139 運命の始まり
「ねぇ、さっきの話なんだけど…」
体育祭当日、昼休み。
生徒会でのミーティングを終えた柊は彼女に連れられて校舎裏に行き、もしや告白でもされるのかというような雰囲気になっていた。
「さっきの話?」
彼女は顔を真っ赤にしてマジマジしながら察して欲しそうにしているが、もちろんこの鈍い柊が女心を察せるわけがなく。結局彼女にに何のことかを質問し、彼女からの答えを待った。
「うん、昼休みの話…」
「あ…」
全てを察した。なぜこんなにも顔を赤くしていて、なぜこんなにも恥ずかしそうなのか。
その理由は、昼休みに母親達としていた結婚についての話だろう。あの時は彼女だけ意見を言わされたのだが、こちらはタイミングよく逃れることができた。しかし彼女がそんなことを許してくれるはずもなく、今こうして二人の時に自分と同じような恥を味あわせてやろうと考えているようだ。
だがしかし今こうして二人きりでいる時点で彼女ほどの恥を味わうことはないので、正直結構気は楽である。まあでも彼女に結婚についての話をしないといけないのは普通に恥ずかしいけど。
「柊はその…私のウエディングドレス…見たい…?」
「それは…もちろん見たいけど」
「そ、そうなんだ…」
質問しておいて向こうのほうが恥ずかしそうにしている。
「ちなみに…私に指輪を嵌めてくれるのは…柊だよね…?♡」
「!!?」
そんな期待した目を向けないでほしい。流石に断れないから。
「ああ…そうなれるように努力するつもりだ」
「っ!!…♡」
彼女は両手で顔を隠して悶える。多分それだけ嬉し恥ずかしかったということだろう。それすなわちプロポーズが成功していることを表している。いやまだ高校生だよ?流石にそこまでの覚悟は決まっていない。
そしてもちろん彼女もその事はわかっているのでこれ以上の言葉は求めてこなかったが、身体はこちらに抱きついてきて肌の温もりを求めてきていた。
「…私も、式でキスをするのは柊がいい…」
「っ!!??」
(それは反則だろぉぉぉ!!!)
胸に顔を埋めながらボソッと結婚願望を漏らしてくる。これには流石の柊も男の部分が刺激され、反射的に彼女の背中に腕を回した。
「俺もだ…」
「…♡」
校舎裏で抱きしめ合いながら顔を真っ赤にする男女。普通に考えれば告白が成功したのかな?とか考えるが、実際は結婚の約束に成功したところなのである。
体育祭というイベントが表で開催されている中、裏ではこうやって一つのカップルが赤い糸で結ばれた。それは二人にとってはとても特別な物で、何にも変え難い特別な時間だった。口で語らなくとも、互いに今が人生で一番幸せだと感じているのがわかる。それぐらい二人の胸は高鳴っていて、下手をすれば表にも響いているかもしれないと考えるほどだ。
しかしこのままではよろしくない。こうやって甘々で幸せな時間を過ごすのはいいが、ここはあくまでも学校の中だ。いくら人がいない校舎裏とはいえ、今は体育祭という一大イベントの最中なので当然告白をする輩が出てきてもおかしくない。つまりここに長居をするのは良く無いというわけだ。
名残惜しいが彼女から腕を離し、彼女の目を真っ直ぐに見て誓いの言葉を言った。
「健やかなる時も、病める時も喜びの時も、あなたを愛すことを誓います」
「っ…!!」
そして彼女の唇を奪った。あまり濃厚ではなくて時間も一瞬だったが、それでも二人の想いは確実に繋がった。
そして直後に、彼女に魂からの想いを伝えた。
「愛してるよ…クロエ」
「うん…♡」
二人の運命の歯車は動き出した。




