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5話 危なかったですよね? たぶん

 考えるより先に体が動いていた。


 怖いのに。

 目立ちたくないのに。

 関わりたくないのに。


 それでも。


 見捨てるなんてありえないと、私の臆病者の心が精一杯吠えて、駆ける。


 速く。

 速く。

 速く。

 風を追い抜いて、音を置き去りにして。

 とにかく、すぐに終わらせたいから。


 その勢いで右手に持つ短剣を振り抜いて、魔物の首を切り飛ばした。


 それから短剣を握り直して、周囲を確認する。

 他の気配はない。


(……よかった……)


 胸の奥が、すっと軽くなった。

 でも、その直後に別の緊張が押し寄せてくる。


「……ぁ……」


 私は、はっとして振り返った。


 彼女は銃を手にしたまま、その場に立ち尽くしていた。

 石像のようにピクリとも動いていない。


(……や、やばい)


 もしかして、怖くて固まっている?

 それとも、さっきの攻撃でどこか当たった?


(ど、どどど、どうしよう……!?)


 早くこの場を離れたい。

 視線もカメラも全部怖い。


 ……でも。


 もしも、あの子が大変なことになっていたら?

 怪我とか病気とかで動けなくなっていたら?


(……確認だけ)


 それだけ。

 それだけしたら、すぐ逃げよう。


「……あ、あの……」


 声が思ったていたよりも震えていた。


「……だ、大丈夫……ですか……?」

「あなた、は……」

「ぴぃ……!?」


 私は、反射的に視線を逸らしそうになって、なんとか耐えた。

 ちゃんと確認しなきゃ。


「よ、余計な……こと、だったかもしれないんですけど、でも、あ、危ないように見えて……その、つ、つい手を出してしまって……」

「助けて……くれたんだよね?」

「い、一応……?」

「なんで疑問形?」

「さ、さぁ……?」


 ひぃ。

 胃が痛い。

 緊張で、とにかく痛い。


「……す、すみません……!」


 私は、反射的に頭を下げていた。


「……え、えっと……わ、私なんかが……余計なこと……! あ、その私……た、小鳥遊ひな、という者でして、はい……」


 声が早口になる。


「……あの……その……邪魔……だったかも……」


 言いながら、自分で何を言ってるのか分からなくなる。

 でも、止まらない。


 謝らなきゃ。

 先に謝らなきゃ。


 謝れば終わる。

 怒られない。

 終わってくれる。


「……で、では……!」

「あっ……ま、待って!」


 私は、彼女がなにか言う前に後ずさる。

 そのまま走り、全速力で離脱。

 もとい、逃げた。


 曲がり角を一つ、二つ、三つ……数え切れないほど進んで。

 それから、しばらくしたところで通路の影に飛び込んで、ようやく足を止める。


「……はぁ……はぁ……」


 息が苦しい。

 心臓がうるさい。

 胃が痛い。


(……こわ……)


 私は、壁に背中を預けてしゃがみ込んだ。


 やってしまった。

 また、やってしまった。


 余計なことをした。

 目立った。

 関わった。


(……でも……)


 頭の中に、さっきの彼女の姿が浮かぶ。

 立っていた、無事だった。

 それだけで、少しだけ胸の奥が温かくなる。


(……助けられて……よかった……)


 私は、小さく息を吐いた。


 怖かった。

 恥ずかしかった。

 胃はまだ痛い。


 それでも、よかったと思うことができた。

 なら、それでよしとしよう。

 そう自分を納得させる。


「……今日は帰ろ」


 とてもダンジョン探索という気分にはなれなくて、私は入り口のゲートに向かった。


明日から毎日1話ずつ、19時に更新します。

続けて読んでいただけたら嬉しいです。

「面白い」「続きが気になる」など思っていただけたら、

評価やブクマなどで応援していただけたら、すごく嬉しいです。

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