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砂丘のあの花

作者: 一人千役

水本クロイは、とある話をしたという。

「私がイアスと出会った時の話だよ。」


1990年、世界で有名なPMC(民間軍事会社)「アレス」というPMCがあった。そのPMCは当時反乱やデモが多く起きるほど支持されていなかった「ニュート・ハミルトン」が大統領であるアメリカ政府を転覆し、新しい政府を立ち上げた。

ニュートは、銃火器の所持を禁止、白人至上、強制労働により、国家の向上を追い求めていた。

しかし、PMCがそれを転覆し、ニュートは処刑された。

そして新しい政府を立ち上げたが支持されなかった。

転覆されてすぐの頃は民衆たちも、アレス政府を支持をしていた。しかし、実際はニュートとおなじく、独裁政治を行い、幹部の大規模粛清により多くの優秀な政治家が粛清された。さらに、半年というとても短い期間で武力を使い世界中に兵を送り、世界中を支配した。そしてアメリカでの政治と同じような政治を行っていたため、世界中はデモが多く起きていた。

するととある日、モスクワでの大規模デモが起こった。大規模デモは様々な場所で行われていたが、このデモはその中でも大規模で、政府の中継政治局が襲撃されて破壊された。

そこでアレス政府が、「アンチリアリティディスパッチ」という技術を使った。その技術によって生まれた「異常存在」がデモ参加者、そして反乱者の腹を食い破ったり、頭を弾き飛ばしたりして、残忍に殺害していた。アレス政府の指示によってその瞬間が世界中のテレビで放送された。

その結果反乱が収まるかと思われたが、そんなことはなくむしろ勢いは増した。そのため世界中でその技術が使われる。


アンチリアリティディスパッチとは、量子の移動による空間の不安定化を利用して、異空間の生物を現実世界に呼び込む技術だ。2010年現在は全面的に禁止されているという。


その反乱に満ちた世界で反乱者を支えていた組織が何個かあった。その組織は、

「ピラニアショット」「ノストラ」「旧スタジオ大学」「九尾のクロークを着た狐」

の4つだ。


ピラニアショットは、主に武器、攻撃支援を行うことに長けた組織だ。旧国軍や、旧アレス職員などが組織の大半を占めている。そして、武器工場などもある。たまに捕虜をこちら側にすることもあるらしい。

兵力としてはこの組織が反乱者を1番支えているのだろう。

「敵が晒した弱みを凶暴に食い破る」がモットーだ。

実際ピラニアは血に強く反応するため傷のない人間がピラニア風呂に入っても襲うことは無いようだ。


ノストラは、元々麻薬カルテルのひとつだった。しかし、アレスの転覆により、麻薬を密輸できなくなった。そのためカルテルの存在意義を果たすため一時的に方向を変えて反乱を行うことにした。様々なカルテルの集合体がノストラとなったという特権を利用し、多大な兵力を利用して兵士の支援を行ったり、麻薬の密輸のノウハウを活かして一般市民の避難、輸送を行っている。「麻薬の密輸のために。」


旧スタジオ大学は、アンチリアリティディスパッチを研究していた。しかしその研究所をアレス政府により襲撃された。また、関係者のほとんどの人が粛清された。その1部の生き残りが、アンチリアリティディスパッチの研究を進めて対抗策を探している。


九尾のクロークを着た狐は、長い正式名称の頭文字からNTCFと呼ばれる。主に攻撃支援を担当するが他の組織とは違い、特殊部隊、機動部隊、精鋭部隊、王室専属部隊など、戦闘の達人などが集まり構成されている。その組織の中には能力者もいるようだが、詳しくはわかっていない。語源は、「九尾狐」という諜報部隊と、クローカーという諜報部隊が共に結成した組織だからだという。


しかしそこまでしてもアレスには叶わなかったという。アンチリアリティディスパッチは反乱組織の攻撃を少しも食らっていないようだ。

ついに、反乱組織が連合「PNSN」を組み、アレス政府に対して宣戦布告を行った。そして世界一悲惨な戦争と言われる独ソ戦よりも悲惨で過酷な戦争「アレス・レベル世界大戦」の火蓋が切られた。その戦争には良くも悪くも物語が多く生まれたようだ。

