104 料理上手いな
昨日は可愛い彼女と花火大会デートをした。屋台の食べ物を分け合ったり、花火を眺めながらイチャイチャしたり。付き合い始めて最初のデートだったが、最高のデートだった。
そして今日、その最高の一日がもう一度訪れようとしていた。
「おはよう」
「ああ、おはよう。さ、上がってくれ」
今日は佳奈美とお家デートだ!まさか二日連続で彼女とデートできるだなんて、流石に幸せ者すぎる。
そんな幸せ者の柊であるが、実はかなり緊張している。その理由は簡単で、単純に彼女を部屋に入れるのが初めてだからだ。
年頃のカップルが同じ部屋の中で過ごして何も起こらない筈がなく…とか考えてしまって、あまり佳奈美の顔を直視できない。
「お邪魔します。…柊?どうかした?」
「え!?ああいや、別に何もないぞ!さ、早く昼ご飯作ろうぜ!」
「うん!」
明らかに動揺しているが、佳奈美は特に気にすることなくリビングに入って行った。
「おはようございま〜す」
「あら、いらっしゃい♪」
「ふふ、おはようございます♪」
ソファに座っている姉と母からニヤニヤとした目を向けられるが、無視して佳奈美を案内する。
「荷物はとりあえずその辺に置いておいて、早速始めるか!」
「うん!」
二人はキッチンに向かい、早速共同作業を始めた。
佳奈美が野菜を丁寧に切ったり、柊がルーを鍋に入れようとしたところで震え始めてシンクにホールインワンしたり。
そんな感じでほぼ完璧(?)な状態で料理は進んで行き、数十分後に食卓に並んだ。ちなみにカレーである。
「わ〜!美味しそうね〜!」
「はい!流石佳奈美ちゃんです♪」
「俺は?」
「それじゃあいただきましょうか」
「俺も一緒に作ったんだけど」
姉の花音はこちらの言葉を無視して食べ進める。
「ん〜♪美味しいです!佳奈美ちゃんは女子力高いですね!!」
「あ、ありがとうございますっ」
「ん!この福神漬けも美味しいですね!流石佳奈美ちゃんです♪」
「それ作ったの俺なんだけど」
「お母さん、下剤ってありましたっけ?」
「出そうとすんな!!」
「あはは…」
自分の食したものを柊が作ったことを知った途端に自分の体内から出そうとするなんて、本当に失礼な人だ。一応ちゃんと練習してまともに作れるようになったのに。
「でも驚いたわ…まさかあの柊がこんなに美味しいものを作れるようになるなんて…」
花音の横で福神漬けを食べた母が目を見開いている。
いや、この人も結構失礼だな。最近は普通に母に教えてもらいながらやってたから成長度は把握している筈なのに。
どれだけ過去がヤバかったと思われてるんだよ。いや実際にヤバかったけど。
そしてそれはもちろん佳奈美も知っているので、母の言葉に苦笑いを示した。
「そ、そうですね…。この数ヶ月で本当に上手になりましたよね…!」
「そうね〜。ようやく料理が壊滅的な人ぐらいには成長したわね」
「え、ひどくない?」
じゃあ前までは何だったんだよと問いたくなるが、それを訊いたら家出したくなるかもしれないので訊かないでおく。
そんなことよりも、とりあえずほぼ佳奈美が作ったこの料理を食べてみたい。というわけで、柊はため息を吐きつつもカレーを口に運んだ。
「…ん、うまいな」
「佳奈美ちゃんが作った範囲は、ですか?」
「…ああそうだよ!佳奈美以外の人が作ったところは美味しくないよごめんなさいね!」
とうとう自虐を始めてしまった。
だがこういう時でもちゃんと味方でいてくれる優しい人物もいる。
「そ、そんなことないよ!柊が作ってくれた福神漬け、とっても美味しいよ!!」
ポリポリと福神漬けを食べながら褒めてくれる優しい彼女。
「ああ…もう俺には佳奈美だけいればいいヨォ…」
悲しい声を漏らしつつ、佳奈美の肩に顔を埋める。
「ふふ♪私でよければずっと一緒にいるよ?♡」
「頼む…」
「うん!任せてっ!」
彼女って最高だな。なんかもう、こんな貶してくるばかりの家族なんてどうでもよくなってくる。
そしてそんな家族からは、困惑のような照れのような目を向けられている。
「「……」」
「…なんだよ」
「い、いや…別に?」
「何もないですよ…?私たちは気にせず、二人でイチャイチャしてください」
「…!?」
二人に言われて気づいたが、なんかしれっといちゃついてしまっていた。まさかこんなに恥ずかしいところを家族に見られるなんて、流石に恥ずか死ぬ。
咄嗟に佳奈美から離れ、恥ずかしそうに頬を紅潮させている彼女に小さく謝る。
「ご、ごめん…」
「ううん…私はその、柊に求められて嬉しかったから…」
「あら♡もしかして今日は結婚の報告に来たのかしら?♡」
「なわけねぇよ!?」
何を言っているんだ!流石に気が早すぎるだろ!!
「でもお母さんがそう勘違いしてしまいそうなぐらいに二人は仲がいいですね♡」
あれ、そんなに誤解されるぐらいイチャイチャしてたか?まさかこの二人にそんなことを言われるだなんて、余程だったんだろうな。
いや、そんなこと考えてる場合か。普通に恥ずかしすぎるわ。
「…ちょっとトイレ」
「あ、柊…!!」
このままこの場に留まると二人から様々なことを問い詰められる気がしたのでトイレに逃げる決断を下した。
そして佳奈美からは「ひとりにしないで!」みたいな目を向けられたが、今回は要望を聞いてあげられそうにない。
どうか女子三人で楽しい会話をしていてくれ。




