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135 勝負


 体育祭前日の夜。

 二人の少女は家の近くにある公園に集結し、そして一人の少女が話し始めた。


「勝負しませんか?」


 ブランコに座るなり花音(かのん)は突然そんなことを言って来た。しかしこれには流石の佳奈美(かなみ)も疑問符を浮かべた。


「どういうことですか?」

「簡単な話です。明日の体育祭でどちらが活躍するかを競うんです」


 この人って体育祭で燃え上がるような熱血系の人だっけ?と思ったりしたが、恐らくこの勝負には目的がある。


「なるほど。ちなみに、勝った方はどうなるんですか?」


 まあそこまで大したことは言われないだろうと油断したその時、花音は自信満々に口を開いた。


(しゅう)を一日好きにしていい権利を貰えます!」

「!!!」


 全然大したことある。いや人生で1番重要なぐらい大したことある。


(柊を一日好きにしていいの!?え、それってつまりあんなことやこんなこともし放題ってこと!?)


 佳奈美は心の中で柊に執事のコスプレをさせたりオイルマッサージをしてもらうような想像を繰り広げた。


 だがしかし、ここで重要なことに気づいてしまう。


(いや、何でも言うことを聞いてくれるっていう話はされてないし…妥当なところで言うと、一日中私だけが独占できるだけってことかな?)


 まあそれだけでも全く問題はない。実は今までに柊を一日中独占できた日は無いので、いずれにしろこの話は佳奈美にとってはダイヤモンドよりも魅力的な話であった。

 だがしかし、次の花音の言葉一つでその権利の価値はさらに上昇することになる。


「あ、ちなみに柊は何でも言うことを聞いてくれますよ?」

「!!!???」


 先程とは変わり、この勝負の価値は地球以上になった。


「柊を一日中独占できてしかも何でも言うことを聞いてくれるんですか!?」

「はい♪佳奈美ちゃんはこういう提案をされると燃えると思いましたので♪」

「む…」


 確かに魅力的なのは間違いない。仮に地球が滅びようともこの権利だけは勝ち取りたい。


 だがしかし、その明るい未来を手に入れるには大きなリスクが伴う。


(でももし負けたら…花音さんに柊を好きにされちゃうってことだよね…?もしそうなったら柊が…!)


 メイド服を着せられてご奉仕させられている柊の姿が頭に浮かぶ!!


(それだけは絶対にダメ!!実のお姉さんにご奉仕なんて…そんなのダメェェェ!!!!!)


 勝手な妄想を繰り広げ、勝手に寝取られた気分になる。いやしかし実際これに近しい状況になる可能性は否定できない。


 つまり、この勝負は罠だ。


 別に一日中独占するぐらい旅行とかに行けば出来る話だし、将来結婚したら一生独占できる話だ。それに対して彼女は普段から柊のことを独占しているので、恐らく狙いは何でも言うことを聞いてもらうことだろう。


 何度でも言う。これは罠だ。


__え今何でもって言った?


「わかりました。その勝負、謹んでお受けしましょう」

「ふふ♪佳奈美ちゃんならそう言ってくれると思いました♪」


 間違えた。つい反射的に口が動いてしまった。


 しかしもう放った言葉は撤回できず、花音は嬉しそうにニコニコ笑っていた。


「じゃあ明日、お互い頑張りましょうね♪」

「あ、はい…」


 花音は公園を去って行った。

 そして一人取り残された佳奈美は、ブランコを軽く漕ぎながら思考を巡らせた。


(明日…頑張らないと)


 いや、もう考えることなど出来なくなっていた。花音の提案が魅力的すぎて空を見上げることしかできなくなった。


(まずは同じベッドで起きておはようのチューをしてもらって、そのままベッドでゴロゴロしながらおしゃべりして…一緒に朝ごはん作ったり?♪それからそれから…)


 夜風に当たりながら、明るい未来について考えた。そして暗い未来の可能性は、綺麗な月に置いていくことにした。


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