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101 友達を作ろう


 夏の夜に打ち上がる花火。


 湧き上がる観客たち。


 そして、花火に負けず劣らず綺麗な彼女。


「うわ〜!すご〜い〜!」


 隣に座る佳奈美(かなみ)は、花火を眺めながら笑みを浮かべている。


 そして彼氏の(しゅう)は花火を見るでもなくただ綺麗な彼女の顔を眺めている。


「…」

「ねぇねぇ、すごく綺麗だね!!」


 こちらを向いて共感を求めてくる。


 それに対し、正直な意見を返す。


「そうだな」


 なんとなくこの肯定の意味を察してくれるのではと思っていたが、彼女は何も気づかずに花火に夢中になってしまった。

 こちらはこんなにも隣の美少女に夢中になっているのに、この人は本当にわかっていない。


 もう仕方なしで、この気持ちを言葉にすることにした。


「佳奈美の方が綺麗だけど」

「そ、そう…?」


 そこでようやくこちらの考えを理解してくれた佳奈美は、顔を紅潮させて目を逸らした。だが直後にこちらに向き直り、恥ずかしそうに上目遣いをしてくる。


「柊もその…綺麗だよ…?」

「はは、そうか。ありがとう」


 自分で言うのもアレだが、この花火より綺麗なわけがない。それは誰が見ても事実であるし、佳奈美が花火よりも綺麗なのも明らかな事実である。


 だがそれでも彼女は綺麗だと言ってくれる。彼女の目には、こちらが花火よりも綺麗に映っているらしい。ハッキリ言って節穴なのではと思うが、恋は盲目とはこのことなのだろう。


 ま、とりあえず佳奈美もちゃんとこちらのことを好きでいてくれていることがわかったのでいいとして、一旦花火に目を向けてみることにする。


「……」


 なんかすごくロマンチックな気がする。好きだとか言ってやろうか。


「ねぇ、ちょっと話しておきたいことがあるんだけど」


 好きと言いたかったが、先に佳奈美に話されてしまう。


「なんだ?」

「私たちが付き合ってるってこと、学校で話す?」

「あー」


 二人は夏休みの間に付き合い始めたため、学校でしか会わない人間はもちろんこのことを知らない。佳奈美の話とは、そう言う人たちに自分から付き合っていることの説明をするかどうかというものであった。


 まあいずれにしろ雰囲気とかでバレたりするのだろうが、そういう不意なことが起こるよりも先に説明しておいた方が気持ちは楽だろう。だがしかし、自分から付き合っていると叫ぶことは流石に恥ずかしすぎる。多分彼女は、それについて話し合いたのだろう。


「私としては学校始まってからすぐに話しておきたいんだけど…そうした方が柊も安心だろうし」

「ん?なんで?」

「だってちゃんと話しておかないと…こ、告白されちゃうかもだから…」

「あー…」


 佳奈美はアイドルも顔負けなほどの美少女である。

 そんな女の子が同じ学校にいるのであれば、好きになって告白するのは当たり前とも言える。実際、そうなりつつあるのだろう。だから彼女は夏休み明けの告白ラッシュを警戒してちゃんと話しておくことを提案してきた。


 でも一つ、よくわからないことがある。


「なんとなく言いたいことはわかったんだけどさ、俺が安心するってのはどういうことだ?」


 確かに先に話しておいた方が後でバレないという気持ちの楽さはあるが、そういうことを言いたいようではなかった。だからそれについて質問を投げると、佳奈美はいずれ起こりうる出来事について詳細に語り始めた。


「だって柊、私が告白されてるって知ったら多分嫉妬しちゃうでしょ?」

「っ…」


 完全に図星である。

 可愛い可愛い彼女が他の男から告白されるなんて、嫉妬で頭がおかしくなる。


「それはまぁ…そうかもしれないな」

「そうでしょ?私柊のことよくわかってるでしょ?」


 なぜかドヤ顔。


 でも正解を言っているので何も言い返せない。


「…」

「ふふ、その反応が見たかったんだ〜♪」


 楽しそうに悪戯な笑みを向けてくる。

 そういうところも非常に可愛いが、それは言葉にせず彼女の言葉を待つ。


「ま、それはいいとして。総合的に考えて、私は先に話しておいた方がいいと思うな」

「…そうだな。とりあえず友達数人に話してみるか。そしたら勝手に広まるだろ」


 特に否定する理由もないので頷いておいた。だがここで一つ、問題が立ち塞がる。


「…ちなみになんだけど、柊は話ができる友達が数人もいるの?」

「…いるわけないだろ。佳奈美は?」

「私もいない…」


 そう、二人揃って友達がいないのだ。いやいるにはいるんだけど、こういう話をするほど仲が良くないというか、恋愛の話をしてもいいのかわからないというか…。


 つまり、まず付き合っているという話をできる相手がないのだ。


「…どうする?」

「ん…どうしよう?」

「さあ…」


 相変わらず友達がいないカップル。


 その原因は、この二人で仲良くしすぎたことである。二人の時間を作りすぎるあまり、他のクラスメイトと全然関わらなかったのだ。これが好きすぎる故の弊害だ。


 いくら彼女がいれば良いとはいえど、友達がゼロは悲しい。


「友達、作るか…」

「そうだね…」


 花火のおかげで明るかった夜は、二人のせいで暗くなってしまった。


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