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109 下心はないよ?


 白熱した議論の結果、(しゅう)佳奈美(かなみ)と一緒にお風呂に入ることになった。


 …結局こちらの意見は一切聞き入れられなかった。


 半ば強制的に脱衣所に連れて行かれた。


「…なあ」

「なに…?」

「本当にいいのか…?無理してないか?」


 佳奈美とてこの状況は想定外だろうから困惑しているはずだ。ここで冷静になってちゃんと拒否してくれればそれで一件落着なんだ。


 だがしかし、なぜか彼女の意思は固くなっていた。


「ううん。無理なんかしてないよ。私が柊と一緒に入りたいって思ったのは本当だから…」


 顔を赤くして本音を語ってくれる。

 流石にそこまで言われるとこちらとしてはもう何も言うことができない。つまり、佳奈美とお風呂に入らなければならない。


「そか…なら、入るか」

「うん…」


 互いに目を逸らして確認をし合った後、身体を背けて服を脱ぎ始める。


 だが脱衣所が狭いせいで向こうが服を脱いでいる音がしっかりと耳に入ってきて、心臓のドキドキが加速していく。


(おいおいおい…!!真後ろで佳奈美が服を脱いでるじゃないか…!!こんな最高な__いやはしたない展開があって良いのか!?いや良い!!)


 佳奈美とは誠実なお付き合いをしたいという考えの一方で、本能は彼女の柔肌を直で見たいと叫んでいる。


 そんな対立する意見に挟まれた彼は、後ろを振り返りそうになる顔を何とか手で押さえながら自分と戦いを繰り広げる。


(まてまて!!流石に着替え中に振り返るのは失礼だろ!!そんなことすれば嫌われるぞ!!だから絶対に振り返っては…!!)


 顔を何とか正面に戻し、油断した隙にまた後ろを振り返りそうになったり。


 正直言うと視界の端でギリ彼女を捉えられたぐらいで腕に力を入れ始めていたのは知らないフリをしておくとして。


 ピンクだった…。


(よし俺は何も見ていない!!ただ姉さんと母さんに言われて仕方なく一緒に入れられているだけで、決して下心なんてない!!)


 なるほど。下もピンクか。


 ん?よく見れば上のピンクちゃんが白い肌の色と同じになってるぞ?


 いやこれマジで大丈夫か!?


(よし!!一旦無になろう!!何も考えなければたかが女の子の裸程度どうにでもなる!!)


 お経のようなものを唱え、精神統一を図る。


 するとその間に服を脱いでタオルを巻いたらしい佳奈美が恥ずかしそうに声をかけてきた。


「あの…私、先に入ってるねっ!」

「ん!?あ、ああ…!!」


 そう言って彼女は浴室に入って行った。


 そこでようやく一人になれた柊は、お経の効果もあってかある程度冷静さを取り戻すことができた。


(何考えてんだ俺は…。折角佳奈美が一緒に入りたいって言ってくれたんだぞ?それに対して邪な気持ちを持つのは失礼だろ…!)


 そんなことをすれば流石の佳奈美でも引いてしまうだろう。だからこちらは、彼女がこのお風呂を楽しんでもらえるように努力しなければ。


(今回はちゃんと佳奈美に楽しんでもらえるように頑張らないとな…。ま、考えてても仕方ないし、とりあえず俺も早く行くか)


 どうせ考えたところで下心などが消えることはない。なのでこの冷静さを保てているうちに早く彼女と対面しようと考え、ササっとズボンと下着を脱ぎ捨ててタオルを巻いた。


「佳奈美?入って良いか?」

【いいよ】


 扉越しに返事をもらった後、早速彼女と対面した。


「あの、その…」


 オドオドしながら反応を待つ彼女はいつもとは違う雰囲気だった。その要因は恐らく、結ばれた髪にあるのだろう。

 普段はスラッと下ろされている髪が今は綺麗に頭の後ろで結ばれていて、いつもとは違う上品な印象を持たされる。


「綺麗だ…」

 咄嗟に口から放たれた言葉は、今の彼女を表しているものだった。


 しかしそれを聞いた佳奈美は、その言葉とは違って可愛らしい反動を見せてくれる。


「え…!?ちょっ__急にどうしたの…!?」

「だって…なんかいつもとは雰囲気が違うから」

「そうかな…?」

「ああ。髪が綺麗に結ばれているからいつもとは違って見えるよ」

「〜〜…!!」


 顔を真っ赤に染める彼女。

 それを見た柊も、少しずつ冷静さを削られていく。


「そのおかげでお風呂モードって感じがして、普通他人には見せないようなところを見せてくれているのが嬉しい」

「そ、それは…柊はだから…だよ…?」

「っ…!!??」


 胸を一突き。完全に射止められてしまった。


 やはりもう彼女に毒されてしまっている。佳奈美さえいれば他はどうでも良いと、本気で考えるようになっている。

 そしてその感覚には従うべきだと、前世の経験が告げている。


「嬉しいよ…ありがとう」

「うん…」


 こんな状況下でも、柊は平然と彼女を抱きしめた。


 その胸に溢れた想いは、前世で愛した彼女に向けたものと、全く同じだった。


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