デリーターの逆襲
暑い日だった。
二度も撃退に成功したデリーターが、また姿を現わした。俺の息子は余程ひどい虐めを行ったようだ。いや、これから行うのだ。
「おい! お前」と相変わらず、ひとつ覚えの台詞を発して、俺のことを呼び止めた。
やつの顔を見た途端、俺は駆け出した。また追いかけっこだ。
最近、運動を始めた。
デリーターがまたやって来るのではないかと危惧したからだ。もともと長距離を走るのは得意だった。幸い、やつはそう足が早くない。振り切る自信があった。
案の定、やつとの差はどんどん広がって行った。
「どうした⁉ 悔しかったらついて来いよ!」
やつを挑発するのを忘れなかった。
今回は作戦があったからだ。
やつは水に弱い。水のあるところに誘い込めば良いのだ。
「おい! お前」とやつは追って来る。
やつは疲れ知らずだ。持久戦になると、こちらが不利になってしまう。
上手く川沿いに誘い込むことができた。
川に二本の橋がかかっている。橋と川沿いの道が四角形になっている場所だ。川沿いの道と橋で出来た四角形をぐるぐると回るのだ。俺に追いつこうとするならば、川に飛び込まなければならない。水に弱いやつに、そんなこと、出来るはずなかった。
川沿いの道と橋をぐるぐる回りながら、対岸からやつに「悔しかったら川に飛び込んでみろ~」と挑発した。
するとやつは「昔の俺だと思うな。最近型の俺は防水仕様なのだ! ははは~」と大笑した。
まずい! 流石に改良して来たのだ。
やつはざぶんと川に飛び込んだ。
そして、浮いて来なかった。
防水にはなったが、水には浮かないらしい。




