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134 玉入れ


 そして数種目後、ようやく待望の種目が始まろうとしていた。


「おお!出てきましたよ!」


 ここは一年生が座る席のはずなのになぜか隣には花音(かのん)がいて、もちろん周りのクラスメイトなどは彼女のことをチラチラと見ていた。しかし(しゅう)にとってそんなことはどうでも良く、今入場してきた美しい彼女に見入っていた。


「頑張れ…!」


 祈るように両手を握りしめ、まで彼女の姿を追い続ける。佳奈美(かなみ)は、いつも見たいな綺麗で品のある立ち振る舞いで、しかしどこか堂々とした目でグラウンドに立っていた。

 でもちょうどこちらに目を向けて来た時にだけその目はニコッと笑みを浮かべた。


「あ、こっち見てますよ!」

「…」


 ヤバい。そんなことをされたらドキッとしてしまうじゃないか。


 てかこんな公衆の面前でそういう目を向けてくると周りの人間たちに付き合ってからことがバレてしまうぞ?


 …いや、多分彼女にとってそんなことはどうでもいいんだろう。それよりも彼女にとって優先すべきことは、好きな人に対して笑みを向けることだったんだ。きっとこれは、こちらを心の底から信頼してくれている証だ。だから(しゅう)はそんな佳奈美の気持ちに思いを馳せ、そして心の底からの声援が湧き出て来た。


「頑張れ!!!」


 隣に座る姉、あるいは周りに座る同級生の生徒達が驚きの目線を向けてくるが、今の柊の目にはそんな情報は入って来ていない。ただ視線の先には、勇敢で美しい彼女の立ち姿だけが映っていた。


「よーい!!ドン!!」


 そういえば佳奈美が何の種目に出るのかって?

 それはもちろん玉入れだ。


「佳奈美ちゃん!!頑張ってください!!」

「いいぞ!!頑張れ!!」


 一年生の女子達が一斉に玉を入れ始め、その中ではやはり佳奈美の姿だけが大きく目立っていた。


「やっぱ香賀(かが)さんって綺麗だよなぁ…」

「純日本人なんだよな?初めて見た時外国人かと思ったわ…」

「てかもはや二次元だろアレは」


 現実の人とは思えないように整った容姿や、他人とは真反対の色をしている銀髪が人々の目を引き寄せている。


 しかし佳奈美の魅力はそれだけではない。


(なんか…すごいな)


 体操服は制服や私服よりも露出が多いし、ピタッとした形状なので身体のラインがいつもより浮き彫りになっている。そのため佳奈美の高校生離れしたボディラインがいつもより鮮明に見えて、柊の目は完全に佳奈美に吸い寄せられていた。


(他と比べるのも悪い気がするけど…佳奈美だけ突出しすぎてないか?)


 物理的に突出してるねこれは。


(いやいかん。頑張ってる彼女にそういう目を向けるなんて最低だろ。身体目的のクズ野郎のすることじゃねぇか)


 柊の佳奈美に対する気持ちは間違いなく本物で、本気で彼女と人生を添い遂げたいと思っている。それぐらい強い気持ちが、こうやって邪なものに変化するのはいかがなものかと思い、自分を制御しようと必死に心を沈めようとする。


 だがしかし、その程度では上手くいかないのが思春期の男というもので。


「……」


 ユサッ、ユサッ。そう揺れる二つの玉が、胸の奥に沈めたはずの感情を波立たせる。


(…フムフム。なるほど素晴らしい)


 何かの評論家になったつもりで、心の中で彼女に百点をプレゼントした。


(しかしアレだ、こんな素晴らしい人をめとれる男は羨ましいな)


 一人の評論家として、彼女を独り占めできる男を羨ましく思った。しかし、ここで評論家はあることに気づいてしまう。


(あ、それ俺か!!)


 いや実際にめとる約束をしたりしているわけではないが、現状1番近いのは間違いなく柊だ。それに佳奈美ももうこちらにゾッコンのようだし、これはほぼ間違いないと言ってもいいだろう。


 そんな評価を評論家が下したのだが、そんなことをしているうちに競技はもう終わってしまっていた。


「柊!!佳奈美ちゃん勝ちましたよ!!」

「ん…!?あ、ああ…!!そうだな…!!」


 一体何をやっていたんだ。一人惚気大会ですか?


 まあ悪くはなかった。またやろう。


 そんなどうでもいいことを考えつつ、嬉しそうにこちらを見ている彼女に拍手を送る。


「頑張ったな!!」


 満面の笑みで喜びをあらわにする彼女は、玉入れに使用されたモノの何倍も大きい玉を優しく揺らしていた。


 今度は佳奈美のを玉入れさせてほしい(?)。


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