表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/136

96 次のデート


 あれから数日間、(しゅう)はいかにして佳奈美(かなみ)をデートに誘うか熟考していた。

 だがしかし、特にいい案は浮かんでこなかった。その結果、苦し紛れに佳奈美に提案したのが…


【もしもし、聞こえる?】

「ああ、聞こえるよ」


 そう、電話という手段だ。

 いや家隣なんだから普通に会って話せよと思うだろう?そういう問題じゃないんだよ。こうやって顔を合わせないで話すことに意味があるんだよ。


 だってさ…あのめちゃくちゃ可愛い顔を見ながら話すのなんか恥ずかしすぎるし!!


「急にごめんな。今大丈夫?」

【うん、大丈夫だよ。それにしても、電話なんて珍しいね。どうかしたの?】


 新しくできた彼女をデートに誘いたいけど恥ずかしくて何もできなくなってるからとりあえずデートっぽい電話をしてみただけなんて言えない。


「それはその、声を聞きたくなってな…」

【そ、そうなんだ…。私も…柊の声、聞きたかったよ…?】

「そうか…。それならよかったよ。あはは…」


 なんか気まずい!!


(いや俺ら恋人になったんだよな!?なのになんだよこの距離感!?)


 明らかに二人とも緊張している。

 それは多分、付き合い始めてから特に何も話していなかったからだろう。佳奈美との楽しい楽しい恋人生活が始まるはずが、今は結構心苦しい状況である。


 流石にこのままなのはかなり辛い。というわけで、なんとか空気が変わるような発言をしてみる。


「そ、それよりさ。佳奈美は最近何してるの?」

【最近…?】

「ああ。俺は最近結構暇してるんだけど、佳奈美は暇つぶしに何してんのかなって」

【あ、えっと、それは…】


 歯切れの悪い彼女。そして直後、吐息が聞こえるぐらいの距離にスマホを近づけ、小さな声で囁いてくる。


【き、君の事…考えてる…】

「__っ!!!???」


(は!?俺のこと考えてる!?それってどういう…)


 彼女の衝撃的な発言に頭を打たれるが、よく考えてみればこちらも同じことをしていた。


(…そういえば俺も同じようなことしてるな…。俺ら案外似たもの同士なのか…?)


 毎日互いのことを考えてるなんてラブラブバカップルすぎだろ。そんなに仲良いならはよデートぐらいしろや。と思ったりもするが、そんなに簡単な話ではない。


(いや、今はそんなのどうでもいいか。とりあえずどうにかしてデートに漕ぎ着けたい…)


 こんなにこちらのことを慕ってくれていることがわかり、いい加減デートの一つぐらいしてあげた方がいいと考える。というわけで柊は小さな勇気を振り絞り、彼女に声をかける。


「あの…俺はさ、最近結構暇してるから…もしよかったら、俺と一緒に遊んでくれないか…?」

【…え?それってつまり…デートってこと…?】

「ああ…そうなるな」

【…わかった。デート、しよっか】


 案外単純に受け入れられてしまった。まあカップルだから当然だが。


「ありがとう。どこか行きたいところとかあるか?」

【う〜ん…この時期だと、花火大会とか?】

「花火か…いいなそれ」


 夜に彼女と二人きりで花火を眺める。ロマンチックで最高じゃないか。


「佳奈美も花火でいいか?」

【うん!楽しみ】

「よし、じゃあ決まりだな。とりあえず何かいいのないか探してみるか」


 スマホで検索し、近々開催される花火大会を探った。するとちょうど一週間後に行われる大きめな花火大会が出てきて、早速それを提案する。


「お、いいのあったぞ。一週間後の日曜日に、ここから電車で一時間ぐらいのとこの」

【あ、それ知ってる!この前テレビで観た!】

「結構良さそうだな。これにするか?」

【うん!】


 というわけで一旦花火大会デートの約束を取り付けることができた。意外となんとかなるもんだな。


 でも何か一つ忘れていることがあるような…。まあ気にしなくていいか。だってこっちには、こんなに可愛い彼女がいるんだから。


【あ、それでさ。この前花音(かのん)さんと夏祭りに行くって話してたでしょ?あれはどうなるのかな】

「…あ」


 それやそれ。花音も含めて三人で夏祭りに行こうって話してたわ。


 佳奈美とのことを考えるばかりですっかり忘れていた。だから最近夏祭り関連の話ばっかり持ち出してきてたのか…。


 まあそれは後でちゃんと話を固めておくとして。


「後で話しとく。まあどうせ近いうちにカフェに招集されるだろうから、具体的なのはそこでかな」

【なるほど。わかった。じゃあとりあえず、今週の日曜日だね】

「ああ。よろしく」

【バイバイ】

「ああ。バイバイ」


 とりあえず電話は終了。


「はぁ…緊張した…」


 彼女と電話をするだけでこんなにも緊張するものなのか。終始ドキドキしっぱなしだったぞ。


 でも彼女の声を聞いている時間は、他の何にも変え難いぐらい特別な時間だった。


「…俺、佳奈美のこと好きすぎるな…」


 彼女の声ひとつでここまでになってしまうのなら、手を繋いだらキスしたりしたらどうなるのだろうか。そのいずれも経験があるが、毎回冷静な状態ではなかったからカウントはしないとして。もし次のデートでそういう雰囲気になって、柊の心がある程度の冷静さを保ったままならどうなるのだろうか。


 それはかなり気になるが、証明されるのはきっとしばらく先だろう。


 だってもうキスはしばらくする予定がないから。そうでもしないと、いい加減心がもたないよ…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