106 何でも言うことを聞く話
ポチポチポチ__。
ピコピコピコ__。
ドカンドカンドカン__。
「あ!!それずるい!!」
「いや?コレもちゃんとルールの範囲内だぞ?」
「む〜…!!でもまだ負けてないよ!!」
「勝負はここからだ!!」
恋人が一つの部屋に二人きり。
そんな中この二人はゲームに白熱していた。
「あ〜!!」
「よしっ、俺の勝ちだな」
「はぁ…負けちゃったぁ…」
そして結局、勝負になると手を抜くことを知らない柊が勝利を収めた。
すると勿論負けず嫌いな佳奈美は悔しそうに人差し指を立ててくる。
「もう一回!もう一回やろ!!」
「ん?まあいいけど」
「次は絶対に負けないからね!!」
まさかデートでゲームをやるなんて引かれるのではとか考えていたが、結果的に彼女もノリノリだから少しホッとした。
でもまだ油断できる状況ではない。なぜなら、次の戦いで負けてしまうと…
【佳奈美が一回でも俺に勝ったら一回だけ何でも言うことを聞いてやるぞ?】
何でも言うことを聞かないといけなくなるから。今の佳奈美の精神状態を考えると、多分とんでもないことをお願いされてしまう。
だからこちらも負けるわけにはいかず、闘争心を燃やしている。そしてコレほどまでに燃えている理由は、もう一つある。
【じゃあもし柊が全勝したら私が一回何でも言うことを聞いてあげるね!】
ということになっているからである。
可愛い彼女からこんな提案をされて燃えない男がいるわけないだろ?つまり柊は佳奈美に一つ言うことを聞かせるために燃えているのである。
あ、決してエッチなことではないぞ?
「じゃあ始めるぞ…!」
「うん…!」
ちなみに今しているのは、操作しているキャラが敵を殴ったり蹴ったり、はたまた魔法を放つ対戦ゲームだ。それを佳奈美と怠慢でやり合っているのだ。
まずは当然慣れている柊がコンボ技を仕掛けていく。
「あ!またそれ!!」
「…!!!」
佳奈美はちゃんとリアクションを声に出しているが、柊は至って真剣に技をかけていく。
「おら!!」
「!?もう一回負けちゃった!?」
ちなみに今やっているゲームのルールは、三回敵を倒したら勝ちという感じである。そして今、佳奈美を一回撃破したところである。
「フ、このままじゃ俺に全敗するんじゃないか?」
「そ、そんなことさせないもん!!絶対に勝つよ!!」
少し挑発をしてみると、佳奈美は気合を入れたように画面を見始めた。
(ま、そんな真剣な顔で見ても実力はほとんど変わらないだろうけどな)
柊は心の中で真剣に戦う彼女に先入観を抱いた。
だが実際その考えは間違っておらず、気づいたらもう一度佳奈美を撃破していた。
「!!??」
「そろそろ最後にするか?疲れてきただろ」
「…!!!」
「あれ、聞いてる?」
「…!!!」
思っていたよりも集中しているらしい。
ならこちらも、それに全力で応えてあげよう。
「!、!、っ!!!」
「…!!!」
二人とも言葉を発さず、ただ画面に集中する。だが相変わらず柊が優勢で、佳奈美はとうとう場外に吹っ飛ばされて敗北を喫し…なかった。
「なに!!??」
「よし!!!このままいくよ!!!」
普段ならもうゲームオーバーのダメージを入れたはずが、なぜか彼女のキャラは生存している。
もう終わったと思って少し気が抜けていた柊は意表を突かれ、思わず佳奈美の一撃を喰らってしまう!!
「!!!???」
「やったー!!倒したー!!!」
その一撃で、柊のキャラは一度敗北した。
それを見た瞬間、佳奈美は大喜びしながら両手を突き上げた。だがしかし、まだ勝負は終わっていない。
「え!!??」
「佳奈美の負けだ。約束通り、一つ言うことを聞いてもらおうか」
佳奈美が油断した瞬間を一突き。彼女の敗北が確定した。
「ウソ…!!??でも私、一回勝ったよね!??」
だが彼女は諦めが悪く、一回倒したことを擦ってくる。でもルール的にはこちらの全勝であるため、それをしっかりと説明する。
「いや、それは一本取っただけだ。このゲームは三回倒したら一勝。つまり佳奈美は一度も勝ってないんだ」
かわいそうだが、コレが現実だ。それをちゃんと受け入れてもらい、こちらの要求を聞いて__
「でもあの時はそんな説明されてないよ?」
「え?」
「私は一回でも倒したらいいのかなって思ってたんだけどな〜」
いや、佳奈美ほど頭が良くて勘のいい人なら大体予想はついてただろ。
だが彼女はわざとらしくとぼけている。
「柊…だめ…?♡」
「っ…!!」
うるうるとした瞳で、こちらを見上げてくる。
そんなのされたら…否定なんてできないだろ!!
「わかったよ…。佳奈美の勝ちでいいよ」
「本当!?やったー!!」
そこまでして勝ちたかったのか?いや本命は一つ言うことを聞かせることか。
「じゃあ柊には一つ言うことを聞いてもらわないとね!」
「ああ…」
何をお願いされるのか、緊張で鼓動が早くなる。そしてそれが落ち着く間もなく、佳奈美はお願いを口にした。
「今日お泊まりさせて!!」
「…え???」
脳天に雷が落ちてきた。




