130 意外な趣味
「今度はそれをこっちにお願い」
「はい!」
「すいません。少しだけ手を貸していただけませんか?」
「は〜い!!」
夏休み最終日。
その言葉を聞くと心臓が止まりそうになる学生は多いだろう。勿論それは柊も例外ではないわけだが、そんな最後の日さえも心休まることは無かった。
「やっぱり男の子がいると助かりますねっ」
「そうですねっ。柊のお陰で今日は予定より早く帰れそうですね」
一同は今、生徒会室の片付け等を行なっていた。流石は生徒の模範と言うべきか、夏休み最終日でも全員が学校に集まっていた。
そして新規加入の柊も早速その活動に参加して重い荷物などを運んでいるわけだが、やはり周りから聞こえてくるのは「男がいてくれると助かる」という声だった。
まあまず簡単に説明すると、この生徒会には前まで女性しかいなかった。理由はよくわからないが、とりあえず女の子しか居なかったのだ。そのせいか活動に支障をきたしたりしていた様子だったので、柊はそれを手伝うために生徒会に入ったというわけだ。つまり雑用ということ。本人は納得しているので問題はない。
「ありがとうございます。それにしても、意外と力持ちなんですね。普段から何かしているんですか?」
頼まれた荷物を運び終えた後、それを見ていた二つ上の先輩の桜花が質問をしてくる。それに対して柊は言葉を返そうとするのだが、そこでなぜか横やりが入ってきた。
「柊は普段から身体を鍛えているんです。外に走りに行ったりジムに行ったり。ですので実は結構筋肉があるんですよ?」
花音が横から全てを話してくれた。
「そうなんですね…」
するとそこで桜花は顎に拳を置いて何かを考え始め、数秒後にこちらに真顔を向けて来た。
「因みに何キロ上がるんですか?」
「…え?」
よくわからない質問をされた。でも一つだかわかるのは、メガネの向こうにある目が少しだけ輝いているということ。
「ベンチプレスは、何キロ上がるんですか?」
「…え?」
柊は二度同じ反応をした。
しかしそれも無理はない。こんな明らか勉強にしか興味がないような見た目をしている少女から筋トレの話題が発せられたのだから。
「ベンチプレスって、あの寝転がってやるやつですか?」
「はい」
「因みにどれぐらい上がれば凄いんですか?」
「そうですね…まあ彼の体重次第ですが、八十キロも上がれば凄いのではないでしょうか」
まあ柊は高校一年生だしそんな物だろう。見えている腕の太さなどからも予想した桜花であったが、その予想は大きく外れていた。
「で、柊は何キロ上がるんですか?」
「…百ニ十」
「!!!???」
ここで桜花が渾身の驚き顔。ほぼ真顔と変わってないけど!!
「そ、そんなに上がるんですね…」
「まあ…なんか気づいたら」
「なるほど…まさか近くにこれ程の上級者がいるとは…」
なぜか筋肉の話になると口が達者な桜花さん。もしかして筋トレ好きなんだろうか?それなら仲間だろうから是非情報共有とかしてみたいな。
ふとそう思ったので早速質問をしてみる。
「もしかして佐々木さんも筋トレしてるんですか?」
「え?はい。してますよ」
「へ〜。どこのジムに行かれてるんですか?」
「えっと…ここです」
スマホを出して位置を示してくれた。
「え!?同じ所じゃないですか!?」
そしてまさかの同じジム。こんな綺麗な人ジムで見たことないけどな?
「週に何回ぐらい行ってるんですか?」
「三日ぐらいですね」
「意外と言ってるんですね…でもジムで会ったことないですよね?」
「はい。私は女性専用エリアでしているので」
「なるほど…」
筋トレに花を咲かせる二人。
そして話に置いていかれる他の生徒会メンバーたち。
「…まさか二人に共通の趣味があるだなんて」
「というか佐々木さんにそんな趣味があっただなんて…」
「意外ですね…私も行きましょうか…」
桜花の趣味を意外と捉える人や、柊を取られないように同じジムに入会しようとする人も。
そして過激派にもなると、スマホを取り出してポチポチと文字を打っていた。
『後で話があります』
柊の彼女は嫉妬で溶けてしまいそうになっていた。




