デリーター再び
――やつだ!
心臓が凍りついた。
やつが再び、俺の前に現れた。デリーターだ。デリーターが充電を終えて、俺のタマを潰す為にやって来たのだ。
昼休みで昼飯を食いに出て来たが、このまま逃げることにした。こんなやつに会社で暴れ回られてはクビになりかねない。
警察署に駆け込んで助けを求めるしかない。
日頃、あちこちで交番を目にするが、探している時には見つからない。お巡りさんも、パトカーも、こんな時に限って現れなかった。
俺は交番を探して走り回った。
気がつくと、公園にいた。後ろから追いかけて来ているはずの、やつの姿が見えなかった。上手くまいたのかもしれない。ほっと安心した。
「おい! お前」
俺は胸倉をつかまれ、放り投げられた。デリーターだ。
噴水の前だった。俺は噴水のある池に落下した。お陰で、怪我をせずに済んだ。上半身を起こす。腰まで水に浸かっていた。
「おい! お前」
相変わらず、「おい! お前」だ。
やつが、デリーターがやって来る。ざぶと池に足を踏み入れると、じゃぶじゃぶと水音を立てて、やつが迫って来た。
丁度、噴水が水柱を上げて空中に広がった。
雨のように降り注ぐ水滴のシャワーの向こうから、やつがやって来るのが見えた。
「待て。タマを潰すのは勘弁してくれ」
「心配するな。いたくないように潰してやる」
冗談じゃない。俺は腰まで水につかりながら、じゃぶじゃぶと後ずさりした。
噴水のシャワーを潜って、やつがやって来た。
「観念しろ」
やつが、俺に向かって手を伸ばした。
もうダメだ――と思った時、デリーターの動きが止まった。
ぱちぱちと体のあちこちから火花が上がっていた。
どうやら水に弱いようだ。