今回はその中の一つの物語を話そう。


彼もまた反乱軍の一員だった。「クロイ」とよく呼ばれている。彼は、転覆を起こす前のアレスに勤めていた。

当時、勤めていた部署の責任者である「イアス」に恋に落ちてしまった。

イアスの性格は、気性が荒い、でも少し優しさがある。

しかしとても穏やかな彼に合わないはずだった。

だがそれ以上の彼女と居る時の充実感と愛情が勝った。そしてクロイがイアスに告白した。そして交際が始まった。そして、「結婚しよう」そう伝えるプロポーズの準備をしていた。

ところがプロポーズ前日、衝撃の事件が起きる。そう、アレスによる「アメリカ政府の転覆」だった。彼は、それ以来彼はアレスに対して疑心暗鬼になっていた。裏切ろうか悩んでいた。だが、そのことを幹部であるイアスに打ち明けることも出来なかった。イアスの気性が荒い性格によって、なにか怖さを感じていた。

悩みに悩んだ結果出てきた結論は、「何も言わずに裏切る」だった。イアスを裏切るということはお互いにとってとても辛いことだが、それが自分にとっても最適だった選択肢であった。

彼はそれを実行し、ピラニアショットのひとりとなった。

そして彼は主要施設の警備を行う任務を任された。


また時が経ち、アレス・レベル世界大戦が勃発。イアスとは完全に関わりもなくなり彼女の存在も頭の中から薄れてきた。


とある日「1人で遺跡の調査を行え」という任務を任された。兵力が少なくなり任務に回せる人手の不足らしい。

彼は支給された武器を装備し、出発しようとした。

「おい、この機械を忘れるな。」

調査は自分の手でやるのかと思ったが、そうではなかった。機械にほぼ全部任せるようだ。

「中に説明書がある。その説明書に書いてあるから早く行くといい。」

教えてくれないよりかはマシだ。その機械を荷台に積み、出発した。

ピックアップトラックで移動するため悪路走破性はいい。遺跡にも行きやすい。

彼は幸運だった。こちら側の領地に近いこと、砂丘にあることによって、彼は順調に進むことが出来、敵に会わず遺跡に着いた。

最近この遺跡で敵がなにかをしていたという情報があったようだ。その調査のために派遣された。

この遺跡での遺跡の調査は主に機械が行う。クロイは主に機械をセットし、いわゆる「リプレイ」を行うようだ。ムーディーブルースのような。

彼は機械をセットし、始動した。あとは機械に任せる。機械がリプレイと研究を終えるまでその機械を守る。機械を壊されたら溜まったもんではないからな。

機械の様子を見ながら、警備をしていた。

10分くらいたった時、機械が

「記憶装置がセットされていません。」

メモリを挿入するのを忘れていた。メモリは持ち合わせていたため、そのメモリを挿入した。そして、機械を再始動する。そして、後ろを見ず、機械から2歩下がって、呟いた。

「頑張れよ。」

彼は機械に対しても応援、尊敬の気持ちを忘れないのだ。

そして、警備に戻ろうとして、もう一歩後ろへ下がった時、何かが頭に当たった。銃のようなものだ。いや、これは銃だった。

彼は後ろにいる敵に気付かなかった。

「手を上げろ!」

なにか、聞き覚えのある声でそう言われた。心の奥底で何かが蘇った気がする。しかし何かが蘇っても敵が死ぬ訳では無い。彼は銃を腰にかけていたため、抵抗もできなかった。なので手を上げ、1歩前に進み後ろを向く。何故か、その時下を向いていた。

「銃を地面に置け。」

まだ撃たれ死にたくはなかったので、敵兵の指示に従い、腰にかけていた銃を地面に置く。

長物の銃は機械のそばだ。

ふと前を向き、敵兵の顔を見てみる。すると、心の奥底で蘇ったものが前面に押し出されたような感触だった。虚しさ、悔しさ、悲しさ、あの時の感情が彼の頭を貫いた。その敵兵はイアスだった。

イアスも久々の再会に驚く。しかしすぐに表情は戻る。アレスとしての心得からだろうか。

お世辞にも冷静とは言えず、怒りが最も大きい、でも悲しさや嬉しさなどの様々な感情の混ざっている表情がイアスの顔に現れていた。

彼女は、指をトリガーにかける。そして歯を食いしばりながら、

「ひ、久しぶりだなぁ、クロイくん...」

彼女は怒りを抑えながら言う。涙を抑えているようにも聞ける。相変わらず指にトリガーをかけている。警戒心だろうか。はたまた悔しさだろうか。

「久しぶりだ...お前がこの俺を撃ち殺す前に最後に話をしたい。心残りがあるまま死ぬ気は無い。だから、1度銃を下ろしてくれ、頼む。」

相手は元ともいえる恋人だとしても敵に対しては無駄であるお願いだ。それでも、話したかった。銃を下ろさずに、指にトリガーをかけていると、誤射で撃たれ死んでしまう。そのため、誤射を防ぐためにそう言うと、イアスは銃を落とす。

