137 休憩させてくれ
【これより昼休憩に入ります】
今日は色々なことがあったが、気づけば午前の競技は終了していた。競技に必死になっていた生徒たちは親たちと合流して話をしたり、敵同士の友達と笑い合ったりしていた。
そんな中、先ほど競技を終えたばかりの一般生徒である柊は早速佳奈美たちと合流した。
「お疲れ様!!」
「一位おめでとうございます!!」
軽く汗をかきつつも涼しい顔で帰って来た柊を二人は笑顔で迎えてくれる。
「ありがとう」
花音から渡されたタオルを受け取りつつ二人に笑みを向けた。
「意外と何とかなったな。あんまり強い相手がいなくて助かった」
「も〜、そんなに謙遜しなくていいのに」
「あれは完全に柊の実力ですよっ」
ちなみに柊が参加した競技は騎馬戦だ。柊は騎馬の上に跨り、多くの騎馬を撃退した。あまり大胆ではなくて目立っていなかったが、柊のことをずって見ていたこの二人は彼の凄さをちゃんとわかっていた。
でも流石に褒められまくると照れるんだが…。
「最初の攻め方とか凄く良かったし、それで相手の裏を取ったところとか凄くカッコよかったよ♪」
「上から下の子たちに指示を出している姿も良かったですね♪しかもちゃんとそのおかげで勝ててますし、やはり柊は天才ですね♪」
顔が熱い。とりあえず顔を逸らしておく。
「あれ?♡もしかして照れてる?♡」
「ふふ♡相変わらずウブで可愛いですね♡」
学園屈指の美少女二人に生温かい目を向けられる。普通の生徒なら夢のような光景かもしれないが、柊にとっては恥でしかないのだ。
「もういいだろ…!!それより早く母さんたちのところ行くぞ!!」
「あ、逃げた」
「恥ずかしくなっちゃったんですね♡」
とりあえずはこの流れを終わらせたいので我が両親のところに逃げることにした。
だがしかし、そこでも地獄が待っていた。
「お、ヒーローの登場じゃないか」
「おかえり〜♡カッコよかったよわよ〜♡」
観客席にいた両親も嬉しそうに褒めてくる。いい加減にしろ。これじゃあもうどうにもできないじゃないか。
「え、お母さん…?」
そこで隣から佳奈美の驚いたような声が耳に入って来た。咄嗟に佳奈美の視線の方向を見てみると、そこには見覚えのある女性の姿があった。
「どうしてここにいるの?」
「ご近所付き合いは大事だからね♪たまたま見つけて、そのままずっとお話ししてたの♪」
まさかの佳奈美の母の楓が降臨していて、我らが両親と何かを話していたらしい。
いやちょっと待て。もしかして昼休みずっと一緒の空間にいるってことか?
「まあ立ち話はその辺にして、三人とも座って頂戴♪今日はご馳走を用意してるのよ〜♪」
いやそんなことを言っている場合ではない。
冷静に考えて彼女の親と一時間程度同じ空間にいるのはしんどい。しかも多分柊の母と楓は混ぜたら危険なタイプだ。二人で協力して佳奈美とのことを聞き出されそうだから。
だから申し訳ないが楓さんには自身の元いた席にお帰りいただきたいところである。
「お〜!!美味しそうです〜!!」
「豪華ですね…!!」
「ふふ、ありがとう♪みんなのために腕によりをかけて作ったのよ〜♪あ、佳奈美ちゃんも食べていいわよ〜♪」
「いいんですか!!??」
「もちろん♡なんせ将来の家族だものね?♡」
「…そ、それは…」
そこでこっちを見てこないで欲しい。しかもそんな期待したような目で。
それじゃあ流石に否定できないじゃないか。
「まあ…そうなるかもな…?」
「あら、そこはハッキリしないのね。女の子からすれば、早めに言っておいてくれた方が色々と準備できたらするんだけどね?佳奈美ちゃん?」
「はい…」
みんなの期待の視線が集まる。しかしこちらにもまだ味方はいるはず!
咄嗟に父親に目を向けた。
「…!!」
目力でアピール。しかし彼は完全に明後日の方向を向いていた。つまり見捨てられたということ。
(クソ…!味方はいねぇのかよ…!!)
万事休す。もうどうすることもできない。
仕方ない。ここは覚悟を決めよう。
「一応…そのつもりではいる…」
「「きゃー!!!♡♡♡」」
「ふふふ♡」
「……」
嬉しそうに騒ぐ母親二人。微笑ましい目で見てくる姉。
そして、マジで恥ずかしそうに顔を赤くしている恋人。
とりあえずこの地獄みたいな状況をどうにかして欲しい。




