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93 幸せになりたい


「あら、二人ともおかえりなさい」


 様々なことが起こった後、(しゅう)佳奈美(かなみ)は片付けをしてくれている花音(かのん)の元に戻った。そう、恋人繋ぎのままで。


「ただいま。片付け、もう終わった?」

「はい。ちょうど終わったところです。それよりも二人とも…」


 ちょっと話題を違う方向に持っていこうとしたのに、軌道修正されてしまう。


「ふふ♡そんなに仲良かったですっけ?♡」

「まあ…流れでな」


 花音は繋がれた手を眺めながらニヤニヤしてくる。

 この様子だと、多分何があったか見抜かれているな。でも流石に二人の前でそれを深掘りするほど意地悪な人間ではないので、すぐに話を変えてくれる。


「そうですか。それよりも、そろそろ着替えないと遅くなってしまいますね。佳奈美ちゃん、行きましょうか」

「あ、はい…っ」


 花音は不気味な笑みを浮かべつつ、佳奈美を連れ去った。


 そして柊は完全に一人にされてしまったわけなのだが、ここでようやく我に帰った。


(…え?俺、佳奈美に告白したのか…?)


 いまだに信じ難い記憶が頭の中に襲来してくる。


(いやマジか俺…よくやるよホント)


 自分のことなのに少し他人事である。まああの時の自分は、半分くらいは別人のようなものだったから言いたいことはわかるけど。


 でも間違いなく告白をしたのはこの自分の口であることには変わりない。


(で…返事はどうだったんだっけ…?)


 あの頃の記憶が曖昧だ。


(ん…思い出せないな…。でもなんか、良い感じの雰囲気だった気がする)


 告白された時の佳奈美は嬉しそうにしていた気がする。なら告白は成功したのだろうか?


(てか、なんか俺らキスしてなかったか…!?)


 なんか記憶を遡ってみたら佳奈美の顔が目の前にあって目を閉じてるんだが。これってそういうことだよな?


(つまり俺の告白は成功したってことか…?)


 わざわざキスまでしているんだ。それで告白に失敗しているなんでありえない。だって友達の関係でキスするヤツなんていな__


(いやでも俺ら友達なのに普通にキスしてたしな…)


 …なにしてんねん。


 この二人、いつぞやに友達でありながらキスしてやがるぞ。

 そのせいでキスをしただけで両想いという確信が持てなくなっている。本当に厄介だ。


(ん〜…いや、流石に告白断るつもりなのにキスするわけなくないか…?そんなの気まずすぎるだろ)


 まあ、普通に考えたらそうなるわな。

 ということはつまり…


(…これ、告白成功してないか…?)


 告白をしたタイミングでキスをした記憶。


 これ、確定だわ。


(マジかよウソだろ成功したのか!!!???)


 胸が昂るのがわかる。心臓がうるさくなるのがわかる。

 そして、彼女が返事をくれた時の記憶が鮮明になる。


(佳奈美も俺のことが好きって言ってたよな…!?マジかよ!?全然気づかなかった…)


 まさか両想いだったなんて。信じられない。


 そんな素振りなかったよな…?


(いや俺らキスしてるもんな!?普通に考えて好きでもない相手とキスなんてしないもんな!?)


 こっちだってそれは同じ。佳奈美以外とキスなんて想像もしたくない。


 考えてみればこんなにも単純なことなのに、気づけなかった自分が恥ずかしくなってくる。


(もしかして結構アピールしてくれてたのか…?はぁ…最低な男だな俺…)


 佳奈美のことを待たせていたと考えると、鈍感な自分が嫌になる。


(あとで謝っとくか…。ああ、そうしないと別れるとか言われそうだし)


 女の子の扱い方は慎重に。それは前世での経験を元にした事実だ。

 だから仮に小さなことだとしても、ちゃんと誠実に謝っておいた方がいい。つまり、付き合って早々謝罪をしなければならないということだ。


(はぁ…こんなんでやっていけんのか俺ら…?)


 この調子だと毎日謝罪する未来が見える。


 まあそれはそれで面白そうではあるけど。だがしかし、できることなら謝るほどのやらかしは月一ぐらいにしておきたいところである。


(まあ…なんとかなるか)


 心が広い佳奈美なら何事も許してくれるはずだ。だから今こうやってマイナスなことばかり考えるのはやめよう。


 それよりも今は、幸せな未来だけを考えていたい。


(佳奈美、絶対に幸せにするからな)


 そんな誓いを胸に抱き、きっと幸せになれるはずの未来を夢に描いた。


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