「あぁ、それでいいんだ、それで、なにか...あの時のことを話させてくれ。」

そう、伝えようとした。その時急にイアスに蹴られる。そして、彼女は落とした拳銃を拾っては、銃口を彼に向ける。

「ははは、捕虜になるか、または死ぬか...」

その表情は、怒りが多くを占めていた。しかし悲しみも混ざっているようにも見える。悔しみが彼女の目から流れていた。それに気づいたクロイは

「あはは、死ぬ、を選ぶぜ...」

イアスを裏切ったのはクロイである。だから、死ぬことを選んだ。それが最適解だと思った。しかし予想外だったのか、イアスはどうすればいいかわからず硬直する。その時、銃口が下りた。

硬直が解け、もう一度銃口を彼に向けた。そしてまた尋ねる。尋ねる。

「なんで私を裏切ったんだ!」

その言葉の中には涙も混ざっていた。しかしその言葉も同じように怒りが多くを占めていた。どれほど悲しかったのだろうか。

クロイは、そんな姿を見て少し悩む。真実を教えるべきか、でも、今教えたら撃ち殺されかねないから。

考えが決まった。その考えを言う。

「あはは...教える権利は無い...」

今教えるのは全財産をベットすることと同じだ。

その答えに、イアスは、ますます怒りを強めた。気性の荒さがなくてもこれ程だったのだろうか。それほど悲しい思いをさせたのだろう。

彼女はクロイの頭に銃口を近づける。

「死ぬか言うか、どっちだ!」

イアスがとても大きく強い声で言う。その声の勢いは、今までの苦しみを力に乗せて、彼の頭にぶつけたような力があった。これ以上黙っても撃ち殺されると思ったクロイは、

「あぁ、言うよ...」

そういい、彼女が突きつけていた銃の上を手でそっと抑え、下に向ける。

「なんだ!早く言え!」

「あはは...教えねーよばーか!」

クロイはイアスに対して、個人的な挑発をした。

あの時も、イアスに対して挑発するように言うことが多かった。その時はイアスも笑いながら煽り返してきてた。その時のことをまたわざと、やってみた。

するとイアスは、予想に反して怒り狂うことをせず、深呼吸をした。昔を思い出したからだろうか。尋ねる。

「はは...懐かしいな。」

そういい、クロイの胸元に銃口を押し付ける。そして、トリガーを引こうとする。

「最後のチャンスだ、なぜ裏切ったか教えるか、死ぬか。」

硬いベストを着ているため、撃ったら銃が暴発しかねない。イアスを守るためにも、クロイは咄嗟にイアスを蹴り、すこし距離を作る。イアスはその反動で発砲してしまったがベストに跳ね返って天井に弾が当たるだけに済んだ。

「俺の答えは、抗う、だ、」

そういい、ポケットに入れてあったドライバーを持つ。機械の修理用にと入れていた。イアスは目を細める。そして不快な笑みを浮かべる。彼女の腰に付いているナイフに手を伸ばし、ゆっくりと引き抜く。

「あははっ、私達の戦いの火蓋も切られたね!」

イアスがそう言うと、襲いかかってくる。咄嗟にドライバーで防御し、弾く。そして彼女に報復の攻撃をしようとするが、心のなかの何かが引っかかり、攻撃できない。すると、イアスが首元にナイフを刺そうとした。しかし、寸前で止まった。その隙で咄嗟に

