表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コーヒーブレイクにショートショートを  作者: 西季幽司
コーヒーブレイク・その四
91/108

伝言板

 ローカル線の無人駅に、昔、懐かしい伝言板があった。

 かつては、電車を乗り降りする知人や家族にメッセージを伝える為のものだった。携帯電話の普及に連れ、その存在意義が薄れ、伝言板は役割を終えた。

 無論、この駅でも伝言板は使われていない。撤去するのが面倒で、そのままになっているだけなのだろう。

 ある日、伝言板に書き込みがあった。


――傘、ありがとうございました。お返ししたいのですが、どうすれば良いですか?


 と書かれてあった。


 翌日、伝言板には;


――ビニール傘ですので、捨ててください。


 とあった。

 すると、その伝言に続けて;


――バカね。彼女、傘を返したいというのは口実で、あなたにお礼が言いたいのよ。


 とメッセージが書かれていた。それに対して;


――どうして女だって分かるんだ?


 という書き込みがあった。


――俺、見たよ。電車で男の子が女の子に席を譲っているの。


――私が見たのは、雨が降り出して、改札で男の子が女の子に傘を渡していたところ。


――彼女、電車で気分が悪くなって、それに気がついた男の子が席を代わってあげたのよ。


――彼女が傘を持っていないことを知って、自分の傘を貸してあげたのね。


――ちゃんとお礼を言いたいだろうね。


 彼と彼女の話で伝言板は盛り上がった。そして;


――男の子が持っていたバッグに関高バスケ部って書いてあったよ。ムルチのキーホルダーがついていた。


 という情報があった。ムルチは大バズりのアニメ「漆黒の剣闘士」の主人公の名前だ。


――それって、レンのことじゃない。


 とついに男の子が特定された。


――ミーちゃん。中学が一緒だったメル。彼氏がレンさんの連絡先、知ってるって~。


 と彼女のことも特定されてしまった。そして、ついに;


――お騒がせしました。皆さんのお陰で彼にお礼を言うことができました。


 という書き込みがあった。


――良かったね。


 という書き込みが続いた後;


――二人、付き合っちゃえば良いのに。


――お似合いの二人だね。


 とあった。

 伝言板のお祭り状態はまだまだ続きそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