131 社会的な死
「……」
「あの…どうかしましたか…?」
近くにいるのにわざわざスマホに連絡をしてして呼び出しをくらった。こういう時って多分怒ってるよな?明らかにプンプンしてるし。とりあえず謝っておこう。
「え、えと…ごめんな…?」
「何が?」
「えっ__」
どうやら今日は厄介モードらしい。普段の佳奈美とはかけ離れた返しだった。
これには流石の柊も焦り始め、心臓をバクバクさせながら何をやらかしたか考えた。
(どれだ!?どのやらかしだ!?一昨日も姉さんと一緒に風呂に入ったやつか!?それとも昨日姉さんと一緒に寝たことか!?)
もし外したら自分からやらかしたことを宣言することになるので、ここは慎重に考える必要がある。
(いや、でも今日の昼頃まで普通だったしな…それ以降にやらかしたってことか?)
昼以降にしていたことを整理してみる。
(………あ)
浮かんできたのは、さっきまで筋トレ話に花を咲かせていた桜花の姿だった。
そして咄嗟に口を開いた。
「佐々木さんと仲良くしてたから…?」
佳奈美は結構嫉妬をするタイプだから、他の女の子と親しく話していただけでも妬いてくる。かわいい。
しかし良いことばかりではない。だって今こうして厄介な状況になっているのだから。
「別に私は良いと思うよ?生徒会に入ったばっかりなんだから仲良くなろうとするのは大切なことだし」
少し早口で語り始めた。そして直後に感情を爆発させた。
「でも仲良くし過ぎるのはダメ!!そういうのって浮気だからね!!」
吹っ切れたように心の叫びを放ってくる。やはり柊の彼女は嫉妬深いようだ。
この程度で浮気と言われるとほぼ女の人と話せなくなるのでは?とか思ったりもするが、こういう時に何も言わずの謝るのが大切だとネットで見た気がするのでとりあえず謝っておく。
「ああ。不安にさせてごめん。これからは気をつけるよ」
「わかれば良いんだよ!!」
そして急に笑顔になる彼女。感情の変化が激しいな。まあでもこうやって嫉妬してくれるということは、それだけこちらのことを想ってくれているということだろう。それは嬉しく思うが、ヤンデレになりそうなのでどうにかしないと。
「あ!それと、私もジム入会したから!」
「え?」
「次いつ行くの?一緒に行こ!♡」
「え?」
もうヤンデレかもしれない。中々に愛が重い気がする。
しかし全然悪い気がしないのは相性がいいからだろうか。
「えーと…次は明日だな」
「じゃあ明日一緒に行こ!」
「ああ」
カップルでジムに行くと様々な目を向けられるらしいが、もう断れる状況では無いので頷いておく。
「明日はジムデートだね!!」
「まああんまりデートっぽくないけどな」
「なんで?」
「佳奈美は女性専用エリアに行くだろうからずっと一緒にいれるわけでも無いし」
「え?行かないよ?」
「え?」
「だから!私も柊の隣で筋トレするの!」
「……」
ああ、これ人生終了の合図だったのか。いつも通っているジムで彼女とイチャイチャしているところなんて見られたら死ぬだろ。結構知り合いも多いのに。
でもこれが佳奈美と付き合った男の結末であり、柊は仕方なくそれを受け入れることにした。
「ああ、そうするか…」
「うん!!」
多分明日は社会的に死ぬことになるが、それでも彼女のためだと頑張る決意を固めるのであった。