「離れろ!」

クロイは強く言い、イアスの胸元を蹴った。

イアスは猛烈な勢いで後ろに飛ばされるが、すぐに立ち上がる。手にはナイフが握られている。彼女の瞳は険しく、涙がある。唇は引きずっている。

「くそっ、さすが、私の元部下だな...しかし、お前は終わりだ。」

そういい、彼女が落とした拳銃を持ち、銃口をクロイの頭に向ける。

「最後の言葉は?」

イアスがそういうと、クロイがは、また挑発するように言う。

「お前の後ろに俺の仲間がいるぞ、」

そう言う。さすがに嘘だとバレた。イアスが

「また嘘なんだろ!この私にはわかるぞ!」

イアスは言う。しかしクロイは気づいた。彼女の拳銃にセーフティがついていることに。おそらく落とした衝撃でセーフティがついたのだろう。

イアスが発砲しようとした時、

「なぬ、!?...撃てない...」

驚きでイアスは銃を見ている。おそらく本来ならば、セーフティだということにすぐ気づくが、彼女は錯乱状態だ。だから、気づかなかった。その隙に銃を蹴る。すると彼女は先程の姿から予想出来なかった驚きの表情を見せながら腰を抜かす。そんな姿を前から見ているクロイは、挑発がてら言う。

「可愛いじゃねえか...その顔...」

わざと何も持たず、近づく。拳銃を出すことも出来たが何かを持つことが出来なかった。何かが制止している。腰を抜かしたまま下がっていく。イアスの目つきがますます緩み、憎しみから悲しみへと変わっていく。銃を握る手が震え始める。

「ふ、ふふ、ふざけるな!ふざけすぎなんだ、!」

激情に駆られ、震えた銃口をクロイに向ける。トリガーを引くその直前、彼女は我に返ったように止まり、喉の奥から涙を堪える声を漏らす。

そして続けて、

「な、なんで私を裏切ったんだよ!」

荒い呼吸と共に、イアスの表情は悲しみに覆われていく。銃口が下がり始める。

「あぁ、君に、認めて貰えないだろうからな、だから...なんだ...」

クロイは今までのトーンではなく、下げたトーンで話す。

「なんで!なんでなの!なんで私に言ってくれなかったの、!」

銃を放す。そしてクロイの体を震わせて彼に詰め寄る。目には涙が浮かび、抑えきれない感情が露わになっている。

「あぁ、それは、そうだな...ふふ...秘密だ、知らない方がいいことだってある...」

そう、濁す。濁すことしか出来なかった。すると、イアスは一瞬怒りを見せるが、悲しみが制御していた。

「俺だってしたくはなかった。でも、方向性が合わなかったんだ...」

顔を下げる。クロイの目にも涙が浮かんできた。

「もう一度...やり直したい...もう、裏切らないよ...こちら側に来るならばな...」

「本当、なのか...?」

まだ信じられないというように、まるでピンチの時に中が悪かった人がこちらを助けてくれる時のような感情のように見える。そしてその目には最後の希望の光も宿っている。

「見ろ、そうじゃなかったらお前に銃口を突きつけているよ、しかし実際はそうじゃないだろう?」

クロイが前を向き、イアスの目を見ながら言う。しかしイアスは顔を合わせてくれなかったが、顔を震わせながらイアスは彼に目を合わせる。

「そうだね、ごめん...なさい...でも...」

彼女の目から涙が零れている。クロイは、少し下がる。

「こんなこと、したくないけど...ごめんなさい...」

イアスは急にクロイに腰のナイフを刺そうとする。しかし、イアスはすぐ前で止める。そして壁へ投げる。そしてイアスはクロイに抱きつく。

イアスは、抱きついた途端、力が抜けた。涙が数滴、肩にかかってすぐに大号泣した。穴が空いた水槽の穴を塞いでいたテープを塞いだ時のように。クロイもそれにつられて久々に泣いてしまった。クロイの味方が来るまで、2人は泣き続けた。


少しするとクロイの味方が到着した。通信が途絶えていたからだ。ただ単に車に通信機器を置いていっただけだが。

「あぁ、味方が来たようだ...どうするか、?裏切ってこっちに着くか、死ぬか」

車の音で気づいた。そのためイアスにそう尋ねる。そして、そっと離れる。するとイアスは

「役に立てるなら、クロイにつくよ...」

そう言う。顔には、告白した時の笑顔があった。

「お前らの関係が崩れるところなど見たくなんかない。戦線から離脱しろ。」

後ろから言われた。話を聞いていたようだった。

しかし、彼はその指示に対して言う。

「イアスと幸せな生活をするため、俺は前線についてやる。」

イアスは、照れくさそうに言う。

「ならば、私も。」

2人の愛情は弾丸と異常存在の歯では引きちぎれなかった。命も同じく。



最終的に、2人が共闘した戦争は反乱軍が勝利し、2人は結ばれた。イアスは「水本 イアス」となった。

そして「水本 菜乃」が誕生した。

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