコメント欄はまるで配信中のように流れ続けていた。


 一般的な動画配信と違い、ダンジョン配信の場合は、探索者が配信を停止しても、コメント欄はしばらく機能する。

 突発的な事態で配信が閉ざされた時、通報できないなどの問題を避けるためだ。


 そして、そのコメント欄は今、異様な熱気に包まれていた。


>りおちゃん、無事でよかった

>マジでそれ。ほんとよかった

>心臓止まるかと思った

>ちゃんと帰れたかな?

>ゲートまで戻っていたから問題ないだろ

>今日は配信終わって正解


>りおちゃん大丈夫かな?

>心配だよな

>引退とか……?

>そんなこと……ない、って言いたいけど

>探索者って、命の危険があるだけじゃなくてトラウマで、っていうのも多いから

>そんな中でも、りおちゃんはがんばっていたんだよな

>まじ推せる

>がんばってほしい

>こんなところで終わってほしくない

>とにかく応援の声をあげよう!

>そうだな!

>がんばれ、りおちゃん!

>りおちゃんなら、今度はうまくいくよ!

>がんばれーーー!!!


 ここまでは、よくある光景。

 ただ、少し流れが変わる。


>ところで、結局なにが起きたんだ?

>りおちゃんが大ピンチだった

>そういうのを聞きたいんじゃないだろ

>りおちゃん、なんで助かったんだろ?

>俺も疑問

>もちろん助かって嬉しいけど、謎だよな

>あの小さな女の子が助けてくれたのか?

>流れを見るとそうだけど……

>でも俺、なにも見えなかったんだけど?

>俺も


 空気が少しずつ変わり始める。


>バグで配信がぐるぐるになっていたとか?

>俺は普通に流れていたぞ

>俺も

>ラグでもないか

>ってか、ドローンが追いきれていないんだよな

>そんなことあるか?

>ダンジョンの素材で作られたドローンだぞ

>トップランカーの動きもバッチリ捉えることができるのに

>でも実際見えなかったし


 困惑。

 違和感。

 誰もはっきりした答えを持てない。


>編集ミスとか?

>生配信だぞ

>切り抜きじゃないからな

>じゃあなに? 奇跡?

>まじで奇跡なのかな?

>【芹那】あれは奇跡なんかじゃないわ


 コメント欄が一気にざわついた。

 それも当然である。

 新しくやってきたその人は、ダンジョン配信者のトップランカーであり、誰もが知っているようなトップクランを束ねるクランマスターなのだから。


>有識者来た

>大物すぎる

>でも助かる

>説明よろ

>【芹那】あなた達、ノリがいいわね……まあ、私も説明をするために来たわけだから、気にしないわ

>助かる

>奇跡じゃないって、どういうこと?

>【芹那】最後、りおちゃんに声をかけていた女の子がいるでしょう? たぶん、あの子がサイクロプスを倒したのよ


 コメント欄が一瞬、沈黙した。


>あの小さな子が?

>りおちゃんと同じくらい……ちょい下か?

>小動物っぽくて可愛いと思った

>お前りおちゃんを裏切る気か!?

>思っただけだ!

>【芹那】はいはい、つまらない争いは外でやってね。

>【芹那】それで、あの子のことだけど

>【芹那】私も配信越しで全て把握できたわけじゃないけど、たぶん、恐ろしいほどの速度で攻撃していたわ

>恐ろしいって言われても

>スピード特化ってことか?

>でも、そんなのわりと普通じゃないか?

>なんでも斬れる剣を持ってるとか、そういうチート能力の方が納得できるよな

>うんうん

>【芹那】ドローンでも追尾しきれないほどの速度だとしても、普通って言える?


 再びコメント欄が沈黙した。

 『芹那』という有識者らしき人の語る内容の『ヤバさ』に気づいたからだ。


 ドローンは、今でこそダンジョン探索者を配信者にするための便利な道具になってしまっているが……

 根本的には、ダンジョン内の不正や犯罪の防止としての抑止力。

 あるいは、ダンジョンの情報を得るために開発されたものである。


 最先端技術だけではなくて、ダンジョンから得られた、数世代先を行く技術、素材から作られたもの。

 未来の技術の塊。


 そんなドローンが配信者の姿を見失う? 追いきれない?

 ありえない。

 そのようなこと、今までに一度も聞いたことがない。


>マジなのか……?

>俺検証してみた

>仕事早い

>簡単だけどここにまとめてみた www//:◯◯◯◯◯◯◯◯◯

>詐欺だな

>詐欺だ

>ちげえよ!

>おぉ、本当にこの短時間でまとめられている

>ってか、やっぱりなにも映ってない

>いや、待て。なんかいる

>フレーム単位で見ると、なんか影みたいのが動いているのがわかる

>フレーム単位って……w

>忍者かw

>ニンジャー!

>【芹那】はいはい、ボケはいいから。

>【芹那】とにかく、そういうこと。私達だけじゃなくて、ドローンでも追尾できないほどの超々高速の攻撃をしかけた、っていうわけ


 三度、コメント欄が沈黙した。


 数世代先を行く技術が使われているドローンでも追尾できない。

 あまりにもおかしい。

 尋常ではない速度であり……

 そのようなことを成し遂げられる人なんているのだろうか?


>そういえば、最後に声をかけていたよな?

>あ!

>大丈夫ですか、って

>名乗っていたよな?

>可愛い女の子だった

>そこは今はいいから

>大事だろ!

>大事だな

>団結力w

>なんかめちゃくちゃ怯えてたよな

>助けた側が怯えるってなんぞ?w

>名前……言ってなかった?


 アーカイブを漁る動きが加速する。


>あった

>あったわ

>最後の方

>でも、声小さいからよくわからないな

>ひな、って言っているかも?

>苗字も言ってた

>小鳥遊……?

>小鳥遊ひな


 その名前がコメント欄に流れた瞬間。

 まるで示し合わせたかのように投稿が止まった。


>誰?

>聞いたことない

>ルーキーか?

>ソロかも?

>でも、見えないほどに速く攻撃していたのならルーキーじゃない

>少なくとも一般じゃない

>でも、りおちゃん助けたのはあの子だよな』

>確定じゃないけど、ほぼ


>小鳥遊ひな

>何者?


 疑問が形を持った瞬間だった。


 確かな答えはない。

 映像も証拠も不完全。


 それでも。

 その名前だけが、静かに、しかし確実に広がり始めていた。


 ……本人が、そのことをなに一つ知らないまま。

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